(12月14日)無料登録の皆さま、アンニョンハセヨ。
ニュースレター第23号をお届けいたします。発行が大幅に遅れてしまいました。お詫びいたします。
韓国では総選挙まで120日を切り、選挙ムードに全てが飲み込まれそうです。ですが実際には今な多くの社会問題が起きています。その一端を共有し、何かの役に立てていただければと思います。
今号の目次は以下の通りです。
-
韓国社会(1):今年の四字熟語は「見利忘義」、5位までを解説
-
韓国社会(2):発電所での死亡事故から5年、最高裁での無罪判決と母の「決意」
-
韓国政治(1):総選挙まで4か月、活発化する政局
-
韓国政治(2):薄れゆく尹大統領への政治的な期待感
-
ショートニュース:(1)YouTubeプレミアムが1.5倍に値上げで「税金払え」の声、(2)定員増を前に医師協会が反発、総ストライキの構えも、(3)韓国軍「初級幹部の月給を中堅企業の水準に」、(4)大ヒット映画『ソウルの春』は左翼映画?、 (5)「開店休業」国家人権委員会に集まる批判、(6)韓国の大学で短期留学生20数人を騙して「強制送還」
-
あとがきに代えて:韓国社会の伝え方
◎韓国社会(1):今年の四字熟語は「見利忘義」、5位までを解説
日本に「今年の流行語」や「今年の漢字一文字」があるように、韓国には「今年の四字熟語」があります。『教授新聞』が選ぶもので、2001年から続く年末の恒例行事となっています。
「見利忘義」の揮毫。『教授新聞』より引用。
今年の1位は「見利忘義」。1315票中396票を集めました。はじめて聞く言葉ですが「利を見るに義を思う」という『論語』の「憲問篇」にある「見利思義」に由来するそうです。意味は「利を見るに義を忘れる」という、なんとも情けないものです。
『教授新聞』では「国全体がみずからの利益だけを追いかける『修羅場』のような一年だった」と振り返っています。
また、この結果を紹介する韓国メディアの記事では「見利忘義」を選んだ理由が教授たちの口からいくつか語られています。
例を挙げると「高位の公職者が個人投資の利益のために職務を忘却している」、「韓国の政治家は正しく導くよりも自身が属した側の利益をより考える」といった具合です。政治のあり方を強く批判する四字熟語と言ってよいでしょう。
ちなみに昨年の四字熟語は「過而不改」でした。
「過ちを犯しても直さない」という意味で、やはり社会の指導層を批判する脈絡で選ばれていました。なんら進歩のない一年だった、とするのは言い過ぎでしょうか。
2位には335票を集めた『賊反荷杖』が選ばれました。これは過去に文在寅政権と安倍政権の間で日韓関係がこじれた際に、文大統領が日本政府を批判する脈絡で使い、一部日本メディアが「盗っ人猛々しい」と訳したことで波紋を呼びました。
実際の韓国語でのニュアンスは「居直り」といった程度のものです。尹錫悦大統領が何か問題がある場合すぐに前政権のせいにしたり、梨泰院での雑踏事故などの大惨事があった際にも自分で責任を取らない様子を想起し選ばれたとしています。
3位は「濫竽充数」、やはりはじめて見る四字熟語でしたが、能力よりも人脈やおべんちゃらで地位を得ている様を表すそうです。「政府が無能で、権力欲がある者たちで内閣を構成した結果、業績はなく強欲の結果が果てしなく広がっている」とまたまた手厳しいものでした。
4位は「塗炭之苦」で庶民の苦しい現状を表し、5位は「諸説紛々」とあれこれ構わず引用して報道する、節操のない言論メディアの弊害を批判するものでした。強く共感します。
◎韓国社会(2):発電所での死亡事故から5年、最高裁での無罪判決と母の「決意」
韓国社会には少子化をはじめ様々な問題がありますが、真の問題とは「問題であると認識されているものの、一向に改善される気配のない問題」ではないでしょうか。韓国で多発する労働災害死亡事故がこれに当たります。
韓国の産業災害死亡率はOECD(経済協力開発機構)諸国のうち、トルコやメキシコと並び世界最悪の水準です。具体的には22年の年間を通じ、事故で874人、疾病で1349人、合計2233人が亡くなっています。17年1952人、18年2142人と比べ減るどころか増え続けています。
背景には「危険の外注化」があります。大企業や公共企業が事故の危険が高い建設や工場施設管理といった仕事を下請けに丸投げするということです。労働者はそこで安全規則が守られないまま仕事に臨み、事故に遭うのです。
事故の責任を誰が負うのか。この議論に火を付けたのが18年12月11日に忠清南道(チュンチョンナムド)泰安(テアン)郡にあるテアン火力発電所で起きたキム・ヨンギュンさんの死亡事故でした。石炭運送用のベルトコンベアに挟まれ命を落とした24歳のキムさんの遺体は、見回り作業の途中の出来事で発見されるまでの約4時間のあいだ放置されたままでした。
2018年12月に亡くなったキム・ヨンギュンさん。「文在寅大統領、非正規雇用労働者と会って下さい」と書かれたプラカードを持っている。亡くなる2週間程前に撮影されたもの。公共運輸労組提供。
この発電所は韓国西部発電という公共機関が管理する国の施設であるにもかかわらず、守られるべき安全規則が無視されていました。キムさんは本来ならば二人一組でやるべき作業を一人で任され、夜6時から翌朝7時半まで休憩時間もありませんでした。事故が起きたのは午前3時20分過ぎでした。
本来ならば同僚が緊急停止スイッチを作動させ防げたはずのキムさんの死。その後明らかになったところによると、テアン火力発電所では2010年から8年間、12人の労働者が墜落など様々な事故で亡くなっていました。
労働者を人とも思わない凄惨な事故を前に、キムさんの母キム・ミスクさんが立ち上がりました。二度と息子のような事故が起きないようにと、労働災害における下請けと共に事業主企業の罰金や懲罰的損害賠償、そして刑事責任を問う『重大災害(企業)処罰法』の成立に尽力しました。
企業票を失うことを恐れた巨大両党の消極的な態度に対し、20年には国会前で29日間のハンストを敢行し命がけで訴えるなどし、ようやく22年1月に法律が施行されました。
しかし産業界は「連座制であり、過酷な懲罰である」(経済団体)とこれに強く反発していました。この結果、同法の適用対象から多数の死者を出している50人以下の企業が除外されることになりました。なお、22年に50人以下の企業で死者の80%が発生しています。
そして7日、韓国の大法院(最高裁)でキム・ヨンギュンさんの死亡事故に対し、事業主の韓国西部発電ならびに事故当時の同社代表に無罪判決が確定しました。『重大災害処罰法』を遡及して適用することができないというものでした。
裁判では13人が訴えられていましたが、下請け会社の社長と現場の所長にはいずれも執行猶予付きの判決が下りました。
進歩紙『ハンギョレ』によると判決後に「なぜ法廷が弱者を助けてくれないのか」と一度は崩れ落ちたキム・ミスクさんでしたが、周囲の助けを借りて立ち上がる際に「このまま負けてなるものか、ここで負けても別のところで勝つだろう」とつぶやいたそうです。同じ子を持つ親として、涙なしにはニュースを見ることができませんでした。
キム・ミスク氏は「どれほど大切に育ててきたのか分からない息子が、安全教育も受けられないまま就職してわずか3か月で死んでしまった。政治家も立場を変えて考えてみればよい」と語った。20年12月13日、ハンスト中に筆者撮影。
同紙によるとキム・ミスクさんはさらに「今は大法院の不当な判決により負けたように見えるかもしれないが、これからの歴史は(韓国西部発電の)キム社長に問題があると判断すると信じる。国民の皆さんにも申し訳ありません。力がないというのは、こんなにも悲惨なことなのです。これからは別の道で人を救えるように努力します」と述べました。
一方、『重大災害処罰法』の対象を50人以下の企業に拡大する時限が24年1月27日に迫る中、大統領室は猶予期間をさらに2年延長し、その間に政府の支援の下で安全対策を整備するという姿勢を明かしています。
これからもたくさんの労働者が現場で亡くなり続けることは火を見るより明らかです。ここに韓国政治の怠慢、そして韓国政治の主流がリベラルではないことが如実に表れています。金に狂った社会と言えます。
10日、キム・ヨンギュンさんの墓前で5周忌を追悼する小さな集会が開かれました。
『MBC』によると母キム・ミスクさんはこの場で「お前を守れなかった親として、良い結果を持って謝りたかったが、本当に申し訳ない。私たちのように誰かがやられないよう、死を防ぐ仕事を必ずやり遂げる」と語ったとのことです。
◎韓国政治(1):総選挙まで4か月、活発化する政局
来年4月10日投開票の総選挙を120日後に控えた12日、予備候補の登録が始まりました。これは小選挙区に立候補する人物が選挙監理委員会に申告するもので、登録後には選挙事務所の設立、たすき(本人と配偶者)の制作、名刺の配布が可能になります。なお、登録費用は300万ウォンです。
無料登録会員の皆さんはここまでお読みいただけます。この後の記事をご覧になるには有料会員登録が必要となります。クレジットカード番号だけで登録できますので、お願いいたします。それではまた次号でお会いいたします。(徐台教)