ニュースレター号

国家情報院の北朝鮮情報、ロシアと北朝鮮それぞれの「代価」、北朝鮮がスペイン公館を閉鎖など全9トピック|第12号

(11月3日)無料登録会員の皆さん、アンニョンハセヨ。

 ニュースレター第12号をお届けいたします。今年もあっという間に11月になりましたね。韓国はまだ暖かい日が続いていますが、来週からはグッと寒くなるようです。 今号は南北関係・朝鮮半島情勢を中心にお届けします。現在の南北関係は静かです。北朝鮮の関心はロシアに向いており、韓国も来年4月の総選挙モードに徐々に流れていく中で、互いの関心が遠ざかっている感があります。

 この不気味な静けさを「落ち着き」から「対話」へと変えていく努力は、南北どちらが先にしていくべきなのでしょうか?

 今号の目次は以下の通りです。有料会員になるとすべてご覧いただけます。

  • 韓国から見た南北関係(1):国家情報院がとっておきの北朝鮮情報を開陳

  • 韓国から見た南北関係(2):統一部が北朝鮮に連絡チャンネルの復旧を呼びかけ

  • 朝鮮半島情勢(1):北朝鮮が在外公館の一部を閉鎖…「効率化」と主張

  • 朝鮮半島情勢(2):韓国による初の軍事偵察衛星発射が11月30日に決定

  • ショートニュース:北朝鮮に勝訴した91歳「国軍捕虜」亡くなる/韓国政府が北朝鮮に抑留中の韓国人の家族を「拉致被害者家族」に認定/北朝鮮と中国の定期旅客便が復活か/韓国国防部長官「『9.19軍事合意書』の効力停止に米も共感」

  • あとがきに代えて:二つのコリア

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◎韓国から見た南北関係(1):国家情報院のとっておき北朝鮮情報

 11月1日に、北朝鮮に関するニュースが連続で韓国メディアのヘッドラインを飾りました。この日に韓国の情報機関・国家情報院の国政監査があったためで、その過程で同院が明かした最新の北朝鮮情報が伝わったためです。

 主な分野は二つありました。ロシアと北朝鮮の軍事協力の実態、そしてイスラエル・ハマス戦争における北朝鮮の関与・関心の程度についてです。ひとつずつ見ていきましょう。

 なお、国家情報院の国政監査は冒頭部分を除いて非公開となっており、いずれの内容も国会・情報委員会の幹事である与党・国民の力と最大野党・共に民主党の二人の議員により公開されたものです。

 カッコの中身は国家情報院の言葉ではなく、この二人の議員の言葉であることに留意ください。

 本項の内容はこの二人の議員の発表内容を元に、聯合ニュースなど韓国各紙の内容で肉付けしたものです。

・ロシアとの軍事協力

 まずロシアとの軍事協力についてです。

 同院は「北朝鮮がロシアのウクライナ戦争を支援するため、8月初旬からロシアの船舶、輸送機を活用し、砲弾など各種武器を10余回にわたって輸送したと把握される」と明かしました。

 ルートはニュースレター第8号でも紹介したように、北朝鮮の羅津(ラジン)港から船でロシアのドゥナイ港などへと運ばれ、そこから列車をロシア国内を横断し、ウクライナとの前線に近いティホレツク市の弾薬庫に保管されるというものです。

10月13日、米政府が公開した北朝鮮とロシアの武器取引の様子。米政府より引用。


10月13日、米政府が公開した北朝鮮とロシアの武器取引の様子。米政府より引用。

 同院は北朝鮮がロシアに搬出した軍需物資の量について「砲弾100万発以上」としています。「ロシアがウクライナとの戦争で二か月以上使える量」ということです。

 なお、この砲弾については、11月1日に韓国内で行われたシンポジウムで、米国専門家が「152ミリ弾であり、ロシア内の生産単価(一発約600ドル)の50~100%の価値で供給している。100万発だと3億~6億ドル(約450億円~900億円)にのぼる」と発表しています(聯合ニュース)。

 国家情報院はまた、北朝鮮国内の動きとして「10月中旬頃、北韓が兵器の運用法を伝授するために、放射砲の専門家を主体とした代表団をロシアに派遣した情況を入手した」としました。

 さらに「北韓がロシアの軍需物資の需要に合わせるため、軍需工場をフルに運用しているし、輸出用の弾薬箱を制作するため民需工場と住民も動員されている」と明かしました。「納期に合わせろ!」という声が聞こえてきそうですね。

 ロシアから戦闘機や旅客機などの航空機を調達する計画もあるとのことで、ロシアで関連トレーニングを受けるための人員も選抜しているとしました。

 ロシアによる北朝鮮への代価の内容については「原子力潜水艦の建造など核心的な戦略技術の伝授よりも、在来武器の現代化、大規模な労働者の受け入れなどになる可能性も十分にある」としました。

 一方、ロシアと北朝鮮の「密着」について、「ウクライナ戦争という特殊な環境の中で生まれた連帯である点で、安定性と拡張性に限界があると見る」とも見立てています。

・イスラエル・ハマス戦争を受けて

 今なおイスラエルによる一方的なガザ地区への攻撃が続く、イスラエル・ハマス戦争においては「北朝鮮が戦争を多角的に活用しようと企図中であると評価できる」とし、「金正恩が最近、パレスチナを包括的に支援する方案を探すように指示した情況を掴んだ」と国家情報院は明かしました。より具体的な内容はありませんでした。

 続いては国家情報院の見立ても語られました。

「過去、北朝鮮がハマス、ヒズボラに対戦車武器や放射砲弾などを輸出した前例があるだけに、この地域の武装組織と第三世界の国家に武器販売を試みる可能性がある」というものです。

 さらに「金正恩がハマスによる奇襲攻撃を確認し、長射程砲の有用性と先制奇襲攻撃の重要性を再確認し、軍事冒険主義に執着する性向が増大する可能性がある」という指摘も続きました。

 この辺は、ハマスと北朝鮮を並べて考えがちな韓国保守派、保守政権の受け止めに沿った認識と言えそうです。

・北朝鮮の軍事衛星発射におけるロシアの役割

 他にこの日、国家情報院が明らかにした内容には北朝鮮が「三度目の正直」とばかりに予告している、軍事衛星発射に関する内容もありました。

 「10月と公言していた発射日が延期される中で、最近になってエンジンと発射装置の点検など、準備の仕上げの真っ最中と把握している」としました。

 各所から指摘されていた今回の衛星打ち上げにおけるロシアからの技術協力についても「特にロシアから技術的な諮問を受けていると見られ、成功する確率が高まっている可能性を予測する」と、これを認める発言がありました。

 なお2日、韓国国防部は記者団へのブリーフィングの中で「北韓が最近、エンジンと発射装置の点検を盛んに行っている」と明かしています。

 発射場である平安北道東倉里(トンチャンリ)についても「発射場の準備は完了している」と明言しました。

 一方、韓国国防部の申源湜(シン・ウォンシク)長官は3日、『『打ち上げは11月末程度になる可能性」と述べています。

今年6月、韓国軍が回収した北朝鮮の「宇宙発射体」の一部。北朝鮮は5月31日に一度目の発射に失敗した。国防部提供。


今年6月、韓国軍が回収した北朝鮮の「宇宙発射体」の一部。北朝鮮は5月31日に一度目の発射に失敗した。国防部提供。

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・その他の軍事開発

 他に北朝鮮の軍事開発に関しては「技術と資金は依然として足りない状態であり、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の大気圏再進入、多弾頭技術を確保できていないと見える」と分析しました。米国を震え上がらせるための核心技術を確保できていないという判断です。

 さらにSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を搭載する原子力潜水艦の開発も現段階では果てしないのが実情と把握している」と明かしています。

・ハッキングなど

 韓国では「サイバー安全保障」という言葉を使うのですが、この分野については「韓国を狙ったハッキング攻撃の背後に中国と北韓が占める割合が80%であり、中国と北韓をハッキング攻撃における最大の脅威と評価している」としました。

 韓国に対するサイバー攻撃の数は、昨年の一日平均118万件から、今年は156万件と32%以上増え、ITと金融など民間分野の被害が急増しているそうです。

 ハッキングの対象は「最先端武器の製造企業や造船業」などで、韓国内のポータルサイト上の商取引を模した活動も行っているとのことです。ニセのアプリを作っているそうです。

 北朝鮮が昨年から今年まで世界を対象にハッキングした金額については「9億2000万ドル(約1380億円)」に上るとしています。

 北朝鮮がハッキングした仮想通貨345万ドルを今年2月と6月に米FBI(連邦捜査局)との協力の下で初めて凍結したとも明かしています。

・北朝鮮国内の動き

 北朝鮮内部での北朝鮮当局の動きについては「核・ミサイルの高度化やロシアに対する軍需物資支援の財源を確保するため、密輸と住民からの収奪を一層強めている」とし、中でも「金塊の密搬出が昨年の500余キロから今年は1800余キロに急増した」としています。

 この金の価格は1億1000万ドル(約165億円)にのぼるそうです。

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・ロシアと北朝鮮の協力はどこまで

しかし読者の皆さんはここまでお読みになって、ある疑問を持ちませんか?

 「北朝鮮はロシアに対し、代金と引き換えに砲弾を輸出しているのか、それとも技術や兵器、物資を含む広義の物々交換を行っているのか」という疑問です。

 前出のように韓国国防部は2日、韓国メディアの記者団を相手に非公開の会見を行いました。

 この席で北朝鮮がロシアに支援すると推定される武器について、▲両国間で互換可能な122ミリ放射砲弾と152ミリ砲弾、T系列の戦車砲弾、▲放射砲と野砲、小銃および機関銃、迫撃砲、▲携帯用対空ミサイルおよび対戦車ミサイル、▲短距離弾道ミサイル、などと見立てました。

 さらに北朝鮮からロシアへと渡った物資の物量については、8月から現在まで「長さ6メートル、幅2.5メートルの小型コンテナ2000個余り」としています。

 韓国軍当局は一方で、ロシア側から受け取る対価として、▲衛星技術の支援、▲核に関する技術移転および協力、▲戦闘機または関連備品の支援、▲鹵獲した西側武器および装備、などがあるとしました。

 この当局者はまた「政権の安定を図り、今年の冬を(安定的に)過ごすため、食糧と油類などの支援を優先的に受け、今後、軍事技術の移転など在来式の戦略の現代化支援、合同訓練などを追加で議論していくものと思われる」と述べています。

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・専門家に聞く

 つまり、まずは物資からということになりますが、どうなのでしょうか。

 これについて私は3日、ロシアと北朝鮮事情に詳しい統一研究院の趙漢凡(チョ・ハンボム)専任研究委員に電話インタビューを行い聞きました。

 趙研究委員はまず「代価」について「現金よりも物々交換方式の可能性が高い」とし、優先順位としては「食糧、エネルギー、そして最後に軍事協力となるが、大部分は経済協力ではないか」としています。

 理由については、北朝鮮が希望しているとされるSu-35などの戦闘機は高価である点や、ロシアがこれまで中国など他国に対しても核心的な技術提供を行ったことがない点などを挙げました。

 趙研究委員はこうした点を踏まえ「北朝鮮に対しても、ロシア側はあくまで『技術的な諮問を行った』としている。目に見えない形で行っているということ」と指摘します。

 それよりもやはり、北朝鮮にとって重要でさらにロシア側としても分量が豊富な「食糧、肥料、エネルギー、鉱物」が優先順位ではないかと見ています。

 「砲弾の代価としてはこの程度が妥当」ということです。北朝鮮の砲弾生産能力についても「十分に自国で生産ができている」としました。

 一方で、ロシアと北朝鮮の協力がどこまで続くのかという点については「ロシアにとって北朝鮮の魅力や戦略的な価値はそう高くない。例えば、北朝鮮と韓国や日本、どちらが重要かと言えば当然後者になる」としながらも、「ウクライナ戦争の中でロシアとしても軍需補給基地が必要だ。戦争が長期化する他にないため、ロシアと北朝鮮の関係も短期的なものとはならない」と見立てました。

 その上でプーチン大統領の訪朝についても「可能性が高い」としました。

9月13日、ロシアのボストチヌイ宇宙基地で首脳会談を行う金正恩委員長とプーチン大統領。4年5か月ぶりの会談となった。写真は朝鮮中央通信より引用。


9月13日、ロシアのボストチヌイ宇宙基地で首脳会談を行う金正恩委員長とプーチン大統領。4年5か月ぶりの会談となった。写真は朝鮮中央通信より引用。

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・「国家情報院の一人勝ち」をどう見るか

 なお、今さらですが、国家情報院が明かす内容がすべて真実とは限らないということを知る必要があるでしょう。

 その多くは、韓国の大手メディアですら直接チェックできない内容です。

 韓国では2010年以降、南北関係が断絶しているため(文在寅政権の時代も南北対話だけが存在し、実質的な南北交流はありませんでした)、北朝鮮内部の一次情報は、同地に情報源を持つ一部のメディアを除いては存在しません。

 特に、新聞やテレビなどの韓国のマスメディアは北朝鮮の一次情報の確保に人材や資金といったリソースを全くと言ってよいほど割いておらず、当局からの発表に頼る傾向があります。

 このため、北朝鮮内部情報は当局、つまり国家情報院の一人勝ち情況が既に10年以上続いています。

 私は今もよく覚えているのですが、2000年代はこうではありませんでした。

 当時は人道支援や事業で北朝鮮と行き来する人がたくさんいました。それも平壌だけでなく地方都市にまで及んでいました。

 活動を北朝鮮国内で続けるためにいくらかフィルタリングされた情報であったとはいえ、当局の発表を鵜呑みにする傾向は今よりも格段に少なかったのです。

 「当局の発表は間違っている」という声も公然と上がり、当局と民間の間に良い形の緊張関係がありました。しかし今や国家情報院発の情報をチェックする実力は民間にありません。私もそうですが、メディアはこれをあたかも事実のように書くことになります。

 だからこそ、国家情報院はブリーフィングを「情報戦」の一種として存分に活用します。

 中には北朝鮮に対して「ここまで知っているぞ」とカマをかけるような内容も含まれているでしょう。注意が必要です。

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◎韓国から見た南北関係(2):統一部が北朝鮮に連絡チャンネルの復旧を呼びかけ

 2日、統一部の報道官は韓国国内メディアの記者団を対象に、非公開ブリーフィングを開き、その中で『南北連絡チャンネル復旧に対する統一部の声明』を発表しました。

 声明では「23年4月7日に北韓による一方的な通話への無応答以降、南北間の通信・連絡の中断情況が210日の間つづいている点が、とても遺憾である」としています。

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