ニュースレター号

[32号] コラム「海を越える南北分断」、書籍『1945年 解放直後史 現代韓国の原型』、映画『建国戦争』レビューなど 全7トピック

 サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。本来は金曜日にお送りするはずのニュースレター本編が、二日遅れの日曜日の午後となりました。

 ご存知の通り私は群馬県生まれの在日コリアン3世であり、朝鮮学校、日本の公立校、韓国の大学という3つの異なる環境で教育を受けてきました。さらに人生の半分以上を韓国で過ごし、南北関係や朝鮮半島問題をはじめ、韓国の政治社会的な移り変わりを見つめてきました。

 その中でまだひと月しか経っていない2024年が格別な意味を持って迫ってきます。

 南北関係、韓国政治、日韓歴史認識問題など、現在をどう捉えるべきなのかを真剣に考える時間が続いています。その片鱗を今号に込める過程で思ったよりも手間取りました。発行が遅れたことをお詫びいたします。

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 第32号の目次は以下の通りです。

1.巻頭コラム:海を越える南北分断

2.読書体験:『1945年 解放直後史 現代韓国の原型』~韓国の秘密の3か月~(鄭秉峻、2023トルベゲ)

3.ショートニュース:

(1)梨泰院特別法に尹大統領が拒否権を行使、

(2)人気YouTuberが愛犬を複製し議論に、

(3)李在明代表が新年記者会見を開催、韓国を「4大危機」と表現

(4)海兵隊司令官が「大統領は関係ない」と証言

4.カルチャー:映画『建国戦争』~今なお続く歴史的内戦状態~

5.あとがきに代えて:講演のお知らせ

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◎巻頭コラム:海を越える南北分断

 瞬く間に1月が過ぎた。数冊の本とその数倍のレポートを読み、何万字かの文字を書くという個人的にはそれなりに意味のある時間を過ごせたものの、世の中にどう寄与しているのかの手応えはあまりない。それどこから身もだえする南北分断の遠心力に吹き飛ばされそうである。

 現在の韓国と朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の対立には、二つの側面からブレーキが存在しないという特徴がある。一つ目は大国による制止の不在だ。軍事協力を進める日米韓のうち反対世論が最も強い韓国において、南北対立が尹錫悦政権を支えていることを知る米国は尹政権を諫めることができない。一方の北朝鮮はウクライナ戦争への支援をテコにロシアとの間で国際社会のルールを無視した関係深化を進め、体面を気にする中国の影響圏からはみ出し、自由な外交空間を開拓し続けている。

 もう一つは、南北共に止まる名分が存在しないことだ。北朝鮮では昨年末の朝鮮労働党全員会議の中で金正恩氏が明かした、南北関係における同質性と同族性を否定し韓国を敵対国家と見なす根本的変化を国内に定着させるために、アンチ韓国のショック療法を続ける必要がある。一方の韓国では金正恩氏に突きつけられた絶縁状を軍事的な挑戦と読み替えこれまで通り対処するだけで、南北関係における根本的な変化への対応策を打ち出せずにいる。停まったところで何をどうすればよいのか分からないまま、慣性で走り続けているのである。

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 南北があちこちで寸止めのマスボクシングを繰り返すニュースを横目に、一冊の本を読み終えた。鄭秉峻(チョン・ビョンジュン、58)梨花女子大学史学科教授による『1945年解放直後史 現代韓国の原型』(2023,トルベゲ)という大著だ。詳しい解説は今号に載せた書評に譲るとして、同書に書かれていることを失礼を承知で一行にまとめるならば「1945年8月15日の植民地支配からの解放により訪れた『独立した統一国家を建設する』という理想がどのように潰えたのかを、新たな史料と観点から掘り起こした一冊」となるだろう。

 韓国では1945年8月から大韓民国政府樹立(48年8月15日)、朝鮮民主主義人民共和国政府樹立(48年9月9日)までの間を「解放空間」と呼ぶ。解放の喜びもつかの間、北緯38度線を境に北はソ連、南は米軍による軍政が敷かれ、さらに冷戦の影が朝鮮半島を覆い始める中、二つの別々の政府が樹立するまでには様々なドラマがあった。

 そして日本では全くと言っていいほど知られていない(韓国でも同様だ)この解放空間をどう捉えるのかが実は、朝鮮半島の現代史をどう読むかの分かれ目となる。やはり今号で紹介する映画『建国戦争』のように、反共保守の立場から現在の発展につながる礎を築いた成功の歴史と捉え誇りに思うのか、それとも「独立した南北統一国家」という理想が潰える過程と見なし教訓を得ようとするのかで解釈は大きく異なる。

 同書が特に後者の立場を標榜している訳ではないが、読んだ者はみな失敗した歴史に思いを馳せざるを得ないだろう。私も本の余白に大量のメモを書き込み続けた。そして最後のページを読み終え本を閉じたとき、大きなため息とともに力が湧き上がってくるのを感じた。今は昔とは違う。もう一度やり直せる、やり直すべきだ。

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 しかしこんな気分も憂鬱な知らせにかき消されそうになった。1月29日から2月2日にかけて、群馬県高崎市の群馬の森にある朝鮮人追悼碑が県による行政代執行で撤去されたためだ。群馬県には植民地時代、約6000人の朝鮮人が軍需工場や鉱山に動員され、300人から500人が命を落としたとされる。県議会が全会一致で賛同し04年に設置された碑は、追悼集会の際の「強制連行」という参加者の発言が問題視され14年に県が設置許可の更新を認めなかった。碑を設置した市民団体は県の決定取り消しを求め提訴し一審で勝訴するも、高裁、最高裁で敗訴し、移転をめぐる話し合いが平行線をたどる中、県が撤去を急いだものだ。

 群馬の森は、私が生まれ育った群馬県多野郡新町(06年に高崎市に合併)からは自転車で20分しかかからない。少年時代に従兄弟とよく遊びに行き、ドングリで作ったコマを回したり、輪ゴムで模型飛行機を飛ばしたものだった。碑ができてからは一度しか訪れていないが、その静かな存在感はよく覚えている。新聞社のヘリが捉えたという粉々になった碑の姿はまるで、幼い頃の思い出や日本社会の良心の亡骸のようだった。思わず目を背けた。

粉々になった朝鮮人追悼碑。朝日新聞より引用。


粉々になった朝鮮人追悼碑。朝日新聞より引用。

 追悼碑撤去の一報は私が住む韓国でも大きく報道された。代表的な地上波3社がすべて夜の看板ニュース番組で取り上げ、新聞やネットにも100本を超える記事が掲載された。「日本が歴史を消去しようとしている」という論調がほとんどだった。だが思ったよりも反対の声が大きくなることはなかった。日本政府、より正確には自民党の「居直り」とも呼ぶべき歴史修正主義的な姿勢について、韓国の市民はすでに織り込み済みだからではないかと私は考えている。

 いくつかの記事や読者コメントの中には韓国の尹錫悦政権の対応をなじるものもあった。なぜ日本政府に強く反対しないのかいう不満だった。理由は意外なところにあった。追悼碑の撤去をめぐる一連の過程に朝鮮総連の人士が関わっているためだというのだ。尹政権が北朝鮮との緊張を高め続けていることは既に述べた。北朝鮮の肩を持つと「誤解」されるようなことは避けるという「分断の論理」だ。言い換えるならば金正恩氏と同様に、尹錫悦氏もまた朝鮮総連を支持する海外同胞に対し、その「同族性」を全く認めていないかのようである。分断は朝鮮半島ばかりか遠い群馬県にまでその影を落としていた。

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 私は一人のコリアンとして、2024年の朝鮮半島をいくつもの失敗の上に存在するものとして再び捉え直そうとしている。国を失った失敗、統一国家を作れなかった失敗、そして統一できなかった失敗だ。南北は対立し、日本ではヘイトにさらされる。その過程で在日コリアンは何に拠って立つべきか自問することも少なくない。だが答えは出ている。もう一度、理想に拠って立ち、朝鮮半島の南北に変化をはたらきかけていけばよいのである。新たな知恵と枠組みもって立ち向かうのみである。 

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◎読書経験:『1945年 解放直後史 現代韓国の原型』~誰も知らなかった解放空間の3か月~

 日本による植民地支配からの解放が、どのような過程を経て南北別々の政府樹立という結末を迎えたのか。韓国で「解放空間」と呼ばれる45年8月からの3年間は、今に続く分断体制の始まりという重要さにもかかわらず、韓国で最も話題に上らない3年間でもある。過去に取材したあるベテラン史学者は「韓国人はこの時代をもっとよく知らなければならない」とため息と共に語っていた。

 この時代が避けられる理由は、わずか3年間に起きた内容が複雑であることよりも、これを理解する過程が歴史解釈と直結するためではないだろうかと勝手に想像してみる。高校生までの教育現場で扱うには、議論の種が多すぎるのだ。解放空間が現在に与えた影響を考える場合、やたらと「歴史のif」を考えることになり畢竟、政治批判になる他にない。この時に当然、批判者は歴史を俯瞰しながら、分断をもたらした責任を歴史上の人物や行動に求めることになる。これはそのまま、分断体制の恩恵を受ける現在の政治勢力への批判となり、高校では扱いきれなくなる。こうして、分断を決定づけた3年への理解がぽっかりと抜けたままになってしまうという構造だ。

 私もまたそうだった。分断を考える際のスタート地点は朝鮮戦争であり、それ以前の歴史は複雑なものとして放っておいた。数年前に必要にかられ勉強したことでようやく理解できるようになったと告白しておく。本書はその理解の幅を別次元に広げてくれたことで、近年稀にみる読書経験となった。書籍執筆のためにここ数年は韓国現代史に関するたくさんの本を読んだが、最高の一冊だったと言っても過言ではない。

 著者の鄭秉峻(チョン・ビョンジュン、58)梨花女子大学史学部教授は、韓国屈指の現代史専門家として名高い。『夢陽・呂運亨評伝』、『雩南 李承晩研究』、『韓国戦争』、『独島 1947』といった書籍に加え、独立運動と解放空間期をはじめとする現代史に関する多数の論文、さらに史料の解題など精力的な研究活動を続けている。

本文425ページの大著であるが、読む者をまったく飽きさせない。翻訳が待たれる。筆者撮影。


本文425ページの大著であるが、読む者をまったく飽きさせない。翻訳が待たれる。筆者撮影。

 本書では題名にある通り、1945年の8月から12月までという5か月間を扱っている。38度線で分割された朝鮮半島の南側を舞台に、これまで知られてこなかった事実を読者に突きつける。だが、そのためには背景の理解が欠かせない。著者は丁寧な構成で二兎を追うことを可能にした。

 本書は四つの章からなる。

 第一章「暴風:建国準備委員会、朝鮮総督府の終戦対策と二重権力の創出」では、日本の敗戦を見越し新国家建設に備えていた呂運亨(ヨ・ウニョン、1886~1947)を中心に、解放直後の38度線以南の様子をダイナミックに描いた。実力ナンバーワンの政治家として「独立した南北統一国家」を目指し、利他的な政治姿勢で名を馳せた呂運亨の栄光と挫折を丁寧に追うことで、時代背景を読者が掴めるようになっている。章の最後では、敗戦後に日本総督府が行った悪事(干渉)についての一節もある。

 第二章「米国の南韓進駐と知られざる黒幕としての影響力:日本軍・通訳・ウィリアムスの役割」では、ホッジ中将率いる米24軍団の38度線以南への進駐の様子を扱う。軍政を敷く権力に対し、どんなアクターがどう影響を及ぼしたのかが赤裸々に描かれる。ここから徐々に本書の輪郭が見えてくる。それは、米国が本来保持していた朝鮮半島の信託統治からの独立というプランが、米軍政と結託した南側保守勢力によって歪められていく過程であった。

 第三章「米軍政の総督府・人共・臨時政府制作と権力の払い下げ」では、「過渡政府樹立」に向けて李承晩(イ・スンマン)・金九(キム・グ)の活用を本格化させる米軍政と、これに寄生する親日派や保守勢力の姿が描かれる。中国や日本に比べ米政府の優先順位が低い朝鮮半島で、米軍政は秘密裏に新政府樹立に向けた動きを進めていた。

 本書の結論部分にあたる最終章の四章「知られざる真の反託運動とその帰結」では、これまで一般的な「解放空間」理解とされてきた「45年12月のモスクワ三相会議の結果を受けて反託運動が始まった」という常識を覆す。米英ソによるモスクワ三相会議では、朝鮮半島に臨時政府が成立する場合、最長5年の米英中ソによる信託統治期間を経て独立させるという取り決めが交わされたが、これが保守勢力により米軍政下の韓国に間違った形で故意に伝えられた。これにより反共・反託運動が燎原の火のごとく広がったのは事実だが、同会議を控え、前述したような南側独自の政府樹立の動きがピークに達していたというものだ。圧倒的な筆致と新史料で読者の常識を覆す。

 著者は本書の扉に「1945年の韓国、韓国人たちに捧げる」と記している。通読することでこの意味をようやく理解することができる。

 神でもない限り1945年当時、本書に書かれているような事態の全貌を市民が知ることは不可能だった。私は著者の鄭秉峻教授に過去2度インタビューをしたことがあるが、その時に知識人の役割について尋ねたことがある。鄭教授は「スマホ一つで80年代の各国首脳レベルの情報が手に入る現在、知識人の役割は既にない」とキッパリと答えたが、本書をもってその言葉を完全に覆したと見てよいだろう。鄭教授は一般市民はもちろん、呂運亨といった当代きっての政治家ですら手が届かなかった事実をまとめ、現在を見る鏡として提供してくれているのである。その意味で、本書は理想に生き、そして挫折した1945年そして解放空間の人々に対するレクイエムであると同時に、新たな始まりを産むゆりかごでもある。

 鄭教授は前出のインタビューの際に「3.1独立運動の1919年、解放の1945年とビッグバン級のエネルギーをうまく活用できなかった」と歴史のエネルギーが漂流したことを悔やむ姿を見せたことがある。

 朝鮮半島の秩序を良い方向に向かい覆せるような次の機会がいつ来るかも分からず、それが理想の歴史を実現する最後の機会になるかもしれないという恐れもまたある。だがもう一度、もし次の機会が来る場合には、本書がそれを生かす絶好の教科書となるのではないかと私は確信する。朝鮮半島の未来を信じるすべての人に、そして歴史を生きる人間を愛するすべての人に勧めたい一冊である。

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◎ショートニュース

(1)梨泰院特別法に尹大統領が拒否権を行使

  ニュースレターでも度々お伝えしてきた『梨泰院特別法』。22年10月29日にソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で起きた、159人が亡くなった雑踏事故に関する法案です。同法の骨子は「独立的な真相究明調査を行う特別調査委員会の設置」にあります。事件直後に行われた捜査は「警察による身内(監督機関である行政安全部、警察)を対象とした捜査」に過ぎず、今後の再発防止のためには第三者による「調査」が必要であるという観点から提案されました。1月9日に国会で可決され(与党は票決に不参加)、尹大統領の裁可を待つのみとなっていました。

 しかし1月31日、尹大統領は拒否権を行使しました。法案により設置される特別調査委員会の権限が過剰で、同委員会を構成する手続きにも中立性が欠けるというのが主な理由です。拒否権を行使する代わりに政府は、永久的な追悼施設を作り、被害者と遺家族への支援を増やすと発表しました。

 雪が積もる中で地べたに身を横たえる「五体投地」を行ってまで法案可決を訴えてきた事故の当事者たちは、強く反発しています。昨日2月3日午後にはソウル市内で集会を開きました。この日発表した声明の中で「人の皮をかぶった者たちの無責任な決定」と大統領を強く批判する一方、野党に対しても「いつまでこんな道理に外れた政権を傍観し続けるのか」と怒りの矛先を向け、来たる4月の総選挙での圧勝を求めました。彼ら遺家族たちは「いくら真相が究明されても私たちの子どもは戻ってこない。しかしそれでも私たちは止まらない」とさらなる闘いを誓っています。

 政府は過去、繰り返し調査が行われたセウォル号沈没事件(2014年)の例を持ち出し「特別調査委員会は意味がない」としています。この内容に一定の真実があることは確かですが、梨泰院雑踏事故に関しては一度も特別調査委員会が設置されていないのもまた事実です。大統領の拒否権行使について、世論は6割ほどが反対している状況です。

 いずれにせよ、ふたたび国会に戻された梨泰院特別法の行方は、4月10日の総選挙の結果に委ねられることになりました。なお、『韓国ギャラップ』社による最新の世論調査(調査期間1月30日~2月1日)では尹大統領の国政支持率(肯定評価)は29%と昨年4月以降、9か月ぶりに20%台に落ち込んでいます。

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(2)人気YouTuberが愛犬を複製し議論に

 1月に犬食を禁止する法案が成立したばかりの韓国で、犬にまつわるもう一つの話題が注目を集めています。チャンネル登録者が20万人を超える人気YouTuberが、交通事故で死んだ愛犬の遺伝子を用い作った「複製犬」を公開したためです。

 『SBSテレビ』によると、愛犬2匹を複製するためにかかった費用は、日本円で約1000万円。取材によると複製した業者は過去、胚性幹細胞(ES細胞)の研究結果をねつ造したことで、国民的なスター研究者から犯罪者(容疑は横領)へと転落した黄兎錫(ファン・ウソク)元ソウル大教授の同僚であることが明らかになりました。黄教授の研究チームは世界で初めて複製犬を作ることに成功しています。この業者では年間50匹の犬を複製できるということです。

複製された犬。サモエドだ。韓国メディアのキャプチャ写真を引用。


複製された犬。サモエドだ。韓国メディアのキャプチャ写真を引用。

 韓国内では今なお、死んだ犬を複製することをめぐる議論が続いています。SBSによると、一匹の複製犬を作るためには、卵子を提供する犬、代理出産する犬など別の犬の犠牲(負担)を伴うといいます。現状の動物保護法では、このような過程に関する取り決めがないため、動物保護団体は複製業者を訴えている状況です。

 政府は複製を規制するのか、それとも法案を補完するのか検討を始めているといいます。SBSでは「伴侶動物の複製を全面的に規制するよりも、どこまで認めるのかについての社会的な議論が必要である」という専門家のコメントを紹介しています。

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(3)李在明代表が新年記者会見を開催、韓国を「4大危機」と表現

 最大野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン、60)代表が1月31日、国会で新年記者会見を行いました。

 李代表は記者会見の冒頭で発表した声明文の中で現在の韓国の現状をこう表現しました。

 「2024年の今日、何重もの危機が国民の生活を脅かしています。世界に注目されていた韓国の経済は墜落中にあり、時ならぬ戦争の危機が迫っています。人口の減少により国家の存続を心配しなければならず、アジア一と評価された民主主義が破壊されています。韓国は『民生、戦争、低出産、民主主義』という4大危機に瀕しています」

 続いて、その原因を「尹錫悦大統領の独断と無能」に求めました。

共に民主党の李在明代表。同党HPより引用。


共に民主党の李在明代表。同党HPより引用。

 李代表は、声明文でそれぞれの危機について具体的に述べた上で、政府に対し「過去2年間、尹錫悦政府は主権者である国民の意志を無視したまま、政敵を倒すことだけにすべてを賭けてきた」と強い批判を行いました。これは自身への度重なる捜査や起訴も含めた意見と見るべきでしょう。

 さらに上記の危機に対する解決法をそれぞれ発表しました。民生(経済)においては再生エネルギーへの転換の加速化とR&D投資の拡充、南北関係においては南北間のホットラインの復活、低出産についてはすべての新生児に対する「出生基本所得」の提案といった具合です。

 李代表はその上で4月の総選挙の重要性を訴え「必ず勝利し、尹錫悦政府が招いた国政の危機を克服する」と決意を明かしました。なお、李代表は総選挙の勝利ラインとして過半数をちょうど超える151議席であることを明かしています。

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(4)注目の『チェ上兵事件』、海兵隊司令官が裁判で「大統領は関係ない」旨を証言

 昨年末のニュースレター第27号で紹介した、2023年の韓国で最も注目を集めた出来事の一つである「チェ上兵事件」(まだ未読の方は下記リンクよりぜひお読みください)。

 豪雨で増水した川で流され死亡したチェ・スグン上兵事件を調査する過程で、「抗命および上官名誉毀損」の罪に問われたパク・チョンフン大佐(52)の2度目の公判が2月1日、中央地域軍事法院(裁判所)で行われました。

 この日の公判には、パク大佐が捜査資料を慶尚北道警察庁へと移牒することを制止したとされる(パク大佐は移牒を強行したことで罪に問われている)、キム・ゲファン海兵隊司令官が証人として出席しました。事件の焦点の一つとして、大統領室の介入が存在したか否かという部分、より具体的には大統領の「激怒」が介入の背景にあるのかが注目されています。

 この点に関し、キム司令官は上官であるイ・ジョンソプ国防部長官からの移牒を止める指示があったことを認めつつ、尹大統領の「激怒」についての質問には「そんな事実はない」と答えたと韓国メディアは報じています。

 キム司令官はまた「軍人はどんな場合にも上官の正当な指示に当然したがう義務があり、それが変更されたならば変更後の指示に従うのが基本だ」と、パク大佐を批判する発言も行いました。一方で、パク大佐の捜査への信頼を明かすなど、現場と国防部や政府上層との間で難しい立場に立たされていることを感じさせる一幕もありました。

 パク大佐はこの日の公判前、韓国メディアに対し「今から海兵隊司令官として名誉ある選択をすることを望む」と述べています。

 今後、どのような判決が下されるのか。目の離せない裁判はまだ続きます。

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◎カルチャー:映画『建国戦争』~今なお続く歴史的内戦状態~

 南北分断や東西冷戦を背景に、軍事クーデターや独裁政権、民主化さらに圧縮型の経済成長が行われた韓国では、現代史の節目節目の事件や、重要人物をどう見るのかで意見が割れることが多い。時にそれは激しい議論となり、市民の間で対立を呼ぶ結果につながる。

 その最たるものの一つが韓国の初代大統領・李承晩(イ・スンマン、1875~1965)の評価であることは異論を待たないだろう。支持する者からは「国父」と崇められる一方、そうでない者からは「虐殺者」や「権力の権化」と批判される存在だ。筆者の経験からこうした真逆の評価が噛み合うことはない。

 そんな中、2月1日に『建国戦争』という映画が公開された。ポスターと「建国」という言葉から、李承晩を称賛する映画だというのがすぐに分かる。監督は2020年のドキュメンタリー映画『金日成の子どもたち』(私は未見だが、Amazon Prime Videoで日本語版が視聴できる)で知られるキム・ドクヨンだ。

映画『建国戦争』のバナー。「学校で教えてくれない大韓民国建国と李承晩大統領の歴史」とある。


映画『建国戦争』のバナー。「学校で教えてくれない大韓民国建国と李承晩大統領の歴史」とある。

 かねてから李承晩の評価をめぐる議論に興味があり、また、冒頭のコラムで書いたように南北分断の現在に頭を悩ませていたことも重なって、公開翌日に映画館に足を運んだ。

 上映ギリギリに席についたが、まず観客の多さに驚いた。平日の午後であったにもかかわらず、八割程度が埋まっていた。観客は年配層がほとんどだ。一般的に韓国では65歳以上の6割近くが保守層だと理解されているが、それを証明するかのようだった。

 映画は『4.19革命』で大統領を追われた1960年をはじめ、幅広い年代を扱っている。1900年代の学生時代、1910年代の独立運動、そして1945年からの解放空間、さらに朝鮮戦争時までほぼその生涯を追っている。

 キム監督も保守紙『朝鮮日報』とのロングインタビューで明かしているように、映画に通底するのは「北朝鮮が過去70年間、李承晩の功績を一貫して消そうとしてきた」という問題意識だ。こうした観点に基づき、映画では独立と国家の発展に身を捧げた李承晩の「真の功績」が語られる。

 一般的に李承晩の評価の核心は、解放空間の混乱期で大韓民国の「建国(支持者はこう呼ぶが公式には政府樹立である)」を成し遂げたこと、さらに北朝鮮による南侵から始まった朝鮮戦争を耐え抜き、韓国発展の礎となる韓米相互防衛条約の締結を成し遂げた2点となる。

 前者については「現実的に統一国家は無理だったため、南側だけも自由民主主義に基づく政府を樹立する他になかった」と評価され、後者についても同様に、国を守った過程だけが強調される。

 そこには、その過程で李承晩の指示により犠牲になった数十万の人々、例えば済州4.3事件、麗順事件、保導連盟事件、朝鮮戦争期の民間人虐殺などはすべて「国家」や「反共」の名前で正当化される。本作でもこの姿勢は忠実になぞられており、李承晩を否定する言説は「北朝鮮の陰謀」、「左派・共産主義者の視線」と片付けられている。

 こうした点から、本作を李承晩への公平な評価を行う作品とするのには無理がある。李承晩を支持する人々のコメントを集め、都合の良い部分だけに焦点を当てる「歴史の取捨選択」を行っており、保守層に向けた作品であると見る他にない。とはいえ、キム監督の表現は一線を越えておらず、低俗な映画ではないという点は付け加えておきたい。

 李承晩への評価はつまることろ、理想に基づかず現実に基づいたその行動を受け入れるか否かで分かれる。「仕方なかった」というには余りに多くの歴史的機会の喪失と失われた人命があったことを考える場合、私は本作を無邪気に勧めることはできない。

 上映が終わると、会場は拍手で包まれた。涙を流している人もいた。その姿に釈然としない思いを抱いたものの、同じ社会を構成する市民であることもまた、揺るがない事実であろう。韓国の思想的内戦状態の深さを感じる時間だった。

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◎あとがきに代えて:講演のお知らせ

 発行が大幅に遅れてしまいました。

 この2月は間違いなく、これまでの20年の集大成となるべき時間となっており、書籍の執筆に時間を割かなければなりません。ニュースレターの遅れや分量の低下が考えられますが、お付き合いよろしくお願いいたします。この分は3月からの更新で挽回していきます。

 ひとつお知らせがあります。3月2日に、大阪で南北関係をテーマにした講演会を行います。

 コリアNGOセンターという、大阪に拠点を置く素晴らしい活動実績を持つ団体の招待によるもので今から緊張しているのですが、この時にかなりまとまった形で、その間の成果を発表できると思います。

 会場(オフライン)とオンラインの双方でお聞きになれますので、ぜひ登録をご検討ください。会場で直接、読者の皆さんにご挨拶できることを願っております。

 今は日曜日の午後2時です。私はこれから呂運亨の生家を改造した呂運亨記念館に取材に向かいます。皆さまも良い週末の午後をお過ごしください。ありがとうございます。(徐台教)

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