ニュースレター号

[74号] 日韓60周年と朝露1周年、韓国ならではの‘厳しさ’

サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。目まぐるしく動くというか…悪化する国際情勢の中、なんとなく落ち着かない日々を過ごされているのではないでしょうか。

私も同様でして、いま何をすべきかを悩んでいます。そうとはいえ、大層なことはできないので今は発信力を高め、よい記事や本を書くことに注力します。しかしまたしても山積みの仕事を前に金曜発行が守れませんでした。それでも続けていきます。

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●日韓国交正常化60周年

今日6月22日は、日韓基本条約の署名から60周年となる日です。これを受け先週は日韓の間で大きなイベントがありました。16日にはソウルで在韓日本大使館主催の記念レセプションが行われ、19日には東京で在日韓国大使館主催の同様の行事がありました。

まず、16日の行事から。こちらには私も参加しました。ソウル明洞(ミョンドン)にあるロッテホテルのいくつかの空間を借り上げた立派なレセプションで、1000人ほどが参加したと大使館側は述べているのも頷ける人出でした。

この日に合わせ、日本からは韓国メディアが「石破首相の最側近」と報じた長島昭久補佐官(議員)が訪韓し、魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長など李在明新政権の要人と会談を持ちました。会場にも訪れ、祝辞を述べています。

一連のメッセージの中では、「(1)短期的な利害得失にとらわれず両国の長期的戦略の利益を忘れないこと、(2)政府の談話をはじめとする過去の合意を最大限尊重し、決して後退しないこと、(3)両国国民に対して勇気を持って説得していくこと」という歴史問題を管理するための原則(引用はハンギョレ)がありました。韓国メディアがこぞって引用しました。

李在明大統領も映像メッセージを寄せました。直接参加も噂されていましたが、カナダでのG7首脳会談と重なりました。「その間の成果と発展を基に、これからも韓日の間で安定的で未来志向的な発展が成し遂げられるよう望む」という非常に前向きなものでした。

李在明大統領のメッセージ。徐台教撮影。


李在明大統領のメッセージ。徐台教撮影。

会場には金富謙(キム・ブギョム、右端)元総理など著名政治家の姿も。徐台教撮影。


会場には金富謙(キム・ブギョム、右端)元総理など著名政治家の姿も。徐台教撮影。

多彩な催しもあった。これは合唱団のリハーサルの様子。


多彩な催しもあった。これは合唱団のリハーサルの様子。

日本酒やマンガ、ウルトラマンや生け花のブースも設置されていた。徐台教撮影。


日本酒やマンガ、ウルトラマンや生け花のブースも設置されていた。徐台教撮影。

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19日の東京でのレセプションは、韓国のそれにも増してスケールの大きなものでした。石破総理をはじめ、岸田文雄、菅義偉といった歴代首相が参加しました。

この日の石破首相のメッセージの中に興味深い内容がありました。

「日本と韓国は、これまで積み重ねてきた協力に加え、出生率の低下、人口減少、地方創生といった多くの共通課題に直面しております。お互いの知見を共有することで、協力できる分野、協力しなければならない分野は数多くあります」

この共通する課題が多いというのは実際にそうで、現場レベルでは政府も民間も互いに視察を頻繁に行っており、解決策を共に探っている現状があります。『コリア・フォーカス』の前身であった『ニュースタンス』はこの立場から、日韓共通のニュースとクラウドファンディングを両立させようとする試みでしたが様々な理由から失敗しました。

東京で行われたレセプションで発言する石破首相。首相官邸HPより引用。


東京で行われたレセプションで発言する石破首相。首相官邸HPより引用。

さらにこれに先立つ17日(現地時間)にはカナダで日韓首脳会談(韓国では韓日首脳会談ですね)が行われました。時間は約30分。李在明さんは「韓日が補完的な関係にある」ことを指摘しながら「未来志向」を改めて強調しました。

石破さんは「(16日の)レセプションで温かいメッセージをいただいた」としながら、やはり「厳重な国際秩序」を引き合いに協力の重要性を訴えました。

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ここで石破さんは「(日韓の)共助が地域と世界のためになるよう」と述べましたが、この「世界のため」という点が日韓の差として存在します。

韓国の歴代政権の外交はこれまで、米国の傘の下で自国中心的に行ってきました。尹錫悦政権では日本を真似て「アジア太平洋戦略」を掲げ「開かれた自由な国際秩序」への貢献をするとしました。

李在明政権でもこれは受け継がれるとされていますが、韓国ではいま、一つの議論が存在します。李在明大統領が24日〜25日(現地時間)にオランダで開催予定のNATO首脳会談に参加すべきか否かというものです。

韓国メディアの報道では出席という方向で固まっていましたが、21日晩(現地時間、日本時間22日午前)に米国がイラン核施設への爆撃を起こったことで、再考を促す声がSNSを中心に高まっています。

行くべきという論拠は、先日のG7で早期帰国したため会えなかったトランプ米大統領に会う必要があるというものです。韓国はやはり米国と通商・関税問題を抱えており、尹錫悦政権時代に米国との間で定めた「デッドライン」は7月8日に迫っています。

反対の論拠は、韓国側の準備が整っていない中で急いで会ってどうするのかというものです。中国やロシアとの外交関係も維持すべきという主張がこれを支えます。韓国の国益を最大化させる場合に、ある程度は「二股外交」が必要だというものです。

なお、このニュースレターを書いている22日晩になって、韓国の大統領室は今回のNATO首脳会議に李在明大統領が出席しないと明かしました。「様々な国内の懸案と中東情勢による不確実性などを総合的に考慮した」としました。高官(特使)が代理出席する見通しです。

まだ発足から20日も経っていない中、難しい舵取りを迫られていますね。私は「どっちが良かった」と簡単に決断を下せません。判断に悩みます。

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●朝露「包括的戦略パートナーシップ条約」一周年

いったん韓国の話はここまでにして、視点を北側に移しましょう。こちらは「一周年」でした。

6月19日、平壌で朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)外務省と、在朝ロシア大使館が共同で主催する宴会が開催されたと朝鮮中央通信は20日付けで伝えました。

宴会には北朝鮮の崔善姫(チェ・ソニ)外相をはじめ、「金正恩氏の最側近」と韓国メディアが報じる趙甬元(チョ・ヨンウォン)朝鮮労働党書記、努光鉄(ノ・グァンチョル)国防相などが、ロシア側はマツェゴラ大使など大使館員たちが参加したそうです。

一年前のこの日、訪朝したプーチン大統領と金正恩委員長の間で「包括的戦略パートナーシップ条約」が締結されました。これに基づき北朝鮮はロシアに派兵するなど、朝露は「軍事同盟」となりました。(当時の記事を添付しておきます)

19日に平壌で開かれた宴会。朝鮮中央通信より。


19日に平壌で開かれた宴会。朝鮮中央通信より。

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また、今月4日と17日にはセルゲイ・ショイグ国家安保会議書記が訪朝し、金正恩氏と面談しています。プーチン大統領の特使です。

この席で金正恩氏はプーチン氏に対し「同志的な挨拶」を伝えると共に、「国家主権と領土完整、国際的な正義を守護しようとするロシア連邦の政策を変わらず無条件的に支持し、今後も朝露国家間条約の条項を誠実に履行していく朝鮮民主主義人民共和国の確固不動の選択と意志を再度固く表明した」としています。

さらにこの席で金正恩氏がウクライナと隣接するロシア領クルスク復旧のため、工兵1000人と軍事建設に従事する労働者5000人の総勢6000人を派遣することを決めたと、ショイグ氏が明かしました。

また、6月13日には平壌とモスクワを結ぶ直通列車も5年ぶりに再開され、第一便が平壌を出発しました。韓国メディアは飛行機便の復活も進めていると報じています。

ショイグ氏(左)と金正恩氏。朝鮮中央通信より。


ショイグ氏(左)と金正恩氏。朝鮮中央通信より。

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朝露の結びつきの特徴は軍事面での密着度が高い点です。軍需産業の結びつきについては先月、国家情報院傘下の「国家安保戦略研究院」からレポートが出ました。

結論としては、北朝鮮への対応が急がれるというものです。

金正恩氏は2月に金日成政治大学を訪問した席で「核武力を含むあらゆる領域の軍事技術装備の高度化の実現」に言及していますが、北朝鮮はこの最高指導者の強い意志の下、戦車や軍艦(駆逐艦)、ドローン、AIなど広範囲にわたって戦力の強化に勤しんでいるという指摘でした。特に在来兵器における劣勢を電子戦やAI・無人機の活用で挽回しようとしているとしました。

他にやはり国策シンクタンク「統一研究院」の最新レポートも参照すると、北朝鮮は昨年来、ロシアに対し122ミリ、152ミリ砲弾900万発、対戦車ミサイル、KN-23短距離弾道ミサイル、対戦車ロケット、多連装ロケットを支援しているとあります。

その対価として受けるであろうロシアからの各種技術支援が「北朝鮮の特定の軍事技術分野に予想できない跳躍と戦略・戦術パラダイムの転換」をもたらし、これが韓国の「安保戦略と軍事的な備えに根本的な再検討を必要にさせる」可能性があるというものです。

北朝鮮による安全保障上の危険は極度に韓国を脅かしている、と国家安保戦略研究院のレポートは結論付けています。

こうした指摘を裏付けするかのように19日には、北朝鮮がモスクワ東部800キロにあるドローン工場に、労働者2万5000人を派遣する計画を検討しているとNHKが伝えています。

「統一研究院」のレポートでは、北朝鮮の最も重要な安全保障上の目標として「朝鮮半島で北朝鮮に有利な力の均衡を再定立させようとするもの」と指摘しています。そのためにロシアへの密着や兵器開発が行われているとします。韓国にとっては冷戦終結後30年後にやってきた、南北関係における最大の危機といえるでしょう。

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●李在明「光復節」メッセージが重要に

先週、とある南北関係に関連する法律(統一法と呼びます)に詳しい大学教授へのインタビューをしてきました。書籍に追加する内容であるため、ここでその内容をすべて書くことはできないのですが、李在明大統領の「光復節」の演説が大切になるという点で意気投合しました。

韓国の大統領は年間何度か演説をします。中でも8月15日の光復節の演説は最も重きを置かれるものでして、この時に大統領は国内的・国際的な国家ビジョンを明かすことになります。

今年は尹錫悦の非常戒厳(昨年12月)から弾劾、そして大統領選から新政権発足という慌ただしい日程の中で迎えるものとあって「社会の正常化」、「民主主義の復元」といった形の内容になると思われます。

しかし、韓国のこれからを内外に明かす上で、「敵対的な二国家制」を打ち出す北朝鮮に対するメッセージと、国際社会でどのような役割を果たしていくのかの二点が注目されます。

前出の教授は前者について「韓国はこれから南北関係にどう向き合うのか正直に語るべきだ」と強調しました。過去、盧泰愚(ノ・テウ)大統領が88年に行った『7.7宣言』のように、一方的でもよいので北朝鮮と平和的な関係を築くという意志を見せるべきと力を込めていました。

後者、つまり国際関係においては、日本との距離感が大切になるでしょう。李在明政権がいかに日本に対して歴史問題で譲らない原則を維持しながら、国際問題に協調して対応するメッセージを出せるか。この塩梅が腕の見せどころとなります。

これに関し改めて日韓首脳の発言を見直すと、李在明大統領は前出の16日のレセプションに寄せたメッセージで「激変する国際情勢の中で、両国は共に対応する方案を模索しなければならない重要なパートナー」と述べています。

また石破首相も19日に「日韓を取り巻く戦略環境が厳しさを増す中であるからこそ、手と手を携え、より良い未来に向かって、共に新たな一歩を踏み出してまいりましょう」と述べました。

このように現状では日韓のパートナーシップは良好に思えます。一方で韓国は北朝鮮との関係改善も進めなければなりません。難しい局面ですが、一つ一つこなしていく他にありません。

韓国ならではの厳しさを日本を含む国際社会にどう理解してもらえるかが大事になるでしょう。そうした意味では、NATOに出席した方が良かったと思います。

今週25日には、朝鮮戦争勃発から75周年を迎えます。そこでも李在明大統領のメッセージがあるでしょう。

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◎あとがきに代えて

今日はいったんここまでです。南北関係については6月25日に合わせ記事を一つ準備しています。また、前号でお知らせした張惠英(チャン・ヘヨン)前議員の他に、新たな筆陣を紹介する予定でしたが、もう数日お待ちください。北朝鮮出身の人物にお願いしています。

報道の役割が大事な局面です。幅広くやりながら、ある局面では深くやる形にできるよう、態勢を整えています。私自身は非常にもどかしい局面ですが、あと二週間くらいでややこしい仕事はすべて片付くはずです。なんとかトンネルの先を見据えて一歩一歩準備を重ねています。それではよい一週間をお過ごしください。また次号でご挨拶いたします。(徐台教)

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