ニュースレター号

[79号] いくつかのお知らせと、「癒やし」についての散考

サポートメンバーの皆さま、アンニョンハセヨ。またしても間が空いてしまいましたが、79号をお届けします。

発行が遅れたため、サポートしていただいた方が随分と去られることとなりました。とても申し訳ない思いです。またお戻りいただけるよう、意味ある更新を重ねていきます。

◎コリア・フォーカスの改編

もうすぐ12月。9月末に本が出て以降、一種の‘燃え尽き感’と本の営業、さらに義父の体調不良が重なり(後述します)、非常に落ち着かない日々を過ごしてきましたが、新たな仕事の仕方をついに決めました。整理すると以下のようになります。

◎「DKF」はじめます

DKF、つまり「デイリー・コリア・フォーカス」ですが、これは月曜から土曜日まで毎朝決まった時間(8時を予定しています)にメールで前日までのニュースをお伝えするものです。

実は韓国で同様のサービスをいくつものメディア(新興メディアで特に盛んです)が行っています。毎朝、政治系・テック系・コラム系といくつかのメールが届きます。とても重宝します。

仕事柄、興味のある分野は自分からニュースを取りに行きますが、そうではない分野のニュースに触れることができるのです。報道に関わっていない方にとっては、その意味はさらに重要になるでしょう。

ということで、コリア・フォーカスも「デイリー・コリア・フォーカス」を始めることにしました。毎朝5本程度のニュースを要約したものをメールでお届けします。以下のような形になります。

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【社会】あわや大惨事、旅客船座礁の原因は「スマホ」(SBSなど)

19日晩に起きた、旅客船の座礁事故。韓国最南端の島・済州(チェジュ)から南西部の木浦(モクポ)に向かう2万6500トン級の旅客船「クイーンゼノビア2号」が航路を外れ、無人島に乗り上げたものです。

すぐ海洋警察庁(海警)が駆けつけ、乗船していた乗員21人、乗客246人全員を救助しました。30人が病院で治療を受けましたが重傷者はいないとのことです。

事故現場は図らずも、2014年4月16日に死者・行方不明者304人を出した「セウォル号」沈没事故と同じ韓国南西部であったことから、私を含め多くの韓国市民が緊張したことでしょう。

しかし当時と異なり海警が迅速に動いた上に、乗客同士も年配の方や妊婦、子連れの方々を先に退避させるなど、高い市民意識が表れたと韓国メディアは報じています。青年が事故で負傷した70代のお年寄りをおぶって避難したという話もありました。

事故の原因は当時、航行を担当していた一等航海士の「ながら運転」でした。スマホでニュースを見ていて、転針が遅れ無人島に突っ込んだというものです。

操舵士ともに逮捕されました。船員法により、狭い水路を通る際に操舵室にいることが決められている船長も事故当時、席を外していたとされ捜査対象となっています。この3人には、逮捕令状が請求される見通しです。

(記事リンク、韓国語)

【社会】働く既婚女性の雇用率が過去最大に(京郷新聞)

韓国政府の発表によると、25年上半期の「ワーキングママ」の雇用率が64.3%と、過去最高となりました。「ワーキングママ」とは「18歳未満の子女と暮らす15~54歳の既婚女性」のうち、就業している者を指すものです。

子育てによりキャリアが断絶した女性の比率は21.3%と、2014年の統計作成以降、最低値となりました。

政府はこの背景に政府政策の効果を上げていますが、日本(74.8%)、英国(74.2%)、フランス(73.9%)、ドイツ(73.8%)といった先進国に比べ雇用率は低い現状があります。

記事の中で識者は、未だ高いキャリア断絶女性の比率を上げ「企業と社会制度を全面的に変える必要がある」と主張しています。

(記事リンク、韓国語)

【南北関係】朝鮮が南北軍事境界線を侵犯、軍事会談呼びかけには沈黙(朝鮮日報など)

韓国の国防部は17日(月)、朝鮮に対し「南北軍事当局会談」の開催を提案しました。目的は軍事的緊張の緩和ならびに、軍事境界線の基準線を設定するためです。

韓国軍当局が韓国メディアに明かしたところによると、今年4月以降、朝鮮の兵士が南北を分かつ軍事境界線(MDL: Military Demarcation Line)を越えて韓国の地域を「侵犯する状況」が継続的に起きているといいます。その数は10回を超えるそうです。

その度に韓国軍は警告や威嚇射撃を行ってきたそうですが、このままでは偶発的な衝突もあり得るということで、南北軍事会談を通じ、この問題を解決しようという試みです。

ですが、今日まで北側の回答はありません。最後にMDLの表示板を整備したのは1973年のことです。元々あった1292個の表示板のうち、今も残っているのは200あまりに過ぎないそうです。(写真は19年5月1日に私が撮影したもの)

老朽化したMDLの表示板。徐台教撮影◎


老朽化したMDLの表示板。徐台教撮影◎

今回の会談提案は、純粋な表示板問題の解決に加え、ここ5年以上対話のない南北間で、どうにか対話の糸口を見つけたい韓国側のねらいもあります。軍事分野は従来、最も対話をしやすい分野のうち一つですが、北側は乗ってくるでしょうか。

(記事リンク、韓国語)

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いかがでしょうか。上は3つだけですが、毎日5本程度お送りする予定です。分野は政治・経済・社会・国際(外交)・南北関係・コラム・社説から選んでいきます。

サポートメンバーだけでなく、まずは一般登録会員(無料会員)に向けても送る形にします。3か月後から有料化する予定です。

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◎「WKF」はじめます

続いて、YouTube配信のお知らせです。

以前、デモクラシータイムスさんで隔週やっていた『韓国通信』は新体制で始まったので、私は数年前に作ったYouTubeチャンネルを復活させ、今後独自の配信を行っていきます。

ひとまずは「ウィークリー・コリア・フォーカス」と名付け、毎週、一週間を一時間ほどにまとめて配信できればと思います。

もうすぐ、尹錫悦大統領による非常戒厳(24年12月3日)から一年です。様々な集会なども予定されているので、そういった現場の話も少しずつレポートしていきます。

チャンネルを整備でき次第、アドレスをお送りいたします。こちらはずっと無料公開という形にいたします。

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◎通常の記事更新や今後の展開について

さて、上記二つの仕事だけでも「本当にできるのか?」と思われるかもしれませんが、特に問題はありません。

何より大切なのは、こうした「基本的な発信」以外に、きちんとした記事を定期的に出していくことです。最低でも毎週一本、取材を元にした記事を書いていきます。

これはサポートメンバーだけが読める記事となります。

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また、今後についてですが、年内に日本で一般社団法人を設立し、その後クラウドファンディングを通じ「コリア・フォーカス」の大幅なテコ入れを図る予定です。

目的は「南北関係に関する公論の場を提供すること」と、「日韓・日朝にまたがる様々な問題における正確な知識を整理すること」です。韓国語(朝鮮語)と日本語、一部英語での発信となります。

これは当然、一人ではできないので、クラウドファンディングや篤志家からの寄付、そして収益事業などを組み合わせて、チームとして運営していきます。

一人でやる仕事には、色々な意味で限界が来ているので、次のステップに進んでいきます。

ニュースレターをどう運営するのかについて色々と悩んできたのですが、大きく前に一歩を踏み出そうと決断しました。

◎書籍『分断八〇年 韓国民主主義と南北統一の限界』について

9月26日の発売からもうすぐ2か月となります。前回のニュースレター以降、11月上旬に再度東京を訪れ、販促活動をしてきました。

今回は東京新聞の望月衣塑子さんの『望月いそことオッカ君チャンネル』、朝日新聞『好書好日』のポッドキャストなどに出演しました。リンクを貼っておきます。後者は12月に配信されるということです。

また、東京の書店街・神保町にある『チェッコリ』さんでブックトークを行いました。会場・ネット合わせて100人以上の方々にお申し込みいただき、盛会となりました。

生まれて初めてサイン会というものを行いました。緊張しています。


生まれて初めてサイン会というものを行いました。緊張しています。

当日、会場にお越しいただいた皆さま。ありがとうございます。


当日、会場にお越しいただいた皆さま。ありがとうございます。

集英社クリエイティブ編集者の森山聡平さんと一緒にトークを進めました。


集英社クリエイティブ編集者の森山聡平さんと一緒にトークを進めました。

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また、いくつかのメディアでは拙著を紹介してくださいました。

『ミュージック・マガジン』12月号に、真保みゆきさんによる以下のような書評が載りました。

転載はご遠慮くださいね。


転載はご遠慮くださいね。

さらに、11月22日の朝日新聞にも書評が掲載されました。こちらは安田浩一さんによるものです。

こちらも転載はご遠慮ください。


こちらも転載はご遠慮ください。

このように、露出はそれなりにあるのですが、肝心の売れ行きは飛ぶように売れるというには程遠いです。それでも最近、SNSなどで「2万部が目標」と書いたところたくさんの方の反応があり、勇気付けられています。

記事をたくさん書きながら、絶え間なく本の存在をアピールする必要がありそうです。サポートメンバーの皆さまも、地元の図書館にリクエストしていただけると、売上げに大きなプラスとなります。

また、前回お伝えしたサイン本のプレゼントに関しましては、約30名の方に応募をいただきました。3名の当選者にはメールをお送りいたします。落選した方にはお詫び申し上げます。

◎イベントのお知らせ

来たる12月12日(金)、大阪の心斎橋にある「ロフトプラスワンWEST」でトークイベントがあります。アジアプレス大阪事務所代表で北朝鮮取材を専門とする石丸次郎さん、そしていくつも優れた取材を世に放ってきた西岡研介さんと共に行うものです。

特に石丸さんは、私にジャーナリズムを教えてくれた先輩であると同時に、長い間の北朝鮮住民への取材を通じ、南北関係や統一について北側の人々がどう思っているのかをよくご存知です。南北関係の今後はどうなるのか、どうすべきかについてお話を進めていく予定です。

今年最後のイベントとなる予定です。現地参加に加えネット配信(後から見ることも可能です)もありますので、ぜひ振るってご参加ください。

会場チケットや、配信チケットについての説明は、以下の「ロフトプラスワンWEST」の該当ページをご参考くださいませ。

◎おわりに

今号のタイトルを「癒やしについての散考」としました。その理由はチャンインオルン、つまり義父と関係しています。

今の時刻は23日午後8時40分ですが、義父は危篤状態にあります。あるホスピスに入院中でして、今日の午後に「臨終室」と呼ばれる部屋に移りました。ここは死期が近い患者が最後の時を家族と過ごす場所です。

1948年生まれの義父・李相玉(イ・サンオク)は韓国の大企業を定年まで勤め上げ、義母と共に5人の子どもを立派に育てた人物でした。妻は맏이、つまり長女です。義父はリタイアした後からは読書に明け暮れ、その知識量の前に私はいつもたじたじでした。

それでも、こういう仕事をしている婿が面白かったのか、ずいぶんと色々な話をしてきました。朝鮮半島の歴史や世界の歴史について話を交わし、互いに面白い本を勧めたりもしました。酒も飲みました。

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しかしそんな義父にも秘密がありました。

それは義父の父・李翔雨(イ・サンウ)さんについてです。李翔雨さんは、1951年1月、つまり義父が数えで3歳の時に命を落とします。韓国陸軍に銃殺されたのです。

時は朝鮮戦争。1950年6月25日に北朝鮮が「南侵」し、3日後にソウルは陥落します。その後、ソウルを韓国軍が取り戻すのは同年9月28日のことです。さらに韓国軍は国連軍と共に「北進」し、朝中国境に到達します。

その頃、中国の人民義勇軍は朝鮮戦争に介入する準備を整えていました。そして実際に朝鮮半島に入り南下します。国連軍を敗走を重ね、翌年51年1月4日にはソウルを捨てて南に退却します。「1・4後退」と呼ばれるものです。

この退却のさなか、ソウルから南に100キロほど離れた忠清北道陰城郡で李翔雨は韓国の陸軍に銃殺されます。

教師だった李翔雨は、北朝鮮による占領時(50年7月〜9月)に避難せず、朝鮮労働党が接収した学校で教師を続けました。生活のためには仕方がなかったのでしょう。同じような人はたくさんいました。

後に韓国軍がこの地を奪回した際に、李翔雨のような人々は、北朝鮮に協力したかどで「自首」させられました。そして再び韓国軍が撤退する際、つまり51年1月に「また北朝鮮側に協力(賦役)する可能性がある」ということで殺されたのです。

このようなケースは韓国のあちこちで起きました。後に政府が真相を究明し補償まで行うのですが、義父は父のいないまま育ちました。そして、この話を誰にもしませんでした。反共意識の強い韓国では「連座制」があり、身内が「アカ」の疑いで殺されたことが分かると不利益をこうむる可能性があるからです。

なので妻も、私も、妻の家族も詳しい話を知らないままでした。それがようやくここ数年すこしずつ事件そのものについては話をするようになりましたが、義父自身が父が殺されたことをどう思うかについては、重い口を開きませんでした。

しかし癌がステージ4になり、回復の見込みがなくなった今年8月になって、ようやく妻と私に対し、振り絞るように自身の思いを語ったのです。『分断八〇年』にも出てくる場面です。

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その義父に対し、もう一度似たような話を聞く機会がありました。今年10月のことです。もうだいぶ衰弱していましたが、『世界』への寄稿に使いたいからとコメントを求めたのです。「解放八〇年、分断八〇年をどう受け止めたか」という質問でした。

それについての義父の答は以下の原稿に入っています。これも著作権上やばそうですが公開します。世界12月号(1000号記念号)の中からです。

転載はご遠慮ください。


転載はご遠慮ください。

『世界』編集部に無理をいって、李翔雨さんの写真を載せてもらいました。


『世界』編集部に無理をいって、李翔雨さんの写真を載せてもらいました。

「失われたものが回復される訳ではない」という言葉は重いものがありました。その時、私は感じたのです。「これは亡くなるまで癒やしというものはないのだな」と。

それほどに国家による暴力、戦争による被害は取り返しのつかない傷を人に与えるのだな、と。

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今日23日の午後、子どもたちを連れ、臨終室に移った義父に会いに行ってきました。もう話すことも目を開けることは叶いませんが、「テギョです」と声をかけると握った手に少し力を感じました。

…今日はちょっと文章がまとまらないので、落ち着いたらいずれ、コラムにまとめます。

先の『世界』寄稿の際に、几帳面な義父は、自身のコメントを3ページのメモ帳にまとめてくれました。そこにはより厳しい内容があったのです…。いま読み返してみたのですが、鬼気迫るものでした。

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今号は以上です。先に上げた「デイリー・コリア・フォーカス」は25日から始める予定ですが、葬儀が重なる場合には少し遅れる可能性があります。いずれにせよ、今後ともよろしくお願いいたします。(徐台教)

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