(11月3日)サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。
ニュースレター第12号をお届けいたします。今年もあっという間に11月になりましたね。韓国はまだ暖かい日が続いていますが、来週からはグッと寒くなるようです。
今号は南北関係・朝鮮半島情勢を中心にお届けします。現在の南北関係は静かです。北朝鮮の関心はロシアに向いており、韓国も来年4月の総選挙モードに徐々に流れていく中で、互いの関心が遠ざかっている感があります。
この不気味な静けさを「落ち着き」から「対話」へと変えていく努力は、南北どちらが先にしていくべきなのでしょうか?
今号の目次は以下の通りです。
-
韓国から見た南北関係(1):国家情報院がとっておきの北朝鮮情報を開陳
-
韓国から見た南北関係(2):統一部が北朝鮮に連絡チャンネルの復旧を呼びかけ
-
朝鮮半島情勢(1):北朝鮮が在外公館の一部を閉鎖…「効率化」と主張
-
朝鮮半島情勢(2):韓国による初の軍事偵察衛星発射が11月30日に決定
-
ショートニュース:北朝鮮に勝訴した91歳「国軍捕虜」亡くなる/韓国政府が北朝鮮に抑留中の韓国人の家族を「拉致被害者家族」に認定/北朝鮮と中国の定期旅客便が復活か/韓国国防部長官「『9.19軍事合意書』の効力停止に米も共感」
-
あとがきに代えて:二つのコリア
◎韓国から見た南北関係(1):国家情報院のとっておき北朝鮮情報
11月1日に、北朝鮮に関するニュースが連続で韓国メディアのヘッドラインを飾りました。この日に韓国の情報機関・国家情報院の国政監査があったためで、その過程で同院が明かした最新の北朝鮮情報が伝わったためです。
主な分野は二つありました。ロシアと北朝鮮の軍事協力の実態、そしてイスラエル・ハマス戦争における北朝鮮の関与・関心の程度についてです。ひとつずつ見ていきましょう。
なお、国家情報院の国政監査は冒頭部分を除いて非公開となっており、いずれの内容も国会・情報委員会の幹事である与党・国民の力と最大野党・共に民主党の二人の議員により公開されたものです。
カッコの中身は国家情報院の言葉ではなく、この二人の議員の言葉であることに留意ください。
本項の内容はこの二人の議員の発表内容を元に、聯合ニュースなど韓国各紙の内容で肉付けしたものです。
・ロシアとの軍事協力
まずロシアとの軍事協力についてです。
同院は「北朝鮮がロシアのウクライナ戦争を支援するため、8月初旬からロシアの船舶、輸送機を活用し、砲弾など各種武器を10余回にわたって輸送したと把握される」と明かしました。
ルートはニュースレター第8号でも紹介したように、北朝鮮の羅津(ラジン)港から船でロシアのドゥナイ港などへと運ばれ、そこから列車をロシア国内を横断し、ウクライナとの前線に近いティホレツク市の弾薬庫に保管されるというものです。
10月13日、米政府が公開した北朝鮮とロシアの武器取引の様子。米政府より引用。
同院は北朝鮮がロシアに搬出した軍需物資の量について「砲弾100万発以上」としています。「ロシアがウクライナとの戦争で二か月以上使える量」ということです。
なお、この砲弾については、11月1日に韓国内で行われたシンポジウムで、米国専門家が「152ミリ弾であり、ロシア内の生産単価(一発約600ドル)の50~100%の価値で供給している。100万発だと3億~6億ドル(約450億円~900億円)にのぼる」と発表しています(聯合ニュース)。
国家情報院はまた、北朝鮮国内の動きとして「10月中旬頃、北韓が兵器の運用法を伝授するために、放射砲の専門家を主体とした代表団をロシアに派遣した情況を入手した」としました。
さらに「北韓がロシアの軍需物資の需要に合わせるため、軍需工場をフルに運用しているし、輸出用の弾薬箱を制作するため民需工場と住民も動員されている」と明かしました。「納期に合わせろ!」という声が聞こえてきそうですね。
ロシアから戦闘機や旅客機などの航空機を調達する計画もあるとのことで、ロシアで関連トレーニングを受けるための人員も選抜しているとしました。
ロシアによる北朝鮮への代価の内容については「原子力潜水艦の建造など核心的な戦略技術の伝授よりも、在来武器の現代化、大規模な労働者の受け入れなどになる可能性も十分にある」としました。
一方、ロシアと北朝鮮の「密着」について、「ウクライナ戦争という特殊な環境の中で生まれた連帯である点で、安定性と拡張性に限界があると見る」とも見立てています。
・イスラエル・ハマス戦争を受けて
今なおイスラエルによる一方的なガザ地区への攻撃が続く、イスラエル・ハマス戦争においては「北朝鮮が戦争を多角的に活用しようと企図中であると評価できる」とし、「金正恩が最近、パレスチナを包括的に支援する方案を探すように指示した情況を掴んだ」と国家情報院は明かしました。より具体的な内容はありませんでした。
続いては国家情報院の見立ても語られました。
「過去、北朝鮮がハマス、ヒズボラに対戦車武器や放射砲弾などを輸出した前例があるだけに、この地域の武装組織と第三世界の国家に武器販売を試みる可能性がある」というものです。
さらに「金正恩がハマスによる奇襲攻撃を確認し、長射程砲の有用性と先制奇襲攻撃の重要性を再確認し、軍事冒険主義に執着する性向が増大する可能性がある」という指摘も続きました。
この辺は、ハマスと北朝鮮を並べて考えがちな韓国保守派、保守政権の受け止めに沿った認識と言えそうです。
・北朝鮮の軍事衛星発射におけるロシアの役割
他にこの日、国家情報院が明らかにした内容には北朝鮮が「三度目の正直」とばかりに予告している、軍事衛星発射に関する内容もありました。
「10月と公言していた発射日が延期される中で、最近になってエンジンと発射装置の点検など、準備の仕上げの真っ最中と把握している」としました。
各所から指摘されていた今回の衛星打ち上げにおけるロシアからの技術協力についても「特にロシアから技術的な諮問を受けていると見られ、成功する確率が高まっている可能性を予測する」と、これを認める発言がありました。
なお2日、韓国国防部は記者団へのブリーフィングの中で「北韓が最近、エンジンと発射装置の点検を盛んに行っている」と明かしています。
発射場である平安北道東倉里(トンチャンリ)についても「発射場の準備は完了している」と明言しました。
一方、韓国国防部の申源湜(シン・ウォンシク)長官は3日、『『打ち上げは11月末程度になる可能性」と述べています。
今年6月、韓国軍が回収した北朝鮮の「宇宙発射体」の一部。北朝鮮は5月31日に一度目の発射に失敗した。国防部提供。
・その他の軍事開発
他に北朝鮮の軍事開発に関しては「技術と資金は依然として足りない状態であり、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の大気圏再進入、多弾頭技術を確保できていないと見える」と分析しました。米国を震え上がらせるための核心技術を確保できていないという判断です。
さらにSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を搭載する原子力潜水艦の開発も現段階では果てしないのが実情と把握している」と明かしています。
・ハッキングなど
韓国では「サイバー安全保障」という言葉を使うのですが、この分野については「韓国を狙ったハッキング攻撃の背後に中国と北韓が占める割合が80%であり、中国と北韓をハッキング攻撃における最大の脅威と評価している」としました。
韓国に対するサイバー攻撃の数は、昨年の一日平均118万件から、今年は156万件と32%以上増え、ITと金融など民間分野の被害が急増しているそうです。
ハッキングの対象は「最先端武器の製造企業や造船業」などで、韓国内のポータルサイト上の商取引を模した活動も行っているとのことです。ニセのアプリを作っているそうです。
北朝鮮が昨年から今年まで世界を対象にハッキングした金額については「9億2000万ドル(約1380億円)」に上るとしています。
北朝鮮がハッキングした仮想通貨345万ドルを今年2月と6月に米FBI(連邦捜査局)との協力の下で初めて凍結したとも明かしています。
・北朝鮮国内の動き
北朝鮮内部での北朝鮮当局の動きについては「核・ミサイルの高度化やロシアに対する軍需物資支援の財源を確保するため、密輸と住民からの収奪を一層強めている」とし、中でも「金塊の密搬出が昨年の500余キロから今年は1800余キロに急増した」としています。
この金の価格は1億1000万ドル(約165億円)にのぼるそうです。
・ロシアと北朝鮮の協力はどこまで
しかし読者の皆さんはここまでお読みになって、ある疑問を持ちませんか?
「北朝鮮はロシアに対し、代金と引き換えに砲弾を輸出しているのか、それとも技術や兵器、物資を含む広義の物々交換を行っているのか」という疑問です。
前出のように韓国国防部は2日、韓国メディアの記者団を相手に非公開の会見を行いました。
この席で北朝鮮がロシアに支援すると推定される武器について、▲両国間で互換可能な122ミリ放射砲弾と152ミリ砲弾、T系列の戦車砲弾、▲放射砲と野砲、小銃および機関銃、迫撃砲、▲携帯用対空ミサイルおよび対戦車ミサイル、▲短距離弾道ミサイル、などと見立てました。
さらに北朝鮮からロシアへと渡った物資の物量については、8月から現在まで「長さ6メートル、幅2.5メートルの小型コンテナ2000個余り」としています。
韓国軍当局は一方で、ロシア側から受け取る対価として、▲衛星技術の支援、▲核に関する技術移転および協力、▲戦闘機または関連備品の支援、▲鹵獲した西側武器および装備、などがあるとしました。
この当局者はまた「政権の安定を図り、今年の冬を(安定的に)過ごすため、食糧と油類などの支援を優先的に受け、今後、軍事技術の移転など在来式の戦略の現代化支援、合同訓練などを追加で議論していくものと思われる」と述べています。
・専門家に聞く
つまり、まずは物資からということになりますが、どうなのでしょうか。
これについて私は3日、ロシアと北朝鮮事情に詳しい統一研究院の趙漢凡(チョ・ハンボム)専任研究委員に電話インタビューを行い聞きました。
趙研究委員はまず「代価」について「現金よりも物々交換方式の可能性が高い」とし、優先順位としては「食糧、エネルギー、そして最後に軍事協力となるが、大部分は経済協力ではないか」としています。
理由については、北朝鮮が希望しているとされるSu-35などの戦闘機は高価である点や、ロシアがこれまで中国など他国に対しても核心的な技術提供を行ったことがない点などを挙げました。
趙研究委員はこうした点を踏まえ「北朝鮮に対しても、ロシア側はあくまで『技術的な諮問を行った』としている。目に見えない形で行っているということ」と指摘します。
それよりもやはり、北朝鮮にとって重要でさらにロシア側としても分量が豊富な「食糧、肥料、エネルギー、鉱物」が優先順位ではないかと見ています。
「砲弾の代価としてはこの程度が妥当」ということです。北朝鮮の砲弾生産能力についても「十分に自国で生産ができている」としました。
一方で、ロシアと北朝鮮の協力がどこまで続くのかという点については「ロシアにとって北朝鮮の魅力や戦略的な価値はそう高くない。例えば、北朝鮮と韓国や日本、どちらが重要かと言えば当然後者になる」としながらも、「ウクライナ戦争の中でロシアとしても軍需補給基地が必要だ。戦争が長期化する他にないため、ロシアと北朝鮮の関係も短期的なものとはならない」と見立てました。
その上でプーチン大統領の訪朝についても「可能性が高い」としました。
9月13日、ロシアのボストチヌイ宇宙基地で首脳会談を行う金正恩委員長とプーチン大統領。4年5か月ぶりの会談となった。写真は朝鮮中央通信より引用。
・「国家情報院の一人勝ち」をどう見るか
なお、今さらですが、国家情報院が明かす内容がすべて真実とは限らないということを知る必要があるでしょう。
その多くは、韓国の大手メディアですら直接チェックできない内容です。
韓国では2010年以降、南北関係が断絶しているため(文在寅政権の時代も南北対話だけが存在し、実質的な南北交流はありませんでした)、北朝鮮内部の一次情報は、同地に情報源を持つ一部のメディアを除いては存在しません。
特に、新聞やテレビなどの韓国のマスメディアは北朝鮮の一次情報の確保に人材や資金といったリソースを全くと言ってよいほど割いておらず、当局からの発表に頼る傾向があります。
このため、北朝鮮内部情報は当局、つまり国家情報院の一人勝ち情況が既に10年以上続いています。
私は今もよく覚えているのですが、2000年代はこうではありませんでした。
当時は人道支援や事業で北朝鮮と行き来する人がたくさんいました。それも平壌だけでなく地方都市にまで及んでいました。
活動を北朝鮮国内で続けるためにいくらかフィルタリングされた情報であったとはいえ、当局の発表を鵜呑みにする傾向は今よりも格段に少なかったのです。
「当局の発表は間違っている」という声も公然と上がり、当局と民間の間に良い形の緊張関係がありました。しかし今や国家情報院発の情報をチェックする実力は民間にありません。私もそうですが、メディアはこれをあたかも事実のように書くことになります。
だからこそ、国家情報院はブリーフィングを「情報戦」の一種として存分に活用します。
中には北朝鮮に対して「ここまで知っているぞ」とカマをかけるような内容も含まれているでしょう。注意が必要です。
◎韓国から見た南北関係(2):統一部が北朝鮮に連絡チャンネルの復旧を呼びかけ
2日、統一部の報道官は韓国国内メディアの記者団を対象に、非公開ブリーフィングを開き、その中で『南北連絡チャンネル復旧に対する統一部の声明』を発表しました。
声明では「23年4月7日に北韓による一方的な通話への無応答以降、南北間の通信・連絡の中断情況が210日の間つづいている点が、とても遺憾である」としています。
韓国は4月以降も既存の南北間の合意の下に、毎日2回北朝鮮に対し通話を試みているとのことですが、北朝鮮は応じていないということです。
なお、2回というのは午前9時の業務開始時と午後5時の業務終了時を指します。統一部ではソウル庁舎内に南北連絡事務所の連絡線があり、これを用い連絡します。
一方、統一部とは管轄が異なりますが、韓国軍でも西海(黄海)、東海(日本海)の2か所で通信線があり(軍は午前9時と午後4時)、不慮の事態に備え直通電話ができるようになっています。また、南北の技術者間の通信ラインもあります。
これらのいずれも不通の状態が続いているということです。
統一部は今回の声明の背景に先月29日、東海上で北朝鮮住民4人が乗った北朝鮮の漁船を救助した一件を挙げました。
報道官は「南北連絡チャンネルは海上での船舶遭難、災難・災害などによる通報と協議に必須のチャンネルで、どんな状況でも中断されるべきではない」と述べています。
報道官はまた「韓国だけでなく、北韓住民達の声明と安全にも直結する問題」としています。
このように、北朝鮮が絶対に応じないとしている「非核化」を絡めた対話を持ち出すのですはなく、救助や災害といったあくまで人道的な分野での業務的な通信の必要性を示すことで、北朝鮮側の再開のハードルを下げようとしているようです。
なお、北朝鮮は4月以降、一貫して通話や通信に応じない理由を明らかにしていません。もっとも、明かさなくとも分かりますが。
11月1日、統一部の金暎浩(キム・ヨンホ)長官は、統一研究院主催のシンポジウムで、「北韓が非核化対話に出てくるならば、南北住民みなのためのなる交流・協力を推進していく」と発言しました。これは単なるスピーチで何の意味もない言葉です。韓国政府に対話する気はありません。統一部提供。
◎朝鮮半島情勢(1):北朝鮮が在外公館の一部を閉鎖、「効率化」と主張
北朝鮮が駐スペイン大使館を閉鎖し、スペインから撤収したと『聯合ニュース』などが伝えています。
北朝鮮とスペインの国交は01年に結ばれました。大使館は13年に開設されましたが、17年には北朝鮮の核・ミサイル実験を理由に大使が追放されていました。
その後も大使館は運営されてきましたが、19年2月には『自由朝鮮』という団体により襲撃される衝撃的な事件がありました。団体は武装して大使館を襲い、PCや携帯電話などを盗んでいきました。
ちなみに私もこの事件に非常に衝撃を受けたのですが、首謀者かつ実行者であった人物と面識があったからです。
エイドリアン・ホンという名前のその人物は過去、米国で北朝鮮人権問題を扱う大学生を主体するNGOを結成し、代表として大きく会員を増やしたのですが、その過程でソウルで会ったことがあります。06年くらいの事でしょうか。
当時はまだ幼い印象だった人物で、その後も連絡することはありませんでしたが、2010年代以降はかなり踏み込んだ反北朝鮮運動を展開していたようです。暗殺された金正男(キム・ジョンナム)の息子を保護したりもしたようです。
事件の一報を聞き「問題意識を突き詰めるとこうなるのかな」と思ったりもしました。
彼は米当局から指名手配されましたが、未だ逮捕されていはいません。20年に米『ニューヨーカー』誌にインタビューが掲載されています。なお、現在の居場所は分かりません。
本論に戻ります。
北朝鮮は最近になって、アフリカのウガンダ、アンゴラの在外公館を閉鎖し、香港総領事館を閉鎖する方針を中国に通告したそうです。
韓国の統一部はこうした動きに対し「国際社会による北朝鮮制裁が強まる中で、外貨稼ぎに支障が生じ、在外公館を維持することが難しくなり撤収するのでは」と見ています。
また「伝統的な友邦国と最小限の外交関係を維持することも難しい、北朝鮮の困難な経済状況を表すもの」ともしています。
こうした報道のせいでしょうか、3日になって北朝鮮側から反応がありました。『朝鮮中央通信』で外務省の報道官が外交政策に触れたのです。
この中でいくつかの国で代表部を「撤収または新設」していることを認めつつ「国家の外交的な力量を効率的に再配置し運営することは、主権国家が対外関係で国益増進を指向し進める正常的な作業」であると明かしました。
◎朝鮮半島情勢(2):韓国による初の軍事偵察衛星発射が11月30日に決定
韓国国防部の申源湜(シン・ウォンシク)長官が3日、韓国軍としては初になる独自軍事衛星の打ち上げ日が今月30日であることを、韓国国防部記者団との懇談会の席で明かしました。
場所は10月31日(現地時間)、米国のICBM「ミニットマン3」の発射実験を米韓のNCG(核協議グループ)国防部代表が見守った、米カリフォルニア州ヴァンデンバーグ航空基地。米スペースX社のファルコン9を用いて発射されるそうです。
今回打ち上げられるのはEO(電子光学)、IR(赤外線)衛星で、打ち上げを通じ高速機動や姿勢制御技術を習得するとしています。
韓国は今も、北朝鮮国内を独自に監視する軍事偵察衛星を持っていません。今回の打ち上げは2025年まで続く一連の衛星開発の一環として位置づけられています。
◎ショートニュース
(1)北朝鮮に勝訴した91歳「脱北国軍捕虜」亡くなる
10月31日、キム・ソンテさんが91歳で亡くなりました。キムさんはいわゆる「国軍捕虜」でした。国軍捕虜。普段日本ではなかなか聞けない単語だと思います。
朝鮮戦争(1950年6月~53年7月)で北朝鮮軍の捕虜になった韓国軍の軍人を指すもので、とりわけ53年7月の停戦協定締結後にも釈放・送還されなかった者を指します。国連軍司令部や韓国軍の資料などによると、その数は8万人程度とされます。
彼らは北朝鮮で「敵対階層」と分類され、朝鮮労働党への入党や立身出世が望めない存在であるばかりか、炭鉱など劣悪な環境で強制労働させられたことが分かっています。
国軍捕虜のうち、韓国に「脱出」してきたのはキム・ソンテさんを含めわずか80人。いずれも「脱北」という苛酷な過程を経て韓国にたどり着きました。
2001年に韓国入りいたキム・ソンテさんは20年9月に国軍捕虜出身者2人と北朝鮮政府と金正恩委員長を相手に損害賠償を求める訴訟を起こし、今年5月に一審で勝訴判決を勝ち取りました。ソウル中央地方裁判所は被告に5000万ウォン(約560万円)の支払いを命じました。
『聯合ニュース』によると判決当時、キムさんは「今日のように嬉しく意義深い日のために祖国に戻ってきたが、両親と兄弟はみな亡くなり、会うことができなかった」、「これからも死ぬまで韓国のために闘う」と述べました。
2000年代に入り、進歩派政権の下で南北対話が進みましたが、国軍捕虜の送還を南北対話の主要議題に含めたことはありませんでした。
他方、ニュースレターでもお伝えしたように、8月から10月にかけて中国から北朝鮮へと600人以上の脱北民が強制送還される事件がありましたが、この中に国軍捕虜が含まれていたと、韓国のNGOが明かしています。
なお現在、韓国で生存中の国軍捕虜は10人となっています。
キム・ソンテさんの葬儀の弔問に訪れた申源湜国防部長官。尹錫悦大統領の弔花もあったといいます。国防部提供。
(2)北朝鮮に抑留中の韓国人6人のうち4人の家族を「拉致被害者家族」に認定
ニュースレター第6号で紹介したように、2011年12月に金正恩が父の後を継いで以降、確認されただけでも6人の韓国人が北朝鮮で新たに抑留されています。3人は韓国人宣教師、3人は脱北し韓国に定着した方達です。
2日、統一部はこの内4人の家族を「拉北被害者」と認め、慰労金を渡すことを決めました。4人のうち3人は韓国人宣教師、1人は脱北民となります。「拉北」とはやはり聞き慣れない言葉ですが、文字通り「北韓に拉致された」という意味です。
法的な根拠は『軍事停戦に関する協定締結以降、拉北被害者の補償および支援に関する法律(戦後拉北者法)』になります。
これは1953年7月27日の停戦協定締結以降、本人の意思に背き軍事境界線の北側で居住している者とその家族(配偶者、祖父母、父母、子女、孫、兄弟姉妹)に各種補償を行うための法です。
『聯合ニュース』によると今回の決定により各家族にには1500万~2000万ウォン(約168万~約225万)の慰労金が渡されるとのことです。
なお、残る2人については、本人は北朝鮮にいる上、韓国に家族がいないため今回の決定から除外されました。
北朝鮮に抑留されている韓国人6人。朝鮮日報より引用。
(3)北朝鮮と中国の定期旅客便が復活か
北朝鮮の高麗航空が平壌と北京を結ぶ週3回の定期運航を再開したのではないかと『聯合ニュース』などが伝えています。
新型コロナの拡散により20年1月に運行が取りやめになる前には、同路線は火・木・土曜日と週3回運航されていました。これが今年8月にいったん再開された後、9月には運航が確認されていませんでした。
しかし10月最終週から週3回の運航が確認されており、本格的な再開されるのではないかと各メディアは見立てています。
なお今年8月『ロイター通信』は中国当局が高麗航空に対し、3月26日から10月28日まで毎週火・木・土曜日の路線運営を許可したと伝えていました。
他方、同じ高麗航空によるロシア・ウラジオストクと平壌を結ぶ路線も、10月16日から毎週月・金曜日に定期的に運航されているとのことです。
(4)韓国国防部長官「『9.19軍事合意書』の効力停止に米も共感」
これは先月の出来事ですが、重要だったので言及します。
2018年9月に平壌で締結された『9.19南北軍事合意書』について、「南北間の緊張激化を防ぐ最後の砦」という進歩派を中心とする見方と、「軍事的に優位に立つ韓国にとって足かせに過ぎない」とする保守派の見方あることはこれまでもお伝えしてきました。
尹錫悦大統領も後者の立場に立っており、昨年までは特に『9.19軍事合意書』について否定的な見解を明かしてきました。
しかし今年になってからはややトーンダウンしています。「北朝鮮のさらなる挑発」がある場合に検討する、という形に落ち着いています。
統一部もまた、こうした立場にあることもお伝えしました。韓国から先に破棄などに向けた行動は取らないということです。
しかし、合意の当事者たる韓国国防部は攻撃的な姿勢を崩していません。
先月27日の国政監査で申源湜(シン・ウォンシク)国防部長官は、同合意の効力停止と関連する政府部署間の協議が進んでいることを認めました。
それと同時に「軍事合意の効力停止が、北韓が挑発する際に国民を守るために必要だ」と述べ、「これに米国側も共感している」と明かしました。
「効力停止」というのは破棄をせずに、韓国が一方的に遵守を止めることを意味します。同合意は国会で批准されていないため、効力停止は政府の一存で可能です。
政府の立場は一旦落ち着いているものと見られますが、10月のハマスによるイスラエルの攻撃を、北朝鮮による奇襲攻撃の可能性になぞらえ、危機を煽る声も大統領室から聞こえてきます。
水面下ではまだまだ予断を許さない状況にあるようです。
◎あとがきに代えて:徐々に持ちあがる「二つのコリア」論
今号はここまでです。いつもは日を跨いでの発行になってしまい心苦しかったので、早めにお送りしてみました。
実は南北関係に関して、どう取り扱うのか迷っているテーマがあります。それは現在は「統一の過程で暫定的に形成された特殊関係」となっている南北朝鮮が、互いに国家と認めるという「二つのコリア論」です。
この論はここ2年ほど、つまり南北対話が終わりを迎えて以降、少しずつ盛り上がりを見せています。関連書籍や論文もいくつか出ています。
実際に昨日、ソウルでもこのテーマを取り扱った興味深いシンポジウムがありました。私は行けなかったのですが、YouTubeで全て見て、資料集も読みましたが、色々悩んだあげく、今号には含めませんでした。
このテーマは来年に出る著書の一つの大きな軸となっている部分であるが故に、取り扱い方に注意している部分があります。
ですがそれよりも気をつける部分としては、「二つのコリア論」というのは、過去の南北関係を知らない上で語られる場合、何の意味も持たなくなるということを私自身が強く感じているからです。
非常にナイーブでセンシティブな議論にならざるを得ないのですが、いずれあちこちで大きく取り上げられるようになるでしょう。その時に備え、少しずつニュースレターでも扱っていけるようにします。
最後に、お知らせ(?)です。サポートメンバーの方で、もし韓国に訪れる方は、お気軽にメールでお声がけください。時間が合えばソウル市内でお茶などお付き合いします。
seodaegyo@gmail.comまでご連絡ください。
それではまた次号で!(徐台教)