ニュースレター号

[28号&ご挨拶] 朝鮮半島情勢ニュースと、リニューアルのお知らせ

(12月31日)サポートメンバーと無料登録会員の皆さん、アンニョンハセヨ。

 ニュースレター第28号をお届けいたします。大晦日の朝ですが、今号は記事と共に、来年からのリニューアル内容が含まれていますのでぜひ最後までお読みください。

 今号の目次は以下の通りです。

  • 韓国から見た南北関係(1):尹大統領が最前線を訪問し「断固とした反撃」を命令

  • 韓国から見た南北関係(2):韓国国防部長官「四つの」現状認識

  • 朝鮮半島情勢(1):北朝鮮で全員会議はじまる

  • 朝鮮半島情勢(2):金正恩氏の「戦争準備の完成」言及に、米国は「いかなる敵対的な意図もない」

  • リニューアルのお知らせ:「本編」と「記事」、そして「YouTube」

  • 年末年始のご挨拶

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◎韓国から見た南北関係(1):尹大統領が最前線を訪問し「断固とした反撃」を命令

 尹錫悦大統領は28日、中部戦線の陸軍第5歩兵師団を訪問しました。大統領室によると、軍事対備態勢の点検ならびに将兵の激励が目的でした。

 尹大統領は師団長からの報告をはじめ、兵士達との昼食、さらに兵士家族との懇談会を行いました。

 また、北朝鮮を臨む最前線の「ヨルセ(カギ)展望台」を訪問しました。

 京畿道(キョンギド)漣川(ヨンチョン)郡に位置するこの展望台は普段、一般市民にも公開されている場所で、私も行ったことがあります。なかなかのパノラマが観られます。

28日、最前線を訪問した尹錫悦大統領。大統領室提供。


28日、最前線を訪問した尹錫悦大統領。大統領室提供。

 わざわざこんな動静を記事にした理由は、尹大統領の発言を引用するためです。

 尹大統領はこの日、兵士たちに対し「わが国民が期待するのは強くて信頼できる軍であり、万一、敵が挑発してくる場合には『先措置、後報告』の原則の下に、即刻的に断固として対応すること」を指示しました。

 これは保守政権下でとみに強調される原則で、具体的には局地戦が起こる場合、戦闘の拡大を防ぐよりも、すぐに数倍の応酬をせよという内容になります。

 一分一秒を争う際にいちいち上官に伺いを立てるな、という理由は分からなくないですが、聞く度に寒気がする内容であるのも事実です。

 大統領が年末に最前線を訪れ、わざわざこんな内容を話す状況が2023年一年を通じ形成された朝鮮半島の「危うい」現住所と言えるでしょう。

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◎韓国から見た南北関係(2):韓国国防部長官「四つの」現状認識

 韓国国防部の申源湜(シン・ウォンシク)長官は28日、現在の南北間にあるいくつかの問題について、担当記者団と会合を持ち説明しました。なかなか記者との接触が多い長官という印象です。

 この日、特記すべき内容は四つありました。

 一つ目は26号でもお伝えした、北朝鮮が寧辺核施設内で軽水炉を試験運転しているという話です。

 これについて申長官は「規模は25~30キロメガワット。過去に新浦(シンポ)に国際社会が提供した韓国型の1000メガワット軽水炉を逆設計して2010年から建設を開始していた。テスト稼働は昨年夏から始まり、来年夏から正常稼働する見通し」という旨を述べています。

 その目的についてですが、核兵器製造用という見方に対しては疑問を呈しました。「軽水炉からプルトニウムを生産し核兵器を作った国はこれまでにない」という理由からです。

 それよりも北朝鮮による「発電用」という説明に「一理ある」としました。25~30メガワットというのが、寧辺核施設で使う電力量に似ているとその根拠も述べています。

 さらに「軽水炉を軍事用に活用する場合、原子力潜水艦に載せる小型原子炉を作る試験もできる」など、その可能性を挙げました。

申源湜長官。強気の発言で知られています。韓国国防部提供。


申源湜長官。強気の発言で知られています。韓国国防部提供。

 二つ目に米韓関係の総評です。

 今年起きた米韓関係上の大きな変化は、4月に米韓首脳により発表された『ワシントン宣言』により発足した「NCG(核協議グループ)」の存在が挙げられます。

 同宣言の中で「拡大抑止を強化し、核および戦略企画を討議し、非拡散体制に対する北朝鮮の脅威を管理するため」と位置づけられているもので、米韓は2度の協議を行いました。

 特に12月のNCGでは「これまでは北韓が核攻撃をする場合、米国が勝手に核の報復をしてくれるものだったが、これからは米韓がはじめから一緒に考え練習し、実行するものに変わる」と金泰孝(キム・テヒョ)国家安保室第一次長が表現したように、進展があったようです。

 さらに来年8月の米韓連合訓練では「核の作戦シナリオ」を導入する計画で、「核危機の際に米韓両国の首脳が迅速かつ安全に通話するための核専用携帯装備」が既に両国首脳に渡されているのことでした。

 こんな一連の動きについて申源湜長官は「これまで行われていた拡大抑止において、質的に高度化し、量を広げた」と表現しました。

 三つ目に、北朝鮮によるロシアへの軍需物資供給についてです。

 これまで国家情報院などの情報から「コンテナ2000個」程度とされていた分量が「5000個」程度に増えたことが分かりました。

 軍需物資の量で推算する場合、120ミリ放射砲で40万発以上、152ミリ曲射砲では200万発を上回る量とのことです。

 最後に、中国への「対応」についてです。

 申長官は今年、中国の軍用機が韓国の航空識別区域(KADIZ)に133回進入してきたと明かしました。その上で、韓国側もこれに対応する形で「進入してきた距離と同じだけ」中国側の航空識別区域(CADIZ)に軍用機を進入させているとしました。

 中国は無断で進入するが、韓国は事故や偶発的な衝突を防ぐための国際規範に従い、通報後に進入しているそうです。

 なお、航空識別区域は領空とは異なります。申源湜長官は「中国とロシアだけが(規範を)破っている」と強調しました。

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◎朝鮮半島情勢(1):北朝鮮で全員会議はじまる

 26日から北朝鮮の首都・平壌で、朝鮮労働党中央委員会第8期第9次全員会議拡大会議(日本では「拡大総会」とも)が始まりました。

 会議は新年の「果敢で積極的な発展戦略を確定する」ためのもので、朝鮮労働党中央委員会政治局委員、同候補医院をはじめ幹部が勢揃いしています。

 朝鮮中央通信によると、26日には金正恩氏が「党および国家政策執行の状況」について報告しました。

 この中で金正恩氏は2023年を「国領堤高(上昇)や国威宣揚において共和国の栄光ある発展行路に大きな足跡を刻んだ名実ともに偉大な転換の年、偉大な変革の年」と規定したとのことです。

 27日の会議では金正恩氏が「2024年度の闘争方向に対する綱領的な結論」を述べました。「綱領的」ということで、具体的な内容よりもまず、経済全般、農業、生活、文化などの分野における大きな改善方向を掲げています。

 安全保障や外交に対する言及もありました。特に「戦争準備の完成」という言葉が注目されています。

「史上に前例を探すことのできない米国と追従勢力たちの反共和国対決策動により、極限に至った朝鮮半島の厳重な政治軍事情勢に対する深度ある分析に基づき、人民軍隊と軍需工業部門、核武器部門、民防衛部分が戦争準備の完成に、より拍車をかけることに対する戦闘的な課業が提示された」という具合です。

 具体的にはどんな内容なのか、ここでは明らかになっていません。

 さらに「反帝自主的な国たちとの戦略的協助関係を拡大発展する」という言及もありました。これは「新冷戦構造を利用する」という金正恩氏の戦略にしたがうもので、ロシアやイランなどとの協力を深めることを意味しているのもと見られます。

全員会議の様子。『労働新聞』より引用。


全員会議の様子。『労働新聞』より引用。

 一連の内容は会議の参加者たちにより「全幅的な支持と賛同を受けた」とのことです。

 28日の会議ではふたたび金正恩氏による報告がありました。学生達への制服や靴といった生活必需品の供給が強調されていました。

 会議は29日にも続きました。30日付けの『労働新聞』によるとこの日は金正恩氏の動静に関する言及はなく「2024年の闘争目標を確定させる事業が進んでいる」とのことです。

 年末に全員会議を開催する慣例は2019年から続いています。

 最終日の一月一日に金正恩氏が「結論」を報告し、この内容が過去に発表されていた新年辞に置き換えられる形です。

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朝鮮半島情勢(2):金正恩氏の「戦争準備の完成」言及に、米国は「いかなる敵対的な意図もない」

 前述したように全員会議で金正恩氏によって、「戦争準備の完成に、より拍車をかけることに対する戦闘的な課業が提示された」という内容が北朝鮮メディアから発せられるや、すぐに韓国の『聯合ニュース』が米当局に見解を求めました。

 同紙の29日付けの記事によると、米国務省の報道官は「米国は北朝鮮に対しいかなる敵対的な意図も持っていない」とし、「米国は北朝鮮と前提となる条件のない対話を追求している点を明らかにしてきた」と返答したとのことです。

 同紙はさらに「北朝鮮が前例のない数の弾道ミサイルを発射する中でも(米国は)外交に対する約束を維持する」とし、「米国はミサイルおよび大量殺傷兵器(WMD)と関連する議論の実態に関係なく、人道的な問題において協力を追求するという点も明らかにするもの」という米国務省の立場を伝えています。

 米国務省は続いて「米国は韓国および日本を含む、同盟そしてパートナー国家と北朝鮮に最善のかたちで関与する方法を含め、攻撃行為の抑止、北朝鮮の多数の国連安保理決議の違反に対する共同対応方案を緊密に議論している」と答えたとのことです。

 こうなるともう判断はつかなくなってしまいますが、米朝関係についてどう解釈すればよいのかは本当に難しいところです。

 ただ、これまでニュースレターでも述べてきたように、北朝鮮の核能力を一気に、短期間にゼロにすることは不可能であるため、粘り強い交渉をもって、朝鮮半島の平和と非核化を進める他にありません。

 これに日米韓の世論が耐えうる環境を用意できない限り、対話は難しいでしょう。

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◎2024年のリニューアル方針

 今年9月から始めたニュースレターを、無事に年内まで続けることができました。この3か月あまり、仕事量が増えたため生活のペースが乱れて大変でした。一方、その傍らで「このままでよいのか、今後どうすべきか」を考え続けてきました。

 その上で決めた来年からの変更点は以下のようになります。

(1)毎週金曜日に「本編」を配信

 従来のニュース形式ではない、ジャーナル形式へと変更します。

 韓国内で出会った人物、カルチャー、読書・映画日記、取材記、コラムなど「徐台教の活動、徐台教の視点」を前面に出していく形です。

 実はここ最近、「教養の不足」を痛感する日々が続いていました。

 原因は過去5年くらいの間、本を書くために南北関係に関する韓国語の本「だけを」読んできたためです。

 教養を高める本を意識して読んでこなかったなと、年末に本棚を整理しながらしみじみと思いました。この点を改善していく過程もまた共有していければと思います。

 さらに12月に徐京植先生が亡くなったことも大きな影響がありました。

 私は皆さんご存知のように、在日コリアン3世なのですが、今や人生の半分を韓国で過ごしています。さらに2015年には「永住帰国」を行い特別永住権を自ら無くしました。そして普段、南北関係を最大のテーマとして記者活動を続けています。

 そんな中で私は自らの「在日」という属性について意識的に、または無意識的に蓋をしてきたのですが、徐京植先生が亡くなったことをきっかけに、もう一度この部分に向き合ってみようと思い直しています。

 「在日」の記者が韓国に住み、北朝鮮を含む南北関係を取材するというのは90年代以前には考えられなかったことです。

 それを続けてきた者として、さらに「在日」が向き合うことが難しい南北朝鮮の問題に取り組んできた者として、より大きく深い役割を果たしていこうと考えています。

 具体的には、日本と朝鮮半島の南北をつなぐ試みです。「つなぐ」ことの中には友好親善という意味だけを示すのではなく、耳が痛いこと、目を背けたいことに言及していくことも含みます。

 また、議論の最前線にも飛び込んでいきます。

 日本は朝鮮半島とどう向き合えばよいのか、朝鮮半島の南北は互いにどう向き合うのか、そして日本ともどういう関係を築いていくのか。国家間の関係に埋没せずに、市民の関係というところまで深めていきます。私が韓国社会に発信した内容やそのフィードバックなども共有していきます。

 どこまでできるか分かりません。しかしこのニュースレターこそが、様々なチャレンジや新たな視点、知見を共有する場にふさわしいと今は思っています。私自身がたくさんの人と会って、読んで、見て、考える、そんな話を「本編」ではしていきます。

 「本編」はすべてサポートメンバーの方への有料配信となります(サンプルとして定期的に無料公開することがあります)。

(2)ニュースは「随時」配信

 その間、ニュースレターを通じ少なくない南北関係や朝鮮半島情勢、韓国社会や政治ニュースをお伝えしてきましたが、今後こうしたニュースは単発で発信します。

 例えば、尹大統領が何か言った、南北関係で何かが起きた、韓国社会の少子化問題で何か変化があったなど、動きがある度に記事にしていきます。記事の中には好評だった「ドキュメンタリーを観る」も含まれます。

 記事の数は月に15~20本程度を考えています。記事は新規読者を増やすことも考え、有料配信6,無料配信4という割合でやっていきます。

 過去6年間、ヤフーエキスパートニュースを通じ、無料で記事を配信してきました。

 しかしヤフーは朝鮮半島に関し配信される記事があまりにも多いため、タイトルや内容をセンセーショナルにしないと読まれません。ページビューは頭打ちです。一つの記事を書いて収入が数百円ということもあります。

 日本最大のプラットフォームとしてのヤフーを活用しつつも、今後は徐々にニュースレターにシフトしていきたいと考えています。それが長期的な記者活動にとっては間違いなくプラスになります。

(3)YouTube活動の再開

 ニュースレターを開始する際に、YouTubeも念頭に置いていましたが、余力がなくそのままになっていました。これを「月一回」のペースで再開していこうと思います。

 内容は「おしゃべり」です(笑)。日常の雑談から、普段読者の皆さんが疑問に思っていることなども含め、双方向のコミュニケーションが生まれる場にしていきます。

 余裕ができればゲストも呼んでお話しできればいいなと考えています。

 ニュースレターについてお伝えする内容は以上です。

◎年末年始のご挨拶

 もう大晦日の朝となりました。

 今年は夏に一度5年越しで書いてきた書籍の原稿を書き上げたのですが、私自身、問題意識が何かという点をうまく表現できなかったと不満があり、その後は寝かしてままでした。しかし最近になってこの点がクリアになりましたので、執筆を再開しています。来年こそはその姿をお見せいたします。

 そして何よりも今年の成果は、ニュースレターを始めたことでした。定期的に記事を書き、読者の皆さんと交流する中で「何のための記者活動なのか」というのをもう一度考え直すことができました。

 「真実をお伝えした上で、社会をより良い方向に変えていくこと」。ニュースレターのおかげで、これを来年以降も続けていけるという確信を改めて持つことができました。

 ウクライナ戦争、パレスチナ戦争と人間性の動揺をもたらすような出来事が毎日続く中、皆さんも気の晴れない日々をお過ごしかもしれません。そうした事態への解決にも貢献し、生きる希望を持てるようなニュースレターに育てていきます。

 今年一年、本当にありがとうございました。

 皆さんの年末年始、そして2024年が暖かいものでありますように。

 徐台教

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