ニュースレター号

[54号] 大注目・米韓の新「核指針」、朝中はギクシャク?、統一研究院レポート解析 など

 サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。徐台教です。

 韓国国内そして朝鮮半島情勢は「하루도 조용할 날이 없다(一日たりも静かな日がない)」という韓国語の慣用句がピッタリです。表向き派手な動きはないのですが、南北双方ともに着々と自国の生存のための陣営構築を進めています。

◎尹錫悦大統領がNATO首脳会議に出席

 9日から11日までワシントンで行われたNATO首脳会議。

 韓国も日本、豪州、ニュージーランドと共に、NATOのインド・太平洋4か国パートナー(IP4)の一員として参加しました。尹大統領としては22年6月のスペイン・マドリード、23年7月のリトアニア・ビリニュスに続き3度目となる同会議への出席です。

 過去のニュースレターで触れてきたように、尹大統領とそのブレーンたちは透徹した「陣営観」を持つことで知られています。韓国はまず同盟国である米国と完全に歩調を合わせ、他に日本、そしてNATOの側に立つというもので、外交もこの「価値」に沿った形で行われています。

 こんな陣営観の一端は、出発直前の8日に英通信社『ロイター』と行った書面インタビューにも表れています。

 同通信によると尹大統領は「ロシアが将来的に韓国とどのような関係を築きたいかは『完全に』ロシア次第だ」と述べ、「ロシアと平壌間の新たな軍事協定の成果次第で、ウクライナへの武器支援について韓国は決定するだろう」と明かしたそうです。

ロイターの記事。筆者がキャプチャしたもの。


ロイターの記事。筆者がキャプチャしたもの。

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 この発言は、ロシアに対し韓国か朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)のどちらかを選ぶよう選択を迫るものと受け止められ、韓国の進歩派メディアを中心に批判の声が上がりました。

 一例を挙げると進歩紙『ハンギョレ』では社説を通じ、「韓国の損が大きい」という論理を展開しました。

 今年6月に朝露間で締結された「包括的戦略パートナーシップ条約」を取り上げながら、「ウクライナへの武器供給は韓国が独自に決めることができないグローバルな案件になった」と指摘しました。

 その上で、ウクライナ戦線に韓国が武器を提供したところで戦況を変えることはできないとしつつ「これに比べ、ロシアが北朝鮮に最先端の軍事技術を提供する際に韓国が受ける被害は想像を絶する」としています。

 社説の最後では、11月の米大統領選によりウクライナ情勢もどうなるか分からないとしながら「今は冷静に情勢を見守る時」と結んでいます。

 いつものハンギョレの論調ですが、ウクライナを突き放すドライな印象も受けます。まずは朝鮮半島の平和という、韓国進歩派の認識を反映したものと言えるでしょう。

 なお、先の尹大統領の書面インタビューでの見解に対し8日、ロシア政府は「全く同意しない」としながら「北朝鮮と韓国に双方、域内のすべての国家と良い関係を構築することを支持する」と述べています。

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 NATOの話は後でするとして、もう少し脱線してみましょう。

 尹大統領は出発前の4日に、最強硬派の保守団体『自由総連盟』の設立70周年大会に出席した際の演説で、敵味方をくっきりと分ける強硬な世界観を改めて世間に知らしめています。

 自由総連盟とは1954年に『アジア民族反共連盟』として始まった団体です。

 1987年の民主化を経て現在の名前に変わり、目的も「自由民主主義の守護と発展」とややマイルドになったものの、その由来の通り、韓国の民間団体の中で最も強い保守・反共思想を持っている団体です。

 全国に支部を置き、会員は自称数300万人で(活動しているのはその十分の一程度でしょう)、政府は毎年、国庫から運営日を支援しています。23年には約15億円でした。

 尹大統領は演説で「北朝鮮は世界で最も暗く貧しい、地球上最後の凍土として残っている」という定番のフレーズを述べると同時に、人権問題、核・ミサイル問題、ゴミ風船、ロシアとの条約などに言及し、北朝鮮と対置する価値としての「自由」を強調しました。

 驚くことに、今年から『ジュニア自由総連盟』が発足しています。

 これは10代から30代を対象とするもので、会の高齢化を理由に組織されました。国家予算を投入し若者世代に反共教育を行うもので、義務教育過程で反共教育をしていた40年前に戻ったような錯覚に陥ります。

韓国自由総連盟のHP。


韓国自由総連盟のHP。

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 NATO首脳会談に戻ります。

 尹大統領はワシントンでバイデン大統領や岸田首相など各国首脳と会談しました。11日(現地時間)のバイデン大統領との会談では新たに『米韓の韓半島における核抑止・核作戦指針(以下、指針)』が承認されました。

これは危機および有事の際に米軍の核をどう活用するのかというガイドラインのことで、昨年以来3度にわたって米韓の間で協議を進めてきたNCG(核協議グループ)の一つの「成果」と位置づけられるものです。非常に大切な文書です。

 特徴としては「米韓一体型の拡大抑止」を目指すことを改めて明確にするもので、これに関する具体的な手続き、訓練などを引き続き進めていくとしています。

 韓国国防部によるとその中身は数十ページに達するそうで、全文は公開されていません。

 いくつか明らかになっている部分を挙げると、▲米軍の戦略資産(核を搭載できる兵器)の朝鮮半島への展開を常時展開の水準にまで引き上げる、▲この戦略資産を連携するために米韓間で核・在来兵器統合(CNI)訓練を行うといったものです。そしてこのための図上訓練を毎年行っていくとのことです(以上、聯合ニュース)

 指針の内容はこの日に発表された米韓共同声明でも強調されています。

 声明では他に「両首脳は北朝鮮による韓国に対するいかなる核攻撃も、即刻的・圧倒的・決定的な対応に直面すること」、「韓国に対する米国の拡大抑止公約には核を含むあらゆる範疇の米国の力量により支えられる」点が強調されています。

 これは金正恩氏に対し警告を与えることを主目的にしつつ、韓国保守層を震源に危険水位まで高まりつつある「独自核武装」を抑えるためにも必要な内容と言えるでしょう。

 なお北朝鮮国防省の報道官は13日、朝鮮中央通信に発表した談話を通じ米韓の指針を「挑発的で不安定を招く危険な行動」と位置づけました。さらに「警告を無視する場合に支払う対価は、誰も想像できないものになる」と糾弾する姿勢を明確にしています。

ワシントンで会談した米韓首脳。大統領室提供。


ワシントンで会談した米韓首脳。大統領室提供。

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 なお10日(同)に行われた岸田首相との会談では、経済分野、エネルギー、未来世代の交流といった協力を続けつつ、「厳重な安保状況の中で、韓日・韓米日間の安保協力も持続して強化すること」で合意しています。

 他にも尹大統領はワシントンで各国首脳と会談する中で北朝鮮とロシアの密着を警戒し憂慮する発言を繰り返しています。

 やはり11日にあったNATOとIP4間の首脳会談でも「国連安保理決議にしたがい露・北間の軍事協力を含め、北韓の軍事力増強の助けとなるあらゆる協力を徹底して遮断しなければならない」と述べ、返す刀で安保理常任理事国でありながら、北朝鮮と軍事・経済協力関係を結ぶロシアに対し「責任と義務を果たすべき」と批判しました。

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◎続く北朝鮮とロシアの協力、中国とはギクシャク?

 次は北朝鮮の外交関係です。

 9日、朝鮮中央通信は前日8日に朝鮮人民軍軍事教育者代表団がロシアに向けて出発したことを明かしました。団長は金日成軍事総合大学のキム・グンチョル総長です。

 今回の代表団の訪露は、6月の朝露「包括的戦略パートナーシップ条約」以降、はじめての訪露団ということで注目されています。

 国連安保理の制裁決議により、国連会員国と北朝鮮との間での軍事技術協力は禁止されていますが、もはや堂々と「軍事協力」を掲げて訪露する時代となりました。

 韓国紙には軍事教育という人材分野での協力であることから「朝露も慎重なのでは」という見解もありましたが、制裁が完全に骨抜きになっていることに変わりはありません。

金日成軍事総合大学のキム・グンチョル総長(中央)。朝鮮中央通信より。


金日成軍事総合大学のキム・グンチョル総長(中央)。朝鮮中央通信より。

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 ロシアとは密着が進む北朝鮮ですが、一方の中国とはギクシャクした関係が続いているようです。

 8日、韓国の保守紙『東亜日報』は、中国が北朝鮮に対し「中国内にいる全ての労働者を帰還させるよう」最後通牒を送ったと報じました。

 記事によると、現在中国には約10万人の北朝鮮労働者が滞在していますが、この一括帰国を中国が求めているというものです。

 海外への労働者派遣もまた17年の国連安保理制裁違反であるため、現在のビザが切れた場合に更新せず帰国となりますが、これをめぐり中朝間で見解の相違があると伝えています。

 なお、同紙の情報の出所は韓国政府で、記事の論調は「中朝関係に異常が察知される」です。

 その一例として今年3月に大連で習近平と金正恩の足跡をかたどったプレート(18年の中朝首脳会談を記念するもの)が除去されたことや、5月に韓中日首脳会談の際の共同声明に「朝鮮半島の非核化」が入ったことから、これを非難する談話を北朝鮮が出したこ点などを挙げています。

 同氏ではさらに韓国政府関係者の言として、中国当局が海上で中朝間の密輸品運送を取り締まっている状況を挙げ、「中国は金正恩体制に即時打撃を与えること(措置)だけを選んで行い、北韓の反応を見ている」と伝えています。

 中国が制裁の履行を厳格に行っているという記事は、他にもあります。

 日本メディアの『アジアプレス』は中朝間の密輸に関わる人物へのインタビューを通じ、制裁を厳格化する中国と、なし崩しの密輸を防ぎ貿易を国家管理の下に置きたい北朝鮮という双方の姿勢を詳しく伝えています。

 また、『聯合ニュース』では6日の中国特派員による記事を通じ、6月の朝露首脳会談以降、中国の態度に変化があるという視線を伝えています。

 特に「是非曲直」という言葉が登場した点に注目しています。「是非曲直」とは「事の良し悪し」という意味で外交における論評に登場する言葉だそうです。

 中国は朝露首脳会談直後の6月19日、「中国は一貫して事案全体の是非曲直に基づき、(朝鮮半島問題で)自身の立場を決定し、自己の方式で継続して半島の事務において建設的な役割をしていく」と述べています。

 記事では中国の大学で教授を務める韓国人専門家を引用し、この表現を「中国は朝露が合意をしたことに決して同意しない点を明確にした」と読み解いています。

 さらにこうしたロシア(旧ソ連)との関係が中朝関係に及ぼす影響について言及しながら、朝鮮半島情勢の管理を望む中国の苦心に注目しています。

 『聯合ニュース』では他の記事を通じても外交部や国家情報院を引用し、中朝関係の変化について触れています。

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 一方、中国外交部の報道官は9日、北朝鮮労働者の送還について否定しながら、上述してきたような韓国の報道について「実態のない憶測であり宣伝」であると非難しています。

 中国が北朝鮮と一定の距離を置こうとしているという見解については、過去のニュースレターでも触れてきました。この部分が現在の東アジア外交における注目ポイントであることは間違いないでしょう。

 なお、次項で扱う『統一研究院』のレポートでは、こんな中国の複雑な立場を「戦略的なジレンマ」と表現しています。

 レポートは今年は中朝修交75周年にもかかわらず、北朝鮮がロシアに傾いている様子を「破格なもの」と評しながらも、北朝鮮は中国を離れることはできないと見立てています。

 その理由として貿易額の9割を中国が占めている点を挙げています。北朝鮮の狙いはあくまで、同盟国間の協力体制の構築にあるというものです。

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◎統一研究院のレポート

 11日、韓国の国策シンクタンク『統一研究院』が「2024年上半期、韓半島の情勢評価と下半期の展望」というレポートを出しました。文字通り今年前半の朝鮮半島情勢を振り返るものです。

 書いたのは統一政策研究室長という要職にある人物です。かなりの程度、韓国政府の見方と同じと考えてよいもので、必ず目を通しておくべき資料です。以下、要約整理します。

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 まずは上半期の評価から。朝鮮半島情勢は以下の3つ特徴があるとします。

・構造:北朝鮮の核兵器をめぐる膠着局面が続いている。これにより新冷戦的な秩序が固まり、安全保障のジレンマが深まることと不確実性が増加している。

・外交安保:朝露軍事協力の強化。これにより朝露軍事協力が独立変数として登場し、中国の戦略的なジレンマが浮上した。

・南北関係:北朝鮮による攻勢的な対南関係への転換。これにより北朝鮮の戦略的な脆弱性が浮き彫りになり、北朝鮮に対する攻勢的な戦略を推進する機会に。

 暗号のような記述ですよね(笑)。レポートでは朝鮮半島は今、上記三つの特徴が重なっている状況と分析しています。もう少し紐解いてみましょう。

 「構造」は、北朝鮮の非核化に向けた交渉(対話)が何一つ起きず、陣営の対立が深まる状況を示すものです。北朝鮮の核・ミサイル能力は時間が経つ毎に高まり、これに備えるために米韓もまた抑止力を強化する図式です。対立する双方が軍備を高める「安全保障のジレンマ」を地でいく構図です。

 「外交安保」ではロシアと北朝鮮の関係が、全体の朝鮮半島情勢から独立した「それ自体として進むもの」として登場した点を指摘するものです。「中国の戦略的なジレンマ」というのは、本ニュースレターでも触れたように、朝露が接近を強める中、中国としては北朝鮮に対し一方的に協力することを避けざるを得ない点を示すものです。

 最後の「南北関係」は、北朝鮮が南北の同族性・同質性を否定した背景には、韓国を遮断してこそ生き残ることができると判断した北朝鮮の「弱さ」があるという尹政権の視点と重なるものです。この弱さが韓国にとっては逆にチャンスになるという視点です。

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 レポートではまた、北朝鮮が現在置かれた状況を「5重苦」と評します。新型コロナが流行していた20年から22年、23年にかけて北朝鮮を、コロナ・経済制裁・自然災害の「3重苦」と表現することが流行しましたが、それよりも悪化したことになります。

 5重苦は以下のような内容です。

(1)能力:核を高度化する技術を自力で確保することに失敗。これによりロシアに対する依存が深まり、北朝鮮の核能力に対する諸外国からの信頼(評価)が低下した。

(2)戦略:南北関係における主導権の喪失。反民族・反統一・反平和路線を採択し、韓国の攻勢のきっかけを作った。

(3)外交安保:韓米日の安保協力が強まった。現状を打破する戦略が失敗に終わり、中国の戦略的なジレンマが浮上。

(4)経済:北朝鮮への経済制裁が継続中。制裁の効果は累積し、無理な国内経済政策に依存。

(5)政治:外部の両方の流入。韓流など反体制情報の流入。対英の脆弱性を露出した形。

 どうでしょうか。

 ややこじつけのような気もしますが、韓国政府ではこう判断しているということです。

 レポートでは北朝鮮の戦略について「こんな『5重苦』を克服し『金正恩の時代と国』を作ろうとするもの」とまとめています。

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 一方、24年の上半期において、北朝鮮は13度のミサイル発射、水中ドローンと偵察衛星・地対空ミサイルなど5度の在来兵器実験、さらに7度にわたり2400のゴミ風船を韓国に飛ばし、GPSを攪乱させるといった「複合的な挑発」を行ってきた点を指摘します。

 そしてこの背景について、▲対南戦略の転換が虚言でないことをアピール、▲5重苦に苦しむ中で北朝鮮住民の韓国に対する敵愾心を煽り内部の不満を南側に向ける、▲南北関係の主導権確保、▲尹政権の北朝鮮への不満を韓国内で煽る、といった点があるとします。

 レポートではここで重要なポイントを挙げています。

それは、北朝鮮がこうした挑発に「効果がある」と認識する場合、「朝鮮半島を紛争化する」という間違った判断をくだす可能性があるというものです。

 この場合、朝鮮半島は「北朝鮮の間違った判断→挑発情勢の深まり→紛争の慢性化」という悪循環が固定化するおそれがあり、韓国政府には、よりきめ細やかな対応を行う負担が生ずるとします。

 そしてこの点こそが、上半期の北朝鮮の行動が残した課題としていますが、非常に的を射た指摘と言えます。

 私も以前「紛争の常態化を防げ」という記事を書いたことがありますが、北朝鮮の狙いを避けつつ、全体の危険性を管理するような態度や政策が尹政権に求められています。

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 長くなってきたので、下半期の展望に移ります。

 レポートでは下半期も上半期と同様に「北朝鮮による攻撃と韓国の防御」という構造になると見通しています。

 そして朝鮮半島情勢に影響を与える五つの要素を挙げています。

 一つ目は朝露の条約がどこまで履行されるのかです。短期的には朝露の結びつきは強まるとします。ロシアはウクライナ戦争で北朝鮮の支援が必要で、北朝鮮は自力で核の高度化が難しいためロシアを頼るというものです。ロシアが対価としてすぐに北朝鮮に軍事技術協力をしないとしても、その代わりに別の協力や国連制裁の無力化などを行う可能性が高いため、朝露の結びつきが朝鮮半島にもたらす影響は絶大であるとしています。

 二つ目は中国の動きです。本号で何度も触れてきたように、中国が北朝鮮を牽制するのかどうかです。

 三つ目は北朝鮮の軍事的挑発です。レポートは「下半期に北朝鮮は南北の接境地域や西海(黄海)島嶼地域での軍事的挑発の機会を必ずうかがう」と下記、南北間の軍事的な衝突可能性を非常に高いものと見ています。

 四つ目は11月の米大統領選です。当選者によっては(トランプを指すものでしょう)、米朝の間で核軍縮交渉が進み、戦術核という韓国への脅威が残されたまま「米本土への核脅威の除去―在韓米軍撤収―経済制裁解除」という取引が行われるという“最悪のシナリオ”も言及されています。

 最後に、7度目の核実験について。17年9月に6度目の核実験が行われて以降、「今ほど適した時期はない」と評し、その可能性に注目しています。ロシアの後ろ盾がその最も大きな理由です。

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 いよいよレポートも終わりです。

 見てきたような情勢予想の中で、下半期に韓国はどんな対応を取るべきか。これについては「積極的、主導的、能動的な対応」を呼びかけています。

 この部分で一つだけ注視すべき意見は「力による平和は有効だ」というものです。

 尹大統領が大好きなフレーズですが、力と力の対決を北朝鮮に押しつけることにより、北朝鮮に経済的な圧力をかけることができ、結果として核開発を進める環境にもダメージを与えることができるという論理です。

 北朝鮮よりもお金を使い、北朝鮮が使う費用を「埋没費用」にしてしまおうというもので「北朝鮮を変化させる有用な方策」と結論付けています。

 以上です。

 なんとなく下半期の朝鮮半島が見えてくるような気がしますよね。

 トランプ当選を防ぐことや、中国の出方など、韓国にも一定程度「賭け」の部分が存在する反面、軍事力の強化に励むことは確定的です。まったく気の抜けない下半期となりそうです。大丈夫かな。

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◎「北朝鮮で中学生30人が公開処刑」報道に注目

 10日、韓国の『TV朝鮮』が衝撃的なニュースを報じました。北朝鮮で先週、中学生30人あまりを公開処刑したというものです。この中学生たちは「風船から拾ったUSBメモリに入っていたドラマを観て摘発された」そうです。

 記事によると、この内容のでどころは「政府当局の関係者」、つまり韓国政府です。記事ではさらに、先月には同じ理由でやはり青少年30人あまりに死刑と無期懲役が宣告されたとしています。

 ニュースの内容はこれだけですが、三つの点で注目に値します。

 まずは、ニュースの発信元が韓国政府である点です。

 11日、統一部の非公開会見でこの件に対する質問が出たそうですが、分からないという反応でした。それもそのはずで、こういう情報は情報機関である国家情報院から来ているのでしょう。まだ私は確認できていません。

 次に、ニュースの意図です。

 韓国政府がこの一報を最も保守寄りで、最も政権に近い『朝鮮日報』系列の局に流した理由はどこにあるのでしょうか。

 北朝鮮の非人道性を強調したいことは分かるのですが、今年4月以降いくつかの団体が北朝鮮に飛ばした「風船」が言及されている点が気になります。周知のように韓国政府は北朝鮮への情報流入を積極的に止めていません。

 こんな韓国政府の態度が北朝鮮で惨劇を呼んでいると受け止める層も韓国にはたくさん存在するため、政府にとっては諸刃の剣となるでしょう。

 もちろん最終的に北朝鮮の非人道性が強調されれば目的は達したことになるので、そう無理な判断でもありません。

 最後に、このニュースは本当なのかという点です。

 普段から北朝鮮に関する報道や文章にたくさん接する私にとっても、30人の中学生を公開処刑するというのは明らかに一線を超えています。

 全体主義で国民の自由を最大限に抑圧する北朝鮮政府ですが、いくらなんでも家族や地域社会の反発を最大限に高めるであろう暴挙に出るはずがないという感覚があります。暴動が起きてもおかしくないでしょう。

 妙な言い方なのは自覚しています。一般的な感覚では遙か以前から金氏一族による統治は一線を超えているのですから。

 他方で今回の一報は、韓国からのビラに対する当てつけとして北朝鮮が流す逆宣伝の可能性もあります。

 しかしこれは「中学生30人公開処刑」が北朝鮮国内に再流入(逆流入)する可能性がある中、考えづらい手です。

 いずれにせよ、真偽が明らかになるには時間がかかるでしょう。

 だが現実である場合、金正恩政権にとって一つのターニングポイントになる可能性もあり得るので、注視が必要です。

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◎あとがきに代えて

 昨日金曜日(12日)に、韓国の聖公会大・東アジア研究所が主催するシンポジウム『徐京植の生と思想』に討論者として参加してきました。昨年12月急逝された徐京植さんを偲ぶ学術会議で「在日朝鮮人と韓国社会」という副題がついています。

 錚々たる発表者の方達の間に混ざって、研究者でない私がどんな話をすべきかかなり悩みましたが「日本社会に向けて朝鮮半島に関する話をする」という立場からその間の悩みを話してきました。

シンポジウムの様子です。


シンポジウムの様子です。

 準備をしながらいくつかの徐京植さんの著作を読み直す中で、本当に丁寧に日本社会に対し、朝鮮半島や在日朝鮮人に関する話をされてきたのだなと改めて思いました。その労苦に心より敬意を覚えるものです。

 会場には韓国在住のニュースレターの読者の方が何人も来てくださり、とても嬉しかったです。

 徐京植さんと最後にゆっくりお話ししたのは19年12月でした。

 当時は南北関係に関する話をした記憶があります。正直、もっと早く私が日本で本を出せていれば、それをもって徐京植さんとより意味のある対話ができたはずです。

 これを考えると頭を抱え、かきむしりたくなります。なかなかうまくいかないものですね。

 それではまた。いつもありがとうございます。(徐台教)

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