サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。二日遅れとなってしまいましたが(遅れた理由はあとがきで)、76号をお送りします。今週は金正恩氏の訪中というビッグイベントがありましたね。これを韓国はどう受け止めたのかを中心にお送りいたします。

◎韓国と真逆の方向に向かう北朝鮮

9月3日の「抗日戦勝80年」行事に合わせ訪中した、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の金正恩氏。閲兵式を天安門の楼上から、習近平の隣に立って観覧しました。習近平、プーチンと首脳会談を行う姿も発信され、存在感を示しました。

まず、簡単にそれぞれの会談での金正恩氏の発言を見ましょう。朝鮮中央通信のテキストを参考にします。

プーチンに対しては「今後も国家の主権と領土完整、安全利益を守るためにロシア政府と軍隊、人民の闘争を全的に支持し、それを兄弟的な義務として受け止め、朝露国家間条約を忠実に履行する」と明かしています。

プーチンもこれに先立ち「露朝の関係は特殊な信頼関係、友好関係、同盟関係」とし、「クルスク解放作戦で発揮した朝鮮の軍人たちの勇敢さと英雄性を高く評価し、朝鮮の軍隊が捧げた犠牲を永遠に忘れない」と述べました。

9月3日、北京で会談するプーチンと金正恩。朝鮮中央通信より引用。

9月3日、北京で会談するプーチンと金正恩。朝鮮中央通信より引用。


習近平に対しては、「国際情勢がどう変わろうとも、朝中の間の親善の感情が変わることはなく、朝中関係を不断に深化・発展させることは朝鮮労働党と朝鮮民主主義人民共和国政府の確固不動の意志」と述べています。

習近平はこれに先立ち「中朝は運命を共にし、互いに助ける立派な隣人であり、立派な友であり、立派な同志である」とし、「中国の党と政府は、伝統的な中朝親善を高度に重視しており、中朝関係を立派に守護し、立派に固め、立派に発展させる用意がある」と述べています。「国際情勢がどう変わろうとも、この立場は変わらない」とも語りました。

両首脳はまた、「国際および地域問題において、戦略的な協調を強化し、共通の利益を守護する」としています。この‘協調を強める’というのは、今回のキーワードの一つでしょう。

新華社通信は金正恩氏が会談で「(朝鮮半島の問題と関連し)国連などの多者間プラットフォームで、継続して調整を強化し、双方の共同の利益と根本利益を守護することを願う」と述べたと伝えています。

9月4日、北京で習近平と会談する金正恩。朝鮮中央通信より引用。

9月4日、北京で習近平と会談する金正恩。朝鮮中央通信より引用。


こうしたロシア、中国の会談の他に、今回の金正恩の訪中の意味は「多者間外交の場へのデビュー」として位置付けることができるでしょう。既に多くのメディアが触れている通りです。金正恩は今後、非核化の要求を完全にはねのけ、「反米勢力」の一角を担う存在になるという意志を示しました。

さらに今回の一連の日程の中で新たな事実が明らかになりました。朝露首脳会談の際に、プーチンが「(金正恩)国務委員長の発起により、朝鮮の軍人たちがクルスク州の解放戦に参戦した」と述べたのです。これまで、ロシア派兵がどんな経緯で始まったのか、特にどちらが先に提案したのかは分からないままでした。その空白の最も大きなピースが埋まったことになります。

金正恩はロシア派兵を通じ、一定の経済的対価を得ると同時に、ロシアという新たなパートナーとの関係を深め、外交に幅を持たせることに成功しました。

そして、中国との関係もしっかりと再建した先に(中国と北朝鮮の間がどれほど離れていたかは、専門家の間でも意見が分かれるところですが)、経済面への投資を増やそうと見通しているのでしょう。今後は「グローバル・サウス」への接近を強めていくのではという見立てもありました。

すべてがうまくいくかは分かりませんが、ある程度の部分までこれは成功しているように見えます。ただ、この「ある程度」が20%なのか、60%なのかが重要で、残念ながらその見極めは簡単ではありません。継続してチェックし続けていく必要があるでしょう。やはり北朝鮮の内部がどうなっているのか、という所への関心が欠かせません。そしてこれは今、世界で最も情報が足りない部分でもあります。難しいですね。

平壌に戻った金正恩。娘の「ジュエ」については四大世襲の話で持ちきりですが、その話はまた別の機会に...。朝鮮中央通信より引用。

平壌に戻った金正恩。娘の「ジュエ」については四大世襲の話で持ちきりですが、その話はまた別の機会に…。朝鮮中央通信より引用。


さらに、今回の金正恩訪中からは、米朝対話の可能性は極めて低いという結論に達する他にありませんでした。


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