ニュースレター号

[26号] 北朝鮮のICBM発射と核施設稼働、沈没した『天安艦』の復活、進む日米韓の軍事協力など全11トピック

(12月26日)サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。

 ニュースレター第26号をお届けいたします。金曜日の発行予定が、なんと韓国社会・政治号を出すはずの火曜日となってしまいました。ここ数号見舞われているペースの乱れが極限に達した印象です。それでも新年から持ち直していきますので、ご安心ください。

 今号の目次は以下の通りです。

  • [巻頭特集] 北朝鮮のICBM「発射訓練」をどう見るか

  • 韓国から見た南北関係(1):韓国国防部長官が「斬首作戦」に言及

  • 韓国から見た南北関係(2):『天安艦』が13年ぶりに姿を変え‘復活’

  • 韓国から見た南北関係(3):韓国の来年度予算が成立…国防部、外交部は増額、統一部は減額

  • 朝鮮半島情勢(1):国連総会で北朝鮮人権決議案が採択…一方で北朝鮮は「人権」を恣意的に解釈

  • 朝鮮半島情勢(2):日米韓のミサイル情報共有システム稼働…進む日米韓軍事協力

  • 朝鮮半島情勢(3):寧辺核施設で軽水炉の活動が活発化、IAEAが明かす

  • ショートニュース:(1)北朝鮮の外交団が中国外交トップと面談、(2)韓国の国家情報院長と外交部長官が交替へ、(3)ドキュメンタリー映画『ビヨンド・ユートピア』がアカデミー賞の予備候補に、(4)「新型コロナ後初」赤十字国際委員会が北朝鮮に医療支援

  • あとがきに代えて:今年は静かに過ぎ去るのか

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[巻頭特集] 北朝鮮のICBM「発射訓練」をどう見るか

 先週(というには間が空いてしまいましたが)あった朝鮮半島情勢に関する最も大きなニュースは、北朝鮮が18日午前、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の「発射訓練」を行ったことです。

 北朝鮮は翌19日、朝鮮労働党機関誌『労働新聞』を通じ詳細を伝えました。

 これによると、今回のミサイルは「火星18型」(北朝鮮では「火星砲-18」)です。北朝鮮にとっては同型では4月と7月に続き今年3回目、通算では今年5回目となるICBM発射でした。

 首都・平壌からロフテッド軌道(垂直に近い軌道)で発射されたICBMの飛行時間は74分、最大到達高度は6518㎞、飛行距離は1002㎞であったとのことです。

北朝鮮が発射した「火星18型」。朝鮮中央通信より引用。


北朝鮮が発射した「火星18型」。朝鮮中央通信より引用。

 北朝鮮は今回の発射を「発射訓練」と称していますが、なぜ発射訓練を行ったのでしょうか。

 同記事ではその理由を今月15日(現地時間)に米ワシントンで開かれた米韓「NCG(核協議グループ)」における米韓の共同声明や、来年8月の米韓連合訓練における「核の作戦シナリオ」導入といったものに求めています。

 一連の動きを列挙しながら「共和国武力の強い怒りと、超強硬な報復の意志」につながったと主張しています。

 さらに、米国の核戦略爆撃機や原子力潜水艦、原子力空母などを頻繁に寄越し「朝鮮半島地域を文字通り米核戦略資産の総集合基地」としていることや、今月17日に原子力潜水艦『ミズーリ』が寄航した点を挙げ、これに対する「攻勢的な対応」の必要性を訴えています。

 同記事ではまた、発射訓練を参観した金正恩氏の「敵の軍事的な脅威が続く時には、より攻勢的な行動で強く対応しなければならない」という旨の発言を伝えました。

「火星18型」の発射を見守る金正恩氏。娘も同行しました。朝鮮中央通信より引用。


「火星18型」の発射を見守る金正恩氏。娘も同行しました。朝鮮中央通信より引用。

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 それでは今回の「発射訓練」をどう見るべきでしょうか。国策シンクタンク『統一研究院』が20日に出したレポートを参考に読み解いていきます。

 まず、今年あった「火星18型」の2度の発射の際に「実験発射」と称したものが「発射訓練」に変わった用語の変化に注目しています。これは実験と実戦化の間に位置するもので、武器システムとして現場で運用できるかどうかを検証する「準備段階」にあるとしています。

 一方で、前掲の労働新聞の記事内のいくつかの用語、例えば「国防科学部門の研究者たち」への言及がなく「ミサイル総局の指揮官たち」となっていた点などを挙げ、「実験よりも実戦訓練を強調したものと見られる」としながらも、ミサイルの塗装が碁盤状である点などから「実験目的が強い」と結論付けています。

 つまり「発射訓練」という言葉には米韓に対する政治的な意図があるということです。

 なお「発射訓練」という用語は過去6年間に成功した10度のICBM発射のうち3度だけ、すわなち今年2月の「火星15型」、同3月の「火星17型」、そして今回の「火星18型」に対し使われています。

 こうした点から「発射訓練」という用語はやはり「機能的な実験段階から運用の機動性へと強調点を移すための意図」があると見立てています。難しいですね。政治的な意図と技術的な進捗の両方があると受け止めれば良さそうです。

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 レポートではまた、上記3つの型のICBMを比べながら「実験発射」から「発射訓練」に移行するまでの期間が徐々に短くなっていると指摘します。15型は6年1か月、17型は1年、そして18型は8か月という具合です。

 しかしいずれも1~3回の実験で訓練段階へと移行していますが、技術的な完成度と運用の安定性を実際に確保したかは「依然として疑問」とレポートでは明かされています。

 こうした点から、今後、ICBMの発射が続くと結論付けています。

 一方でレポートでは、北朝鮮にとっての技術的な課題として「正常角度での実験発射」があると指摘しています。これを通じ大気圏への進入および再進入時の安定性や弾頭の削磨技術能力、正確な爆発および弾着能力などを確認できると言います。

発射された「火星18型」。朝鮮中央通信より引用。


発射された「火星18型」。朝鮮中央通信より引用。

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 しかし北朝鮮は「地理的な要件や軍事的なリスク」からこれが難しいとしながらも、予想できるルートとして、▲ハワイの北側を経由し米国の西海岸付近に落弾、▲ハワイの南側を経由し米国西海岸の付近に落弾、▲南米方向、▲豪州上空を通過し南極大陸前に落弾の4つを挙げています。

 いずれも米国や豪州などによる迎撃といった軍事的な対応が予想される上に、観測用の艦隊を持たない北朝鮮にとって分析は難しいという難点があります。

 このため、ハワイ以前まで飛ばす形に推力を調整したり、中距離弾道ミサイルを通じた間接的な技術検証を選ぶ可能性もあるとしています。

 また米政府系メディア『RFA(Radio Free Asia)』が20日付けの記事で報じたところによると、米国の『議会調査局』は19日(現地時間)に「北朝鮮の核武器・ミサイル開発」報告書を更新する中で「核武器と大型の在来式の搭載物を高速で遠くまで運搬することができる弾道ミサイルの移動性、信頼性、効能、正確性、生存可能性を高めるための試験を続けることが北朝鮮のミサイル開発の核心だ」と分析しています。

 さらに「火星18型」については「信頼性を向上させるために追加の試験が必要だろう」と見立てています。ざっくりとした書き方ですが、上述してきたような『統一研究院』の見立てと一致します。

 韓国の国防部も21日、国会への報告の中で、さらなる実験の可能性を提起しました。

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◎韓国から見る南北関係(1):韓国国防部長官が「斬首作戦」に言及

 冒頭で取り上げたICBMの発射を受け、韓国も強く反応しました。

 19日、国家安全保障会議(NSC)緊急常任会議に参席した尹錫悦大統領は冒頭の発言で北朝鮮のミサイル発射実験を「韓半島と世界の安全保障に対する重大で深刻な挑戦」と位置づけると共に、「北韓の政権は自らの挑発が逆に自身により大きな苦痛として返ってくるということを悟ることになるだろう」と述べました。

19日、国務会議(閣議)に出席する尹錫悦大統領。大統領室提供。


19日、国務会議(閣議)に出席する尹錫悦大統領。大統領室提供。

 ここまでは通常対応でしたが、同じ日の午後、申源湜(シン・ウォンシク)国防部長官は出演したニュース番組の中で「斬首作戦の訓練をオプションとして考慮している」という旨の発言を行いました。

 これはブラフではなく、実際にICBM発射があった18日に米韓の特殊戦部隊は合同で「核心地域内部掃蕩戦術訓練」を行っています。

 斬首作戦というのは、文字通り敵の指導者の首を取るというもので、今の朝鮮半島では有事の際に北朝鮮の最高指導者・金正恩氏をピンポイントに殺害する作戦を指します。「核心地域」とは金正恩氏や北朝鮮指導部が隠れている場所を指すと見るのが妥当でしょう。

 20日に開催された国防革新委員会の第3次会議でも、北朝鮮への「打撃力」が話題に上りました。

 「韓国軍は監視と打撃を統合して遂行できる無人偵察・攻撃機、有事の際に北の縦深地域(前方・後方)への浸透・打撃が可能なステルス無人偵察・攻撃機などを早期に確保し、北韓の奇襲挑発に備え態勢を画期的に強める」としています。

 こうした動きは、金正恩氏への直接攻撃を示唆するもので、韓国軍の抑止力の一つとなっています。

 なお、米国国防省の報道官は21日(現地時間)の会見で「同盟国の最終目標は金正恩の斬首か」という記者の質問に「外交的なアプローチを維持しながら対話を促している」と答えています。

18日、訓練を行う米韓の特殊戦部隊。韓国国防部提供。


18日、訓練を行う米韓の特殊戦部隊。韓国国防部提供。

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◎韓国から見る南北関係(2):『天安艦』が13年ぶりに姿を変え‘復活’

 2010年3月26日、韓国西北端の白翎島(ペクリョンド)付近の海上で、北朝鮮軍潜水艇の魚雷により沈没した韓国軍の哨戒艦『天安』。

 46人の戦死者を出したいわゆる「天安艦事件」と呼ばれるこの一件により、時の李明博(イ・ミョンバク)大統領は「5.24措置」を発表、南北関係は開城工業団地を残しすべて断絶することになりました。

 そして23日、その名を継承した新型『天安』が京畿道(キョンギド)平澤(ピョンテク)市の第2艦隊に実戦配備されました。今年5月の就役以降、7か月におよぶ各種訓練を終えてのものです。同艦隊は西海(黄海)の守護を目的としています。

今月23日に実戦配備された新型護衛艦『天安」


今月23日に実戦配備された新型護衛艦『天安」

 韓国国防部によると『天安』は過去の1000トン級の哨戒艦から2800トン級の護衛艦となり、大幅にスペックが高まりました。探知能力の向上をはじめ長距離魚雷、戦術艦対地ミサイル誘導弾などを搭載し、対潜水艦戦闘に特徴を有しているとのことです。

 また、新型『天安』の艦内には「天安艦事件」を追悼する歴史館が存在します。この中には亡くなった46人の名前が刻まれた石版があるそうです。

 さらに、同艦の乗組員の中には「天安艦事件」の生存者であるリュ・ジウク中士がいると国防部は紹介しました。

 報道資料によるとリュ中士は「最新鋭護衛艦として復活した天安艦に乗艦し、2艦隊に入港したことで、空から(あの世から)海を守っている46人の戦友の側にまた戻ってきたようだ」とし、「13年前に完璧な西海守護を誓った瞬間を胸に抱いて、敵が挑発する場合にかならず応酬し、戦友の名誉を死守する」と述べました。

 なお、10年に沈没した哨戒艦『天安』はその後引き揚げられ、現在は平澤市の第2艦隊司令部に展示されています(外国人も事前に予約することで観覧できます)。

平澤市の韓国海軍第二艦隊司令部内に展示されている哨戒艦『天安』の断面。海底から引き揚げた実物だ。船体の下から両断された痕跡がありありと残っている。23年5月、筆者撮影。


平澤市の韓国海軍第二艦隊司令部内に展示されている哨戒艦『天安』の断面。海底から引き揚げた実物だ。船体の下から両断された痕跡がありありと残っている。23年5月、筆者撮影。

 軍にまつわるリュ中士のような「叙事」は南北が今なお対峙を続ける朝鮮半島にはいくつも存在します。

 新生『天安』が大活躍するような状況にならないことを願ってやみません。

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◎韓国から見る南北関係(3):韓国の来年度予算が成立…国防部、外交部は増額、統一部は減額

 韓国の国会で21日、来年度予算案が議決されました。

 その結果、国防部は前年日4.2%増額の59兆4244兆ウォン(約6兆5000億円)、外交部は同24.8%増額の4兆1905兆ウォン(約4600億円)、統一部は同24.9%減額の1兆301億ウォン(約1100億円)でそれぞれ確定しました。

 各省庁の特徴を見ていくと、まず国防部では装備の開発や購入にあたる「防衛力改善費」が4.4%増加、そして軍事力を運営する「戦略運営費」が4.2%の増加となっています。

 次に外交部ではODA(公的開発援助)で39.2%と大幅な増額がありました。

 22年の2兆68億ウォン(約2200億円)から2兆7925億円ウォン(約3000億円)となっています。さらにこの中でも人道的支援のための予算が22年の2993億ウォンから7401億ウォンと約2.5倍に増額されています。この中にはウクライナ戦争への支援も含まれていると外交部は明かしています。

 最後に統一部ですが、事業費と言える一般会計1579億ウォン(約172億円)と、南北協力のために使う南北協力基金8722億ウォン(約953億円)に分かれています。

18日、「2023北韓人権国際対話」を開催した統一部の金暎浩(キム・ヨンホ)長官。強硬派として知られている。統一部提供。


18日、「2023北韓人権国際対話」を開催した統一部の金暎浩(キム・ヨンホ)長官。強硬派として知られている。統一部提供。

 一般会計は1.7%の減額となりましたが「北韓人権センター」の建設に46億ウォン(約5億円)、北韓人権増進活動に18億ウォン(約2億円)、北韓人権国際対話8億ウォン(約8800万円)などが新設されています。

 一方で南北協力基金は27.9%の減額となっています。これは南北交流が現実的に行われていないためです。2017年以降、同基金の執行率は19年の6.2%が最高で、他は3%以下と低調なままです。

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◎朝鮮半島情勢(1):国連総会で北朝鮮人権決議案が採択…一方で北朝鮮は「人権」を恣意的に解釈

 19日(現地時間)、国連総会の本会議で北朝鮮人権決議案が採択されました。『聯合ニュース』によると、同決議案は票決のないコンセンサス(全員同意)方式で採択されたとのことです。国連本部では19年連続でこのような形の北朝鮮人権決議案が採択されています。

 内容は過去の物と変わらないとのことですが、今年の決議案の特徴としては、9月から10月にかけて大きな話題となった中国による脱北者の強制送還に関する内容が追加されています。

 具体的には「国連拷問禁止条約を遵守せよ」というもので、これは北朝鮮への送還時に脱北者が拷問を受ける可能性を考慮してのものです。

 同紙によると決議案はEUを中心に検討され、韓国も文案を協議する過程に「積極的に」参加したとのことです。

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 一方、北朝鮮は12月11日に独自の『人権白書』を発刊し、一部で話題(?)になりました。これは国際社会による北朝鮮の人権状況への批判に対応するためのものとされます。発刊元は1992年に設立された『朝鮮人権研究協会』です。

 この白書をどう見るかというレポートがちょうど22日に国策シンクタンク『統一研究院』から出ていたので引用してみます。

 書いた方はキム・スアム博士で、私が北朝鮮人権問題に取り組んでいた04年や05年にも一線級の研究者だった方です。私も何度かシンポジウムやセミナーなどでご一緒したことがあります。

 レポートでは白書の内容について「これまでの文書の寄せ集め」と厳しい評価を下していますが、興味深い一節がありました。それは北朝鮮における人権の定義です。

 キム博士によると北朝鮮の人権白書では人権を「政治、経済、文化をはじめとする社会生活の全ての分野で人民が行使しなければならない自主的な権利としている」とします。

 キム博士はこれについて過去の文献などから「北韓が主張する自主的な権利の核心的な基盤は主体(チュチェ)思想である」と読み解き、「主体思想に基づく場合、社会政治的生命体論、革命的首領観を通じ人権を受け止めるよう住民を思想教養することになる」と分析します。

 その上で「首領を中心に政治生命体を構成する住民たちは指導者(首領)の正しい指導に拠ってのみ自主的な権利を行使できるようになる。人間であるから当然教授すべき天賦的な人権は否認され、首領に対し忠誠を果たす時だけ享有できる恵みとしての権利に転落することになる」と解説します。

 キム博士はさらに社会主義憲法63条「公民の権利と義務は『ひとつは全体のために、全体はひとつのために』という集団主義原則に基づく」を引用しながら「個人の権利よりも集団の利益を優先視する」と説明します。

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 このように金氏一族による世襲独裁体制の中で北朝鮮の人権観は独特なものになっていますが、キム博士はさらに「国家の自主権」という立場から北朝鮮が展開する論理に注目します。

 北朝鮮は米国など西側陣営による人権問題の提起を「人権優位論」や「人道主義干渉論」と規定した上で非難し、これに対し「自主権の守護」という論理で対応しているというのです。

 これは西側諸国の人権問題への批判を、体制への攻撃と受け止めるものと言えるでしょう。

 キム博士はその上で「北朝鮮は今回の白書を含むあらゆる文献で『人権すなわち国権』と一貫して主張している」と結論付けます。

 そして「北朝鮮に対する敵対視政策が北朝鮮住民の人権を侵害する最大の脅威であるとし、これに立ち向かい自主権と発展権(発展する権利)を守護するために核兵器を含む自衛的な国防力の強化が不可避」という論理を展開していると指摘し、これを「詭弁」と批判しています。

仮想現実(VR)で北朝鮮の人権侵害を体験する韓国の小学生。統一教育院提供。


仮想現実(VR)で北朝鮮の人権侵害を体験する韓国の小学生。統一教育院提供。

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 長々と引用してきましたが、読者の皆さんは「指導者や国家、集団に帰属する人権」についてどうお考えでしょうか。

 現実にはある個人の人権について、一義的には所属する国家が責任を持つことになっているため説得力があるように思えるかもしれませんが、人権は人それぞれに生まれつき備わっているというのが人類の到達点である点は揺るぎません。

 こんな「北朝鮮には北朝鮮固有の人権理解がある」という論理は、私も何度も進歩派の北朝鮮専門家から直接耳にしたことがあります。ある元統一部長官もこう述べて、北朝鮮に人権問題を提起することに疑問を呈していました。

 また、ある著名な専門家は人権問題を非核化問題や朝鮮戦争の平和協定などと同列に並べることに対し、明らかに嫌悪感を表していました。

 しかし韓国政府や韓国市民は北朝鮮の人権問題により正面から向き合う必要があると私は思います。

 韓国市民が何よりも誇りに思う民主主義獲得の歴史と、北朝鮮住民が直面する悲惨な人権侵害の間で「南北和解のために眼をつぶる」と折り合いを付けて放置するのではなく、「悪いものは悪い」と素直に理解した上で進歩・保守両陣営が議論を進める土台がそろそろ出てくるべきではないでしょうか。

 とても難しいチャレンジになりますが、朝鮮半島の未来をより深く考えるきっかけになるでしょう。

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◎朝鮮半島情勢(2):日米韓のミサイル情報共有システム稼働…進む日米韓軍事協力

 韓国国防部は19日「北韓のミサイル警報情報のリアルタイム共有システムにおいて、最近実施した事前点検の結果、完全な運用能力が検証できた」と発表した上で「現在も正常に稼働している」と明かしました。

 これにより22年11月にカンボジア・プノンペンで発表された日米韓首脳による『インド太平洋、韓米日3国パートナーシップに対するプノンペン声明』で約束された内容が実現したことになります。

 具体的にはどんなものなのでしょうか。

 韓国国防部によると米国ハワイの米軍インド・太平洋司令部傘下の連動統制所が三か国の間の情報共有約定(TISA)を基に、日韓両国がそれぞれ探知したミサイルに関する情報を合わせて、米国が探知した情報を再び日韓に発信する方式です。

 より具体的には、これまで日米だけで共有していた情報のうち、▲ミサイルの推定発射地点、▲飛行方向の特性、▲予想弾着地点の3つの警報情報に韓国がリアルタイムで触れることができるようになったというものです。

 韓国国防部は同じ19日、日米韓の3か国が「多年間の3者訓練計画を共同で樹立した」と明かしています。これは具体的には2年間にわたり、対潜水艦訓練やミサイル防衛訓練など、主に海上で訓練を行うものです。

20日に行われた日米韓連合空中訓練の様子。韓国国防部提供。


20日に行われた日米韓連合空中訓練の様子。韓国国防部提供。

 こんな一連の動きをもって「3か国安保協力の新たな時代をより前倒しにする」と表現しています。

 なお、日米韓3か国は北朝鮮がICBM発射訓練を行った2日後の20日に連合空中訓練を行っています。

 韓国空軍のF-15K戦闘機、米国のF-16戦闘機とB-1B戦略爆撃機、日本の航空自衛隊のF-2戦闘機が参加し、済州島東方の日韓の防空識別区域(ADIZ)が重なる区域で行われました。B-1Bの投入は今年13回目、日米韓の連合空中訓練は今年2回目でした。

 尹政権は3か国協力に舵を切った、という印象がまだまだ世間一般にはあるのでしょうが、軍事協力の実態はさらにその先を行っていると受け止めるべきでしょう。

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◎朝鮮半島情勢(3):寧辺核施設で軽水炉の活動が活発化、IAEAが明かす

 北朝鮮の核開発の「大部分」を担当していると言われる、平安北道(ピョンアンプクト)にある『寧辺(ニョンビョン)核施設』で新たな動きがあり警戒が高まっています。

 国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシー事務総長は21日(現地時間)にウィーンで開かれた同機関の理事会で「寧辺核施設の軽水炉の活動増加が観測された」と明かしました。

 同事務総長は特に「排水が温かい」点を取り上げました。これは「軽水炉試運転(commissioning)の状況と一致する」もので「臨界状態(criticality)に到達した証拠」であるとのことです。

 寧辺核施設ではプルトニウムを抽出してきた5メガワット原子炉が有名ですが、北朝鮮は2010年頃から軽水炉を建設してきました。23年になって完成が近づいているという報道がありましたが、具体的な動きが出てきたことになります。

 この軽水炉について、米国の科学国際安保研究所(ISIS)の所長は米政府系メディア『RFA(Radio Free Asia)』(22日付記事)に対し「軽水炉から生産されるプルトニウムはより小さく、より強い核兵器に使われる可能性がある」と述べています。「戦術核兵器に主に装着するだろう」とのことです。

18日、「火星18型」の発射を見守る金正恩氏。嬉しそうですね。朝鮮中央通信より引用。


18日、「火星18型」の発射を見守る金正恩氏。嬉しそうですね。朝鮮中央通信より引用。

 さらに「この軽水炉が完全に稼働する場合、毎年20キロのプルトニウムを簡単に追加で生産できる」と分析し、これまでの5メガワット原子炉の「約5倍程度の量」と述べています。

 その上で「プルトニウムだけでは年間5基の核兵器を、プルトニウムと武器級のウラニウムを合わせる場合には年間10基の核兵器を生産できる」と、その脅威を表現しました。

 また、別の専門家は同紙について「軽水炉の完全な稼働までは約半年が、プルトニウムの生産までは約2年かかる」と予想しています。

 IAEAは11月下旬にも、北朝鮮の風渓里(プンゲリ)核実験場は「新たな核実験を支援する準備ができている」と評価する一方で、寧辺核施設の5メガワット原子炉にも「稼働兆候が認められる」と明かしていました。

 こんな一連の動きに対し韓国外交部は24日、「注視している」とコメントしています。

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◎ショートニュース

(1)北朝鮮の外交団が中国外交トップと面談

 中国の王毅外交部長が18日、外交団を率い訪中していた北朝鮮の朴明浩(パク・ミョンホ)外交部次官と面談しました。

 韓国通信社『ニュース1』の記事によるとこの席で王毅氏は「中国と朝鮮の伝統的な友情は両党と両国の既成世代の指導者が直接作りそだててきた貴重な財産」とし、「最近、中国と朝鮮の間の伝統的な友情は新たな時代により発展してきた」と述べたそうです。

 同氏はまた「中国は常に戦略的で長期的な観点から中朝関係を眺めており、朝鮮と共に疎通を調律を強め、各分野の交流と協力を深めていく」としたとのことです。

 朴次官はこれに「両国関係を不断に前進させる」と答えています。来年は中朝修好75年、中朝首脳間の交流が実現するか注目です。

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(2)韓国の国家情報院長と外交部長官が交替へ

 19日、尹錫悦大統領は情報機関『国家情報院』の院長候補に趙太庸(チョ・テヨン、68)現国家安全保障室長を、外交部の長官候補に趙兌烈(チョ・テヨル、68)元国連大使をそれぞれ指名しました。

 趙太庸氏は外交官出身。米国通で、盧武鉉(ノ・ムヒョン、在任03年2月~08年2月)政権時には6者協議の次席代表である外交部の韓半島平和交渉本部・北核外交企画団長を務めました。その後、朴槿惠(パク・クネ、在任13年2月~17年3月弾劾)政権時には外交部第1次官を務め、20年の総選挙を通じ国会議員となりました。

 そして22年5月の尹政権発足と同時に駐米大使となり、さらに23年3月からは国家安保室長を務めていました。南北関係や朝鮮半島情勢を保守的な眼で見ることで知られている人物です。

趙太庸氏(左)と趙兌烈氏。


趙太庸氏(左)と趙兌烈氏。

 一方の趙兌烈氏はやはり外交官出身です。米国通であることに加え、過去にWTO(世界貿易機構)での勤務経験もあるなど通商分野に明るい人物で、朴槿惠政権では外交部第2次官を務めていました。

 さらに16年11月から文在寅(ムン・ジェイン、在任17年5月~22年5月)政権の19年10月まで国連大使を歴任しました。

 今回の人事の背景には国家情報院の場合、組織の立て直しがあります。

 尹政権発足以降、文在寅政権時の「改革」を元に戻そうとする中で幹部の辞任や入れ替えが相次ぎ、先月11月には院長はじめ第1次長、第2次長が同時に更迭されるなど落ち着きを失った組織の長に信頼できる人物を据える狙いがあります。

 また、外交部では現在の朴振(パク・ジン)長官が来年4月の総選挙への立候補を明かしているため後任が必要となっています。両者に対する国会の人事聴聞会は1月に行われる予定です。

 なお今回の人事が発表される際に、国家情報院に第3次長のポストが新設されることが明かされました。第1次長の外交、第2次長の国防に加え、第3次長は経済安保を担当することになります。

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(3)ドキュメンタリー映画『ビヨンド・ユートピア』がアカデミー賞の予備候補に

 北朝鮮住民が脱北する過程を描いたドキュメンタリー映画『ビヨンド・ユートピア』が第96回アカデミー賞のドキュメンタリー長編映画部門で、15作品の予備候補に選ばれたと、米国の映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が21日(現地時間)に発表しました。

 私は韓国での試写会を逃してしまい、ずるずると観られないままでいるのですが、日本では来年1月12日から公開されるとのことです。

 過去にも脱北を扱った映画はいくつかありましたが、いずれも厳しい現実を描いているという点で胸に迫るものがありました。

 作品は今年1月にサンダンス映画祭で観客賞を受賞するなど、高い評価を得ています。アカデミー賞では24年1月23日に部門別の最終候補を発表します。受賞式は3月10日とのことです。

映画『ビヨンド・ユートピア』のバナー。同映画公式サイトより引用。


映画『ビヨンド・ユートピア』のバナー。同映画公式サイトより引用。

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(4)「新型コロナ後初」赤十字国際委員会が北朝鮮に医療支援

 赤十字国際委員会(ICRC)が、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に医療サービス支援として医療機器を納入したと明かしました。

 22日付けの報道資料によると、対象は病院一か所と医療施設二か所の合計三か所です。

病院は「平壌医科大学病院」で「救急部門での治療の提供を支援するために、外傷ベッドを含む設備や資材が寄贈された」とのことです。医療支援は新型コロナにより北朝鮮が国境を封鎖した20年1月以降、はじめてのことです。

 医療施設は平壌市楽浪地区と黄海北道(ファンヘプクト)松林(ソンリム)市にある身体リハビリテーションセンターであるとのことです。寄贈された品目には「義肢を製造するための資材、患者用の特殊な便座、その他の必須のリハビリテーション補助具が含まれていた」そうです。

 支援にかかった金額は明かされていません。

 同委員会の報道官は米政府系メディア『RFA』に対し「物資は11月20日に中国の大連港を出発し、27日に南浦(ナムポ)南に到着した」と述べています。また「医療支援の他にも別の種類の支援も準備している」としました。

 同委員会は北朝鮮に入国できないため、現在は北京の東アジア地域代表団が遠隔でサポートしているとのことです。

医療支援を行ったことを伝えるICRCのサイト。筆者がキャプチャ。


医療支援を行ったことを伝えるICRCのサイト。筆者がキャプチャ。

◎あとがきに代えて:今年は静かに過ぎ去るのか

 今年は夏頃から南北間の緊張の高まりが専門家によってしきりに指摘され、偶発的な衝突の可能性もあり得るとの予想が相次いでいました。今のところ衝突はないためホッとしています。

 数日前にある北朝鮮専門家と忘年会があったのですが、ここでも南北の衝突が話題になりました。「可能性は依然としてある」としながらも、ややトーンダウンしていたのが印象的でした。

 「北側は衝突を望んでいない」というのが根拠でした。在来戦力で劣るため被害の大きさを考えると、前線ではそう積極的には出てこないだろうというものでした。一方で韓国は「ひょっとしたらと思っている」と、あわよくばの可能性に言及しました。

 もはや韓国の選挙では朝鮮半島情勢や南北関係が影響を及ぼさないというのが定説になっていますが、敵対心を露わにする尹政権ではどうなるか分かりません。

 来年4月の総選挙まで心配は続きそうです。

 それでは今年の残る2本のニュースレターをお待ちください。ありがとうございます。(徐台教)

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