ニュースレター号

ビラが南北衝突の「起爆剤」に?北朝鮮核開発の世界最高権威が語る「米朝の失敗」、北朝鮮をめぐる韓国の最新世論など 全8トピック|第14号

(11月10日)無料会員の皆さん、アンニョンハセヨ。

 ニュースレター第14号をお届けいたします。今朝は私が住む金浦では気温が1度まで下がり、今も3度と一気に冬の気配となりました。また少し気温は持ち直すとしていますが、今年はまだやり終えていない大仕事があるので元気を出してやり遂げようと思います。

 今号は南北関係・朝鮮半島情勢を中心にお届けします。南北関係はやはり「ビラ=情報戦」が最前線です。今は時期的に小康状態ですが、いずれ揉めるでしょう。また、シグフリード・ヘッカー博士の議論がとても面白いのですが、これは今号だけでなく、じっくりと見て行くべきなので焦らずにいきましょう。

 今号の目次は以下の通りです。

  • 韓国から見た南北関係(1):「ビラ」をめぐり南北が舌戦

  • 韓国から見た南北関係(2):「北朝鮮をどう見ているのか?」政府機関『民主平和統一諮問会議』の最新世論

  • 韓国から見た南北関係(3):「金ジュエは後継者の可能性」統一部の金暎浩長官が就任100日メッセージ

  • 朝鮮半島情勢(1):ブリンケン米国務長官が訪韓「ロシアと北朝鮮の露骨な安保理決議違反に断乎対応」

  • 朝鮮半島情勢(2):「米は北朝鮮に外交か核開発かの片方を強要した」北朝鮮核開発に関する最高権威の一人、ヘッカー博士が韓国で講演

  • ショートニュース:日米韓のミサイル情報共有システムが月内に完成/米韓の北朝鮮人権特使が会見/韓国市民の脱北民への“微妙な”認識、78%が「会ったことがない」

  • あとがきに代えて

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◎韓国から見た南北関係(1):「ビラ」をめぐり南北が舌戦

 またビラの話か!と思うかもしれません。ニュースレターで毎号ビラの話を取り上げているので当然です。しかしそれほどまでに、ビラの話は大事なのです。

 北朝鮮の不特定多数の住民はビラを通じ、金正恩氏を批判する国際的な論調に触れ、さらに韓国という国の存在を意識することになります。

 第10号で取り上げたように、北朝鮮は『反動思想文化排撃法』(20年12月)、『青年教養保障法』(21年9月)、『平壌文化語保護法』(23年1月)と韓国の影響力を遮断するための法律を立て続けに制定していますが、これは裏返すと韓国の影響力の浸透力の強さを示しています。

 それもそのはずで、韓国と北朝鮮はなんといっても言葉が通じますし、今や少しずつ弱まっているとはいえ「同じ民族」という感覚が噛み合った時に生まれる化学反応は、とんでもない潜在力を秘めています。

 南北の往来は関係悪化の上に新型コロナが重なり、ここ3年以上ゼロの状態が続いています。なんとか韓国の影響力を削ぎたい北朝鮮政府にとって、ビラは「境界」をやすやすと越えてくるので厄介です。

 既報のように、文在寅政権下の2020年にビラ撒布を取り締まれるよう改正された法律が憲法裁判所で「違憲」とされ、ビラ撒布はふたたび活性化の兆しを見せています。

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 そんな中、北朝鮮の国営朝鮮中央通信にビラ撒布を警告する記事が載りました。キム・ユンミという個人名で書かれたもので「『大韓民国』終末の『起爆剤』と作用するだろう」という物々しいタイトルでした。

 ちなみに「大韓民国」というのは今や北朝鮮では従来の「南朝鮮」よりも低い蔑称のようなものです。「ハイハイ、気取っちゃって」のような馬鹿にするニュアンスと同時に「君たちはもう他人だよ」という突き放す態度が含まれています。

 記事の核心は「反共和国ビラ撒布が『自由』や『人権』を掲げ『民間団体によるもの』と主張するのは欺瞞的な術策に過ぎず、傀儡輩党が計画し主導する反共和国心理謀略戦であるということだ」という一文に集約されます。

 暗号のような文章ですが、つまるところビラは韓国政府が飛ばしているというものです。実際のところ、ビラの資金は米国政府や各国機関、篤志家など多様であるため事実と異なるのですが、この指摘はとても重要です。

 なぜでしょうか。「ビラ撒布は交戦相手を無力化させる目的で行う高度の心理戦であり、戦争開始に先立ち行われる事実上の先制攻撃行為である」という一文が続くからです。

 やはりニュースレター10号で取り上げたように、韓国政府は北朝鮮への情報流入行為を「情報戦、心理戦」として捉えています。攻撃の一種ということです。このため、北朝鮮側のこの解釈がピント外れであるとは言い難いのです。もちろん、韓国が戦争を仕掛ける気はないので大いに拡大解釈ではありますが。

 記事では、これまでは法律で禁止されていたことを買って耐えてきたが、これからはもう耐えない、ビラを飛ばすならばビラを飛ばした原点だけでなく「傀儡の牙城」までも攻撃するという警告が続きます。軍事施設や重要施設を攻撃するよということです。

 さらに「新型コロナは韓国から飛んできたビラのせいで流入した」という過去の非科学的な理論まで持ち出して韓国を非難しています。

 その上で記事は「火花ひとつで爆発する一触即発の現在の情勢の中で、わが国家の存立と発展を悪辣にこき下ろす敵対的な心理戦が我々との接境地域で行われるとき、朝鮮半島で欧州と中東で起きた事態と同じ軍事的衝突が起きないという担保はない」と結ばれています。恐ろしい予告です。

 とはいえ、あくまで個人名で書かれた記事であり、政府の発表、特に対南関係を統括すると見られる金与正(キム・ヨジョン)氏によるものではないため、まだまだ警戒度は「低」といったところです。

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 さらに冬の間はビラ撒布に適していないという事情もあります。

 実際にビラを北朝鮮に送った経験の多い人物に聞いてみたところ「冬の間は北風が続き、ビラを飛ばすのに適した南風が吹くのは月に1~2度。それも不安定なため飛ばすのは難しい。うまく飛ばすためには3月まで待つ必要がある」とのことでした。

 このため、本格的にビラが問題となるのは来春ということになりそうです。来年4月には韓国の総選挙も控えており「北朝鮮との関係」が選挙の行方に影響を与えるようになるかもしれません。

それでも今回の朝鮮中央通信の記事は、改めて北朝鮮の立場を確認できたことで貴重(?)でした。

 なお、韓国の統一部はこの記事を受け「北韓へのビラ撒布は民間団体が韓国の憲法上保障された表現の自由に従い自発的に行う活動」と改めて表明すると共に、「北韓は軽挙妄動をやめるよう厳重に警告する」と反応しました。

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◎韓国から見た南北関係(2):「北朝鮮をどう見ているのか?」政府機関『民主平和統一諮問会議』の最新世論調査

 韓国市民は北朝鮮との関係をどう捉えているのか。韓国ではいくつかのシンクタンクで信頼できる調査が毎年行われており、私も以前から関連する記事を書いてきました。

 そしてそんな調査の一つがこの度公開されましたが、全く話題になっていません(笑)。なぜなら、既存のトレンドを再確認する内容だったからです。

 それでも参考のためまとめてみます。105ページに及ぶ報告書であるため、全てを取り上げることはできませんが、興味深い内容を抽出しました。

 なお、調査を行った『民主平和統一諮問会議(民主平統)』は大統領直属の統一諮問機関として、国内外に約22,000人の諮問委員を委嘱しています。南北統一を考える、世間に知らしめるための組織です。

 韓国では南北関係などの仕事に関わる際に欠かせないステップであり、社会的名士(?)のタイトルの一つとしても知られています。私も2018年から2年間、諮問委員をやりましたが、あまり意味を感じることができずその後止めました。

 今回紹介する世論調査の項目は、▲北韓とロシアの関係、▲韓米同盟の今後の方向性、▲憲法第4条の認知度、▲統一の必要性、▲統一の理由、▲北韓への認識、▲統一に最も大きな影響力を及ぼす国、▲安全保障状況の認識、となります。

 順番に並べておきましたので関心のある部分をお読みください。

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・北韓とロシアの関係

「あなたは最近の北韓とロシアの武器取引および軍事訓練の可能性など北露の密着についてどう考えますか」という質問に関する答えです。

北韓とロシアの関係。資料より筆者がキャプチャしたもの。以下同様。青が憂慮、緑が憂慮しない。


北韓とロシアの関係。資料より筆者がキャプチャしたもの。以下同様。青が憂慮、緑が憂慮しない。

 とても憂慮する:42.3% 多少憂慮する:29.1% 別に憂慮しない:20.5% まったく憂慮しない:5.4% 分からない・応答なし:2.7%

 総合すると憂慮71.4%、憂慮しない25.9%となりました。

 年代層の偏りに特徴がありました。19歳~29歳で63.3%、60代以上82.1%と、年代層が上がる程に憂慮という答えが増えていきました。

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・韓米同盟の今後の方向性

「今年は韓米同盟70周年になる年です。あなたは今後、韓米同盟がどんな方向に進むべきと考えますか」

韓米同盟の今後の方向性。青が拡大、緑が維持、黄色が縮小。


韓米同盟の今後の方向性。青が拡大、緑が維持、黄色が縮小。

 とても拡大すべき:29.5% 多少拡大すべき:14.8% 現在の水準を維持すべき:36.9% 多少縮小すべき:11.0% とても縮小すべき:5.0% 分からない・無回答:2.8%

 全年代層の中で19歳~29歳(56.5%)と60歳以上(53.9%)だけで「拡大すべき」が半数を超えました。最も少なかったのは40代(33.7%)です。50代(34.6%)と合わせ、この層が韓国のリベラル層であることが明確になっています。

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・憲法第4条の認知度

 「憲法第4条には『大韓民国は統一を指向し、自由民主的な基本秩序に立脚した平和的統一政策を樹立しこれを推進する』とあります。あなたはこれについてどれだけ知っていましたか?」

憲法第4条の認知度。青が認知。


憲法第4条の認知度。青が認知。

 とてもよく知っていた:16.0% ある程度知っていた:43.3% よく知らなかった」30.9% まったく知らなかった:9.5% 分からない・無応答:0.3%

 まとめると、認知していた:59.3%、認知していなかった:40.4%となり、憲法第4条がある程度知られていることが分かります。

「認知している」側の回答には男性(69.0%)、女性(50.0%)と性別差がややありました。

 また、19歳~29歳(44.6%)、30代(43.8%)という若者層と、40代(68.1%)、50代(65.1%)、60歳以上(68.3%)の差が顕著で年代差が認められました。

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・統一の必要性

「あなたは統一が必要だと考えますか?」

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  • 朝鮮半島情勢(1):ブリンケン米国務長官が訪韓「ロシアと北朝鮮の露骨な安保理決議違反に断乎対応」

  • 朝鮮半島情勢(2):「米は北朝鮮に外交か核開発かの片方を強要した」北朝鮮核開発に関する最高権威の一人、ヘッカー博士が韓国で講演

  • ショートニュース:日米韓のミサイル情報共有システムが月内に完成/米韓の北朝鮮人権特使が会見/韓国市民の脱北民への“微妙な”認識、78%が「会ったことがない」

  • あとがきに代えて

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