サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。
重要なニュースの洪水に流されるかのようにあっという間に一週間が過ぎてしまいました。私が圧倒されては元も子もないのですが、韓国に20年以上住む中で韓国政治、韓国社会、南北関係や朝鮮半島情勢と、こんなにもあちこちで「軋み」を感じるのは初めてのことです。
87年の民主化、88年ソウル五輪、89年冷戦終結、91年南北同時国連加盟・南北基本合意書という韓国現代史における一連のエポックメイキングな出来事から30年が経ち、韓国と韓国を取り巻く環境は完全に転換期に入っているという認識です。
朝鮮半島情勢をはじめ、韓国の未来は全く読めません。AIをはじめとするテック系の議論が一部で盛んですが、これらが国家の未来を導いてくれる訳ではありません。
特に「諦め」すらはびこっているように見える韓国社会への処方が急がれます。今回重点的に取り上げましたが、人々がどんな社会を望んでいるのかを議論する土台からまず再建する必要があるでしょう。
それはそうと、書きかけの記事がいくつか溜まってきています。これはダダっとリリースしていくのでお待ちください。まずはニュースレターからお送りします。
今回の目次は以下の通りです。
(1)記者は“おとなしく”?変わらぬ大統領室
(2)韓国政治「次の一歩」の行き先(YouTube『徐台教の韓国通信』の補足もかねて)
(3)北朝鮮に‘スタバ’で資本主義をアピール?
(4)あとがきに代えて
(1)記者は“おとなしく”?変わらぬ大統領室
11月7日に尹錫悦大統領の記者会見がありました。今年4月の総選挙での大敗の原因の一つに「意思疎通不足があった」とされたことで取り入れられたもので、前回5月9日から約半年ぶりに行われました。
焦点はいわゆる「尹錫悦・金建希スキャンダル」への説明です。
政治ブローカーのミョン・テギュン氏と尹大統領の通話音声が公開されたことでにわかに火がついた22年6月の補欠選挙介入疑惑ですが、結果として尹大統領の口から明確な説明はありませんでした。
尹錫悦大統領(当時は大統領当選人)のスキャンダルを整理したもの。事実の場合、尹大統領は公職選挙法違反に問われることになります。本格的に捜査すべきと野党は口を揃えていますが、実現するまでは遠い道のりです。筆者作成。
尹大統領は記者会見の冒頭で「私の周辺の出来事で国民にご心配をおかけしました。大統領は弁明する職ではありません。すべてが私の手落ちで不徳の致すところです。国民の皆さんに申し訳ないと述べ、心の底から謝罪いたします。これからは気を配り、国民の皆さんに不便と心配をかけることが無いようにします」と謝罪しました。
ところが、質疑応答の中で釜山(プサン)の主要地方紙『釜山日報』のパク・ソクホ記者がこの謝罪について「少しばかりぼんやりした包括的な謝罪だった。会見を見守る国民達が大統領が何について謝罪したのか首をかしげるかもしれない」とし、追加説明を求めました。
これに対し尹大統領は「何がダメな部分なのかを言ってくれればそのファクトについて謝罪することができる」、「(ここで)事実かどうか合っている、間違っていると争うことはできない」とズレた返答をしました。
他の部分でも「妻(金建希氏)が謝罪をたくさんしろと言った」と発言するなど、非をはっきりと認めないまま会見が終わりました。
今月7日の会見で謝罪する尹錫悦大統領。大統領室提供。
尹大統領の謝罪が上辺だけのものであることを明らかにした点で、これはナイスな質問だったのですが、会見から二週間近くが経った19日になって、大統領室が反応しました。
この日、国会に出席したホン・チョルホ政務首席はある野党議員の「(尹大統領は)どの点について具体的に謝罪したのか」という質問に「大統領に対する無礼で、直すべきだ」と答えたのです。
さらにホン首席は記者会見の際に同じ質問が出たというこの議員の問いに「釜山日報の記者だが、記者が大統領に対する無礼をはたらいたと思う」と重ねて答えました。
ホン首席はまた「大統領が謝罪したのにまるで幼い子どもに親がさとすかのように『何が問題だったのか』とする態度は正されなければならない」と付け加えました。なお、政務首席というのは大統領室と各政党をつなぐ要職です。
韓国には記者たちの互助組織として、韓国記者協会があります。同協会は協会報をネットに公開しています。
20日の協会報の記事の中で釜山日報のパク・ソクホ記者が「メディアの役割と記者の社会的な責任を否定する発言」とホン首席の発言を批判し、「記者が質問したことに対し、その態度を改めろというのは今後『同じような質問をするな』と大統領室のクラブ記者たちに一種のガイドラインを言い渡すものではないか」と明かしています。
釜山日報のパク・ソクホ記者。記者会見時の様子です。韓国記者協会報から引用。
ガイドラインというのは「指針」のことで、韓国で朴正熙、全斗煥という独裁政権時代に存在した「報道指針」を想起させる単語でもあります。パク記者は「こうなる場合、誰が最高権力機関である大統領室にそうした質問ができるというのか」とも述べています。
過去のニュースレター(30号)でもお伝えしたように、大統領室や与党は、MBCをはじめとする政権に批判的なメディアへの圧力を強めています。
韓国では市民団体がメディアを告発するケースが多いのですが、今年9月には大統領室の元行政官が「市民団体の告発は私がやらせたもの」と発言する音声ファイルが公開され、話題となりました。
先出の協会報でも「記者クラブがクラブとして対応すべき」としていますが、こんな時、クラブは弱腰です。大統領室との関係は各社とも死活問題になるので、声を上げられないのです。この辺が左右のメディアが垣根を越え団結し言論の自由を守る米国とは異なるところです。
実は似たような出来事が他にもありました。
今月9日にソウル市内の軍施設内(一般の市民も出入り自由な場所)のゴルフ場で、ゴルフをする尹大統領の姿を撮影した韓国テレビ局CBSの取材陣が、大統領警護処に厳しく取り締まられたのです。
韓国メディアによると数人に囲まれ携帯電話を奪われ、誰が尹大統領の情報を漏らしたのかを追及されたといいます。
折しもこの時期、公務員のゴルフを禁じる今年8月の米韓連合訓練期間中にも尹大統領がゴルフをしていたという報道が相次いでいました。
大統領室は「トランプ氏の当選により8年ぶりにゴルフを再開した」とごまかしましたが、8月にゴルフをしていた言い訳にはなりません。返ってきたのは嘲笑です。こんな一方通行のコミュニケーション、メディアへの圧力という姿勢は尹政権の発足後から一貫しています。
今回の『釜山日報』の一件もまた、尹大統領をはじめとする大統領室がいかに世間と離れた価値観で動いているのかを雄弁に語るものとなりました。これでは世論に耳を傾けることなどできるはずもありません。
5年任期の折り返しが過ぎてもなお、支持率が20%前半しか理由を理解できないのでは話になりません。
毎週定例調査を行っている『韓国ギャラップ』社の最新(調査期間11月19日〜21日)の尹大統領支持率(国政への肯定評価)は20%だった(赤線)。11月一週目の17%からは持ち直したものの、まったく振るわない状況が続いている。点線は不支持(国政への否定評価)。
(2)韓国政治「次の一歩」の行き先(YouTube『徐台教の韓国通信』の補足もかねて)
ご存知のように、私は二週間に一度、YouTubeで『徐台教の韓国通信』を配信しています。韓国や朝鮮半島で起きた話題を広範囲にお伝えするもので、11月に無事、一周年を迎えました。
とはいえ、目標としている再生数の「毎回2万回」にはなかなか乗らず、四苦八苦しています。
今月19日に公開した最新回でやや不完全燃焼な部分がありました。番組の40分過ぎからの「特集:どうなる韓国政治、『偉大な国民』の選択は」というところです。
ここでは、前述した大統領の特大スキャンダルに加え、国会で単独過半数を占める最大野党「共に民主党」李在明(イ・ジェミョン)代表の有罪判決と、混迷深まる韓国の政治状況を前に、おそらく少なくない人が感じているであろう「悩み」について説明しようとしました。
それは「尹錫悦大統領がいなくなれば、韓国社会が良くなるのか?」という問いに他なりません。
なぜこんな問いを持っているのかというと、16年10月から17年3月まで約半年のあいだ寒空の中で数十万、時には100万人以上の市民が続けた「ろうそくデモ」の熱気が、わずか7〜8年で完全に消え失せてしまったという認識があるからです。
ソウル都心を埋めた100万人の市民たち。16年11月19日筆者撮影。
韓国社会は進歩派大統領5年、保守大統領3年の8年間で良くならなかった。今もし尹大統領を追い出したとしても、良くなるという実感が持てないのです。
これは何も、私だけが抱いている気持ちではありません。所得格差や自殺率といった韓国が世界ワーストである各種統計は高止まりし(非常に緩やかな改善)、世界最低の出生率は若者世代が未来への希望を失っている証左として受け止められている。
その数の多さはともかくとして、韓国社会の中で陣営論(保守・進歩どちらかの陣営を一方的に支持すること)に属さない多くの人たちが「韓国社会は行き止まりだ」と考えていると自信を持って言えます。
その証拠に(?)、私が上記YouTube番組をした今月18日を前後して、似たような趣旨のコラムがたくさん発表されています。
最大野党・共に民主党の李在明代表の有罪判決が15日に出たことも影響したでしょうし、二大政党ががっぷり組み合って「敵対的共生関係(互いに批判することで自らの失策をカバーできるため、互いに相手を必要とする状況)」を維持し続けていることがはっきりと見える点も関係しているでしょう。
また何よりも、共に民主党が主催した11月2日、9日、16日の「尹錫悦糾弾デモ」の人出が低調で、とりわけ党員以外の市民への広がりを全く見せなかった点が関連しています(16日のデモの取材は上記のYouTube番組の冒頭にあるので是非ごらんください)。
「これが国か」と憤り、「生まれて初めてデモに来た。私を陣営論で判断しないでくれ」と市民が胸を張った7、8年前とは明らかに空気が異なる。ならばその理由を考えてみようということです。
ここで読者の皆さんは首をかしげるかもしれません。それもそのはず、私は常々、この16年から17年にかけての「ろうそくデモ」について日本社会は全く理解できていないと考えています。
あのデモは朴槿惠政権にNOを突きつけると同時に、87年の民主化から30年経って出現した「ヘル朝鮮」に対するNOでもあったのです。だからこそ、老若男女が同時に声を上げることができたのです。
しかしこの市民の思いが日本社会には全く伝わっていないまま今日に至っています。誰かしっかり書くかなと思ったら誰も書かないので、非常に困っています。
本題に戻ります。本稿では目についた4つのコラムの要旨を引用し説明してみます。これらのコラムは、韓国政治の限界性を正面から捉え、代案を考える試みとも言えるでしょう。
李在明氏が公選法違反に問われた裁判での1審有罪判決が出た翌日の「尹錫悦糾弾集会」で出会った、イ・ジヌ(45歳)さん一家。京畿道(キョンギド)から集会に参加した。共に民主党党員。有罪判決について「司法による殺人だ」と述べ、今後も同様の集会に参加し続けると述べた。「大韓民国は私たちが作る」という言葉は印象的だった。筆者撮影。
△勝者総取り民主主義の呪い(11月7日、李官厚イグァヌ、京郷新聞)
韓国の気鋭の政治学者によるコラムです。意味深なタイトルの意味は「尹錫悦48.56%、李在明47.83%」という前回22年3月の大統領選の結果から来ています。
韓国や米国では勝者と敗者と分けるだろうが、欧州では「引き分け」と考えるかもしれないと、李氏は問題を提起します。民主主義が勝者の総取りであると考えない地域であるほどそう考えるだろうし、連立政府が日常化した議会制の国家ではとりわけそうであろうとします。
しかし韓国の尹大統領は「まるで100対0で勝ったかのように権力を行使」しており、これが10%台(当時)という支持率の原因であるというのです。
一方で同氏は、この批判が前政権である文在寅政府にもあてはまるとします。
41.08%の得票率で大統領になった文政権に対し、李教授は当時「連立政府を構想するよう」主張したとします。そうすることで「ろうそく政府(国を刷新する『ろうそくデモ』を経て新たに登場した政府)」を自任することができ、国民もまたその姿こそを望んだのではないかと問題を提起します。
しかし文政権も当時の民心を民主的に理解せず、権力を分け合うことをしなかったため「政権再創出(共に民主党候補へのバトンタッチ)」に失敗したというのです。
李教授は「今の韓国の体制では勝者総取りの民主主義は不可能である」と喝破し、この改善を訴えます。
△尹政権の退陣後、何が変わるというのか(11月11日、朴來群パクレグン、京郷新聞)
韓国の市民運動界では知らない人がいない、実績ある人権運動家、朴來群さんのコラムです。
尹政権の失敗に言及し、尹政権を退陣させる動きが今後も広がる可能性があると指摘しながらも「その後が心配だ」と切り出します。
次に来る政権は「壊れた国家システムを正常化させ、今の多重的な危機を克服する代案勢力となるのか?」という問いを投げかけるのです。
中でも特に、尹政権の退陣時、次の大統領を輩出する可能性の高い共に民主党に対する疑問を提示します。
同党は今月4日に「金融投資所得税」の廃止を党論として決定しました。これは株取引で年間5000万ウォン(約550万円)以上の利益を上げた人物に課税するものですが、投資家の1%だけが該当するこの税を廃止することが「租税正義(富める者により多く課税すること)に反するのでは」と指摘するのです。
さらに「共に民主党は、先の大統領選で『既得権益層』という有権者の批判にさらされ敗れた米国の民主党と何が異なるのか」と鋭く批判します。
実は朴來群さんは過去、朴槿惠大統領の退陣運動を率いた市民団体連合体の共同代表の一人でした。それだけに変わらない社会に対する苦い思いがひと際強いのでしょう。
同氏はコラムの締めの部分で「(尹政権の退陣は)私たちの生活を変える弾劾でなければならない(中略)そのための代案を作れない場合、7年前の不幸を繰り返すかもしれない」としながら、「苦しい生活を送る人々の声に耳を傾け、これについて真摯に討論し代案を探すことから始めるべき」とまとめています。
△大統領ではなく世の中を変えよう(11月18日、ミリュ、京郷新聞)
韓国の歴史ある人権NGO『人権運動サランバン』(上記の朴來群さんが設立メンバーの一人でした)の活動家によるコラムです。
韓国も「相手の政党や政治家を政治の舞台から引きずり落とすことが目標になり、司法と言論の動員と統制が民主主義に取って代わるという点」で、世界の他の地域と同じように数十年間作動してきた政治システムが倒れる現象が起きていると指摘します。
韓国の二大政党は共に「尹錫悦と李在明に掛け金をすべて賭けてしまった」という指摘も非常に鋭い表現です。代案が無いのです。
そして8年前の「朴槿惠退陣」の意味を「今とは違う世の中を夢みて、職場と地元で民主主義を育てていけると期待した」とまとめています。
それが実現しないと分かり、生活が、世の中が変わらないと分かった諦めの中で「尹錫悦の退陣」は、新たな世の中に向かうための踏み台でなく、つまづく石になりかねないというのです。
これを避けるため「尹政権を批判するのと同じくらい、政治を生き返らせる課題がある」とミリュさんはまとめています。
△尹錫悦の退陣、その行き詰まる膠着と破局の間(11月20日、シンジヌク、ハンギョレ)
韓国の中央大学社会学科教授によるコラムです。
尹政権の問題について、▲市民と言論の自由が倒れた、▲大統領の独断により国政の合理性が倒れた、▲法の公正性が倒れた、▲私人支配により憲政秩序が倒れた、▲民主主義の基本である選挙の正当性への信頼が倒れた、という5つを挙げています。
尹錫悦-金建希夫妻が特別視される状況を端的に指摘するものとしてよいでしょう。
続いてこの状況における社会の要求には「辞退、弾劾、改憲」があるが、これはいずれも現実的でないとします。これがタイトルにある「膠着」の正体です。
現在の状況が好ましくないにもかかわらず、それが否応なく続く状況です。シン教授はこの土台の上に民心の爆発が起こり得るとしますが、混乱をもたらすためにこれを避けるべきとします。
韓国の国民は「弾劾、ろうそく、その後の幻滅まですべてを経験した」としながら「李在明や民主党を超える大きな希望のシナリオ」を作り、これに沿った「秩序ある変化」が必要だと説いています。
いかがでしょうか。この4つのコラムは違った角度から同じことを述べているように思えないでしょうか。韓国は今、民主主義の危機にあるということです。
政党間の対話や妥協が無いばかりでなく、異なる政治的な指向性を持った市民が対話する空間すらも無くなってしまったことを問題視しているのです。この状況では代案が生まれず、社会が良くなる可能性がありません。
このニュースレターを書いている今日(25日)、李在明代表が偽証教唆の罪に問われた裁判の一審判決があり、無罪判決となりました。全部で五つ起訴されていますが、その中の二つ目です。一つ目は有罪、二つ目は無罪とジェットコースターのような展開です。
判決後、会見に応じる李在明氏。YTNをキャプチャ。
判決後、裁判所前で李在明氏は「これからは政治がこのように互いに殺し、踏みつけようとするのではなく、互いに共存し共に進むそういう政治になってほしい。殺す政治よりもこれからは人を生かす政治をしよう」と与党に呼びかけました。
なかなか象徴的な言葉です。政治の再生はなるでしょうか。残念ながら極限の対立構造の中で、そうはいかなそうです。
とはいえ韓国内ではふたたび「大統領制ではない新たなかたち」の必要性への言及が増えると思います。繰り返しになりますがしかしその変化を語る場が存在せず、変化の芽を育てる「園」が見当たらない点こそが、真の問題であると私は思います。
これが韓国政治の問題の最前線であることをぜひ、ニュースレターの読者の皆さんと共有できればと考えています。この認識の上に私は南北関係や韓国社会のこと取材し、考えていくからです。
ただ、明るい話もあります。
総選挙を控えた今年3月のニュースレター39号でドキュメンタリー『政治戦争』を紹介した際にも言及した、建国大学の李官厚(イ・グァヌ)教授が国会の立法調査処長(次官級)に抜擢されました。48歳で史上最年少とのことです。前出の四つのコラムのうち一つ目のコラムを書いた人物です。
李官厚教授の任命を伝える教授新聞の記事。
同処は立法府である国会を支える様々な調査を請け負う部署で、立法府のエンジンのような役割を果たしています。
総理在任時に演説局長を務めるなど、共に民主党の金富謙(キム・ブギョム)元総理の懐刀の一人としても知られる同氏ですが、進歩派というよりも「改革派」という言葉がピッタリの人物です。
私ももう8年ほどお付き合いしながら、何度もインタビューを重ねてきましたが、口をついて出てくるのはいつも共に民主党の批判ばかりです。そんな人物が重責に就いたことで、共に民主党や韓国政治の変化が少し期待できると嬉しくなりました。
(3)北朝鮮に‘スタバ’で資本主義をアピール?
スーパーのお寿司にあたって悶えていた先週金曜日、驚きの報道資料を目が飛び込んできました。私が住む金浦(キンポ)市からのものでした。
タイトルは「松岳山、北韓マウルビュースターバックス、金浦市愛妓峰に29日オープン」。何の話なのか説明する前に、まずは現地の写真をご覧ください。私が昨日日曜日(24日)に直接撮影してきたものです。
北朝鮮の黄海北道(ファンヘプクト)を一望できる展望台にスターバックスがオープンします。24日、筆者撮影(以下の写真もすべて同様)。
なんのこっちゃでしょう。一つずつ解説します。
まず「松岳山(ソンアクサン)」とは、北朝鮮の開城(ケソン)市の「開城八景」に数えられる名山です。次に「北韓」は北朝鮮のこと。「マウル」は韓国語で「村」のことです。「ビュー」は英語です。
「愛妓峰(エギボン)」というのは金浦市にある山の名前です。
ソウル市庁から西に約1時間。高さは約150メートルで、名前の由来は朝鮮時代の「丙子の乱(1636〜37、後金[清]が李氏朝鮮を侵攻した)」の際、芸妓が慕う官吏が清に拉致された後にこの山にたどり着き官吏を偲んだという言い伝えによるものです。
山の頂上には「愛妓峰」の碑と、約1万5000人の金浦市に住む失郷民(38度線の北側出身で朝鮮戦争の際に南側に渡ってきた後、北朝鮮に戻れなくなった人々)の思いを込めた望拝壇(故郷である北側に祈りを捧げる祭壇)がある。
つまり、「松岳山と北朝鮮の村を望めるスターバックスが愛妓峰にオープンする」というものです。報道資料には「金浦市が愛妓峰をグローバルな観光地として育成するために企画し推進した」とありました。
他の宣伝文句としては、「北朝鮮のケプン郡の民間の村と、荘厳な祖江(チョガン、漢江と臨津江が出会う場所)のパノラマビューが目前に広がる展望」、「民間人統制区域にあり、検問を経て入場できる唯一無二の異色のカフェ」というものも。
しかし私が驚愕した理由、すなわちこの記事を書いている理由は報道資料の最後の一文にありました。
「資本主義の象徴的なブランドの入店(誘致)により韓半島の強固な安保力を象徴」
そうなんです。北朝鮮を一望できる地域にスターバックスを誘致し、資本主義の素晴らしさを内外にアピールしようというのです。これを読んだ時に「はあ!?本当にバカなんじゃないのか?」と本気で思いました。
間を流れるのが「祖江チョガン」です。写真右上(北東)を進むと臨津江イムジンガン、右下(南東)に進むと漢江ハンガンとなり、その二つが合流した河をこう呼びます。なお、地図上では漢江ハンガンと表示されます。
上の写真の上段中央部を拡大したものです。宣伝のために作られた北朝鮮の小さな村があります。望遠鏡からは動いている人々の姿が見えます。
愛妓峰から北朝鮮までの距離は約1.4キロ。見るからに貧しい北朝鮮の村々を眺めながら、スターバックスでコーヒーを一杯。これを世界的にアピールしようなんて、なかなか常人には考えられない悪趣味極まりないプロジェクトです。
いったい何を考えてこれを作ったのか。今週金曜日のオープンセレモニーに取材に行って聞いてきます。ご期待ください。
スターバックスの内部からはこう見えます。店舗は一階のみで、二階は同地を守る海兵隊の軍事施設となっています。
◎あとがきに代えて
今年も残すところ、あと一か月あまりとなりました。私の年内のノルマは、本を書き上げることです。這ってでも、なんとしても書き上げなければなりません。
このため、もしかしたら更新が少しばかり疎かになるかもしれません。しかし来年以降、よりしっかりした舞台で仕事するためには、これを避ける訳にはいかないのです。
サポートメンバーの皆さんにはご迷惑をおかけすることになるかもしれませんが、見守っていただけると幸いです。いつもありがとうございます。(徐台教)
悪趣味なスタバの前で一枚。