ニュースレター号

[35号 K-2] 強まる韓米・朝露それぞれの結びつき、日本も核使用計画に参加?、金正恩氏が明かす「南を叩く合法性」など

 サポートメンバーの皆さま、アンニョンハセヨ。バレンタインデーの今日14日、韓国の首都圏では20度近くまで気温が上昇しました。ニュースでしきりに繰り返す「4月の陽気」という言葉を、毎夕の習慣となっている愛犬の散歩の際に実感しました。

 とはいえ、世の中はそんなにのどかではありませんよね。ガザで起きていることを筆頭に、あちこちで悲劇が進行中です。止められないもどかしさと怒りが頭の中で常に渦巻いています。

 そして朝鮮半島の南北関係もまた、一本一本、これまで当たり前だったものがそうでなくなっています。行き着く先に何があるのか。歴史は繰り返すという言葉が間違っていることを行動で示す必要があるでしょう。

 それでは過去一週間の南北関係と朝鮮半島問題の動きを見ていきましょう。なお、朝鮮半島問題というのは、朝鮮戦争の平和に関するものです。核問題や朝鮮戦争終結といった話題が含まれます。

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◎朝鮮半島問題の動き(2月7日~14日)

・強まる米韓、日米韓の結びつき

 まずは米韓の軍事的な結びつきについてです。韓国と米国の間には昨年4月の首脳会談の際に発表された『ワシントン宣言』に基づく『核協議グループNCG(Nuclear Consultative Group)』が存在します。

 これは北朝鮮の核の脅威に対する米国の拡大抑止を保障するための組織で、米国の核兵器の使用を含む戦略的対応を米韓が共同で協議する枠組みです。

 昨年7月と12月の二度にわたって関連会議が行われてきましたが、2月12日(現地時間)に米国で米韓代表が『NCGフレームワーク文書』に署名しました。

 韓国メディアによると、同文書には「NCGの設立背景、構成、参加、機能などNCGが指向する細部の目標が書かれている」とのことです。また、今回の署名を機にこれまで米韓のNSC(国家安全保障会議)が管理していたNCGを国防部が受け持つよう変更されました。

 NCGは今年6月に韓国で開催される三度目の会議で核兵器の運用計画を作成し、拡大抑止を完成させるものと見られています。そして昨年の二度目の会議後にも明かされたように、この計画を今年8月からの米韓による合同軍事演習『ウルチ・フリーダムシールド』で実際に訓練する見通しです。

12日(現地時間)、『NCGフレームワーク文書』に署名するNCG米韓代表。国防部提供。


12日(現地時間)、『NCGフレームワーク文書』に署名するNCG米韓代表。国防部提供。

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 一方で今後、このNCGに日本や豪州などの同盟国が参加する可能性があると韓国メディアは指摘しています。これに関連し『聯合ニュース』は12日付けの記事で、米国で行われた米シンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)主催のシンポジウムにおける米韓登壇者の発言を紹介しています。

 同記事によると、米国のソン・キム元米国北朝鮮特別代表、韓国の金聖翰(キム・ソンハン)元国家安保室長のいずれも、11月の大統領選挙の結果がどうなろうとも日米韓の結びつきは強まるという見解を述べたとのことです。

 特に金元室長は、NCGに日本が参加するのかという問いに「日本にかかっている。韓国(のドア)は開かれている」と発言し注目されました。

 金元室長はこの点に関し、安保室長として在職時に日本と議論したことがあるとし「NCGは万一の事態が起きたとき、核兵器をどうやって使うかに関するものなので、日本にとっては少し敏感な問題になる」と説明したそうです。

 記事ではまた、ロバート・ケプキー米国務副次官補(東アジア・太平洋担当)による同シンポジウムでの「米韓日3国は北朝鮮とロシアとの軍事協力にも共に対応している」という発言も紹介しています。

 北朝鮮とロシアとの結びつきが強まるにつれ、米韓日の結びつきも強まるという論理ですが、互いが互いを利用しているようにしか見えませんね。

 同氏はさらに、「米国は(北朝鮮と)対話を望み、条件を持たず対話するという立場を明らかにしてきた」ともしています。ニュースレターで何度も書いてきたように、朝鮮戦争を終わらせるという目標を掲げれば、北朝鮮は対話に出てくるでしょう。これは歴史が証明するものです。

 いずれにせよ、日米韓の結びつきは11月の大統領選以前まで強まり続けるものと見られます。トランプ大統領になっても後戻りしないような枠組み作りを急ぐことになるでしょう。

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・武器開発に勤しむ北朝鮮、目的はロシアでの販売?

 一方の朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)は、新型武器の開発に余念がありません。12日、国営朝鮮中央通信によると前日11日、同国の国防科学院が「240ミリ操縦放射砲弾の弾道操縦射撃試験を行った」とのことです。

 『聯合ニュース』によると、これは多連装ロケット砲の誘導化に成功したということを指すようです。

 昨年8月に金正恩氏が砲弾生産工場を訪れた際に「122ミリと240ミリ放射砲弾の操縦化(誘導化)を実現したことは現代戦の準備において重大な変化」と述べて以降、実際に試験発射を行った事実を公開するのは今回が初めてとのことです。

 同記事では、国策シンクタンク『統一研究院』の専門家が試験発射の背景について「二重の用途がある」と述べています。一つは「実用的な次元としてロシアの注文を念頭においた可能性がある」というもので、もう一つは「対南戦争準備に言及する中で、韓国を圧迫する意図もある」というものです。

北朝鮮メディアが公開した「240ミリ操縦放射砲弾の弾道操縦射撃試験」の様子。朝鮮中央通信より。


北朝鮮メディアが公開した「240ミリ操縦放射砲弾の弾道操縦射撃試験」の様子。朝鮮中央通信より。

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 また14日には、東海(日本海)に向け巡航ミサイル数発を発射したと韓国軍が明かしました。前号でも言及したように、北朝鮮は今年に入り巡航ミサイル発射実験を続けています。今回が5度目になります。

 やはり『聯合ニュース』を見ると、こんな実験が続く背景について、韓国国防部は「ミサイルシステムの安定性を確保し、打撃の正確性を高める意図」と分析しています。

 その上で国策シンクタンク『国家安保戦略研究院』のミサイルセンター長による「ロシアへの輸出を念頭に置いて、着弾の様子を公開する可能性がある」という見立てを引用しています。

 こうした視点からは、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの兵器輸出が、北朝鮮にとって大きなチャンスとなっていることが透けて見えます。実戦に耐えるよう技術を進化させ、ロシアからの見返りも期待できるという文字通りの一石二鳥です。

ウクライナ内務省が公開した、ミサイル着弾現場の写真。同省テレグラムより引用。


ウクライナ内務省が公開した、ミサイル着弾現場の写真。同省テレグラムより引用。

 なお「北朝鮮版イスカンデル」と言われる北朝鮮の短距離弾道ミサイルKN-23がロシアに輸出され、ウクライナ攻撃に使われているという記事が、ウクライナ内務省が撮影した写真と共に米政府系メディアRFA(Radio Free Asia)に掲載されました。記事の現場はドネツクで、1人の死者と7人の負傷者が出たそうです。以前にはハルキウでも同ミサイルが使われたとのことです。

一方で「弾道ミサイルに比べ準備や隠ぺいが容易で、近距離の標的に向き、陸上や海上から多様な経路を発射でき、国連安保理制裁決議の制裁対象に含まれない巡航ミサイルこそ、北朝鮮にとってもっとも効果的な軍事的挑発手段である」という専門家の指摘もあります。

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・ロシアと北朝鮮を行き来する人々

 ロシアの話が出たので、二つの興味深い動きを記しておきます。まずは、ロシアの観光客97人が北朝鮮を訪問した一件です。2月9日から12日までのことで、これは2020年1月に新型コロナ防疫のため北朝鮮が国境を封鎖し、その一部が昨年に解除されて以降、はじめての観光客でした。

 3泊4日で一人当たり750ドルだったというツアーに参加した、ロシアメディア『ボストーク』の記者のルポ記事が話題ですが、写真撮影において特に規制はなかったという点が特に関心を集めているようです。

 また、労働者と見られる北朝鮮住民300人がロシアに派遣されたという一報もありました。これは国策シンクタンク『統一研究院』の趙漢凡(チョ・ハンボム)研究委員によるものです。私も普段から懇意にしている信頼できる専門家です。

 時間の関係から直接確認することはできなかったのですが、趙研究院に取材した『聯合ニュース』によると、2月5日にロシアのウラジオストクとハサンの間の駅に、300人から400人ほどの北朝鮮の労働者と思われる出で立ちをした人物が降り立ったそうです。

 趙研究委員は記事内で「これは第一陣で、今後継続して送られてくるというのが現地の雰囲気」と明かしています。

 労働者の海外送り出しは国連安保理の制裁決議違反でありますが、同研究委員は「ロシアはすでに一線を越えているため、観光ビザや学生ビザを大量に発給する方式で北朝鮮の労働者を継続して受け入れるだろう」と見立てています。

 いずれのニュースも舞台は沿海州(観光客は沿海州から)です。ロシアと北朝鮮の国境に位置するこの地域は今後も要注目となるでしょう。

 さらにロシアは、北朝鮮の広報にも一役買っています。

 韓国の『SPNソウル平壌ニュース』は8日付けの記事で、チャンネル登録者15万人を超えるYouTubeチャンネル『NORTH KOREA NOW』を運営しているのが、平壌に駐在するロシア大使館員の妻であると明かしました。

同チャンネルには最近のロシア観光客の様子も公開されています。ご興味のある方は上記のリンクからご覧ください。

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・金正恩氏が演説で「何かあればいつでも叩き壊滅させられる合法性」に言及

 昨年末以降、「北と南は統一をめざす同族・同質関係ではなく二つの交戦国関係であり、韓国は第1の敵対国である」という趣旨の、韓国を突き放す発言を続ける金正恩氏。

 北朝鮮の建軍節である2月8日に国防省を訪問した席で行った演説の中で、ふたたび強い発言を行いました。

 朝鮮中央通信が9日に公開した演説全文によると、金正恩氏はこの中で韓国に対し以下のように言及しました。該当部分を全訳します。

最近、わが党と政府がわが民族の分断史と対決史を総和(総括)し、韓国の傀儡族属たちをわが前程において最も危害となる第一の敵対国家、不変の主敵と規定し、有事の時にはそれらの領土を占領、平定することを国是として決定したことは、わが国家の永遠の安全と将来の平和と安定のための千万至当な措置です。
こうしてわれわれは同族という修辞的な表現のために、否応なく共和国政権の崩壊を期し吸収統一を夢見る韓国の傀儡たちとの形式上の対話や協力ごときに力を使わなければならなかった、非現実的な桎梏を主動的に打ち捨てたことになり、明々白々な敵対国として規定したことに基づき、何かあればいつでも叩き壊滅させられる合法性をもって、より強力な軍事力を育て、超強硬な対応体制を維持しながら、自主的な独立国家、社会主義国家としての尊厳を守り、周辺環境をわれわれの国益に合わせ、より徹底して治めていかなければならなくなりました。

 以前、下記の記事でも説明したように、年末以降、金正恩氏の「真意」をどう読むのかという作業を韓国の専門家たちは続けています。

 その中の一つに「韓国を交戦国家であると想定し、これ以上は同族ではないとすることで、当然のように彼ら自身が核を打ち込める対象になった」という分析が存在しましたが、今回の金正恩氏の演説がまさにこの見立てを補完しています。

 「何かあればいつでも叩き壊滅させられる合法性」を獲得しようと、韓国に対する解釈を変えたということです。背筋の凍る内容ですね。

 また、演説の末尾で金正恩氏はこうも述べています。

「平和は物乞いをしたり交渉を通じ交換しながら獲得していくものではありません。今われわれの国境線の前では、戦争熱に浮かれ狂気を振りまく突然変異たちが政権を握り、銃口を押し出しわが国家の安全を脅かしています」。

 こうした発言からは、北朝鮮の人々にとっても衝撃的でしかない「統一の放棄」を正当化するための存在として、北朝鮮に対する攻撃的な姿勢をとり続ける尹錫悦政権を活用していることが分かります。

2月8日、国防省を訪問した金正恩氏。娘ジュエも一緒だった。朝鮮中央通信より。


2月8日、国防省を訪問した金正恩氏。娘ジュエも一緒だった。朝鮮中央通信より。

 これも一種の「敵対的共生関係」とすることができるでしょう。南北共に強気に出ることで、自身の権力基盤を強固にするという構図です。また「国境線」という単語の使用も印象的でした。

 一連の金正恩氏の発言は恐ろしいものですが、一方で少しずつその狙いが見えてきていると捉えることもできます。4月の総選挙を控え、韓国内で南北関係が議論になることは全くありませんが、早く国内に超党派の議論の枠組みを作る必要があるのではないでしょうか。

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 なお、北朝鮮は2月7日、平壌の万寿台議事堂で最高人民会議(国会に相当)常任委員会第14期第30次全員会議を開きました。

 これを報じた8日付けの朝鮮中央通信によると、同会議で「『北南経済協力法』、『金剛山国際観光特区法』ならびにその施行規程、『北南経済協力関連合意書』を廃止することについて」という案件が満場一致で採択されました。

 こうした法はいずれも過去、南北の経済協力を進める上で最も重要であった法律です。これを廃止したことで北朝鮮は今後、韓国の交流を一切おこなわないという決意を示したと解釈できます。

 韓国メディアによると今回の動きに対し統一部は「北韓の一方的な廃止宣言だけでは合意書の効力が廃止できると見なせない」と、真っ向から否定しています。

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・統一部長官の矛盾

 今号最後のニュースです。韓国の金暎浩(キム・ヨンホ)統一部長官の矛盾に満ちた発言をご紹介します。

 まず、陰暦のお正月だった2月10日のものから。この日、金長官は京畿道(キョンギド)坡州(パジュ)市にある臨津閣(イムジンガク)で開かれた「望郷敬慕祭」に出席しました。

 この集まりは、朝鮮戦争(1950~53)時代に北朝鮮から逃れ、その後、南北間の行き来ができなくなったことで故郷に戻れなくなったいわゆる「失郷民」が故郷に残してきた家族を想い、正月の茶礼(祭事)を行うものです。

 金長官はこの日、スピーチの中で「政府は北韓のいかなる挑発と言動にも動揺せず、離散家族、国軍捕虜、拉北者、抑留者問題の根本的な解決のために諦めずに前に進んで行く」と述べました。さらに、昨年4月以降、途絶したままになっている南北間の連絡チャネルの復元を北朝鮮側に訴えかけました。

10日、臨津閣(イムジンガク)で開かれた「望郷敬慕祭」に出席した金暎浩長官。統一部提供。


10日、臨津閣(イムジンガク)で開かれた「望郷敬慕祭」に出席した金暎浩長官。統一部提供。

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 次は14日のものです。

 この日、韓国SBSラジオに出演した金長官は「政府は首脳会談だろうが、北韓との対話だろうが対話のための対話はしない」と述べました。さらに「抑止と断念を通じ、北韓が対話に乗り出す要件を作るよう継続して努力する」と明かしています。

 金長官のこんな二つの発言は矛盾を含んでいます。 

 それは、対話なくして離散家族の再会はあり得ないからです。しかし相変わらず、核抑止と核開発の断念が対話の要件(尹政権の3D戦略)となっており、これでは永遠に対話は行われません。

 もっとも「根本的な解決のために前に進む」という考えを突き詰めれば別の結論に達する可能性があります。それは金正恩政権の崩壊です。金長官は「自由の北進政策」という言葉も口にしており、案外こちらが本音なのかもしれませんね。

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◎あとがきに代えて

 2月は本当に綱渡りが続いています。ニュースレターやYouTubeといった普段の業務に加え、書籍の原稿そして3月2日の講演会の準備が一挙に押し寄せています。

 このためどうしても、2月いっぱいはニュースレターの内容が薄くなってしまいます。3月になって挽回いたしますので、少し長い目で見守っていただけると幸いです。それでも大事な動きはこぼさないようにしていきます。

(講演会のお申し込みはこちらから)

 最後に、日朝の動きはどうなのか、という部分が気になる方がいらっしゃると思います。

 ここまで岸田首相が入れ込んでいるため、何かしらの動きがない方がおかしいでしょう。ただ、日朝首脳会談は韓国の尹錫悦大統領にとっては諸刃の剣です。「日本に出し抜かれた」という世論を喚起することになり、4月10日の総選挙にマイナスとなる可能性があるからです。

 この辺を調整するために岸田さんは韓国に来るのかな、と思いましたが、まだ韓国側で訪韓を否定しています。もう少し見守ってみます。

 それではまた次号でお会いいたしましょう。ありがとうございます。(徐台教)

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