文在寅大統領は5月10日、国会で行った略式の就任宣誓式で国民向けの就任の辞を発表した。
以下にその全文を翻訳し掲載する。なお、元になった文章は就任宣誓式の後に、青瓦台のホームページに掲載されたものだ。(翻訳=徐台教)

青瓦台(大統領府)ホームページのトップに掲げられた文在寅大統領の写真。「今日から私は、国民みなの大統領になります。私を支持しなかった国民の一人一人も私の国民、私たちの国民として仕えます。私は恐れることなく約束します。2017年5月10日、この日は真の国民統合が始まった日として歴史に記録されることでしょう」という就任の辞の一節が引用されている。

●国民に捧げる言葉

尊敬し敬愛する国民の皆さん、ありがとうございます。国民の皆さんの偉大な選択に心から深く感謝します。私は今日、大韓民国の第19代大統領として、新しい大韓民国に向けた第一歩を踏み出します。私の両肩は今、国民の皆さんから付与されたとてつもない使命感で重いです。

私の胸は今、一度も経験したことのない国を作るという情熱で燃えています。そして私の頭は今、統合と共存の新しい世の中を開いていく青写真でいっぱいです。

私たちが作っていく新しい大韓民国は、多くの挫折と敗北にも関わらず、私たちの先輩が一貫して追求してきた国です。また、多くの犠牲と献身に耐え、若者たちが心の底から欲していた国です。

そんな大韓民国を作るために私は、歴史と国民の前に、恐れと共に謙虚な心で大韓民国第19代大統領としての責任と使命を果たすことを明かします。韓国の偉大さは国民の偉大さです。そして今回の大統領選挙で、わが国民は新しい歴史を作ってくださいました。

全国各地で満遍なく支持をくださり、新しい大統領を選んでくれました。今日から私は、国民みなの大統領になります。私を支持しなかった国民の一人一人も私の国民、私たちの国民として仕えます。私は恐れることなく約束します。2017年5月10日、この日は真の国民統合が始まった日として歴史に記録されることでしょう。

尊敬し敬愛する国民の皆さん。苦しかった過ぎ去りし日々に、国民たちは「これが国か」と問いました。大統領・文在寅はまさにその質問から新しく始めます。今日から国を国らしく作る大統領になります。旧時代の悪い慣行と果敢に決別します。大統領から新しくなります。

まず、権威的な大統領の文化を清算します。準備が整い次第、今の青瓦台から出て、光化門大統領の時代を開きます。参謀たちと膝を突き合わせ討論します。国民と常に心を通じ合わせる大統領になります。主要な事案は大統領が直接、メディアに伝えます。一日の終わりには市場に寄って、出会う市民と格式のない対話を交わします。時には光化門広場で大討論会を開きます。

大統領の帝王的な権力を最大限分かち合います。権力機関は政治から完全に独立させます。いかなる機関も絶対的な権限を行使できないよう、けん制装置を作ります。低い姿勢ではたらきます。国民と目線を合わせる大統領になります。安全保障の危機も急いで解決します。朝鮮半島の平和のために東奔西走します。必要とあらば、すぐにワシントンに飛んでいきます。北京と東京にも行き、条件が合えば、平壌にも行きます。

朝鮮半島の平和定着のためならば、私ができるすべての事を行います。韓米同盟をより強くしていきます。一方でTHAAD問題の解決のために米国と中国と真摯に交渉していきます。揺るぎない安保は、強い国防力から生まれます。自主国防力を強化するために、努力します。北朝鮮の核問題を解決する土台も造ります。東北アジアの平和構造を定着させ、朝鮮半島の緊張緩和の転機を作り出します。

ともに選挙を戦った候補たちに感謝の言葉とともに、心からの慰労の言葉を伝えます。今回の選挙には勝者も敗者もいません。私たちは新しい韓国を共に率いていくべき同伴者です。これからは、し烈な競争の瞬間を後にし、共に手をつないで前に進んでいかなければなりません。

尊敬する国民の皆さん、過去数か月のあいだ、私たちは比類なき政治的な激変期を過ごしました。政治は混乱していまいたが、国民は偉大でした。現職の大統領の弾劾と拘束を前にしても、国民が大韓民国の未来を拓いてくれました。

わが国民は挫折せず、逆にこれを「転禍為福(禍い転じて福と為す)」の契機として昇華させ、ついに今日の新しい世の中を拓きました。分裂と葛藤の政治も変えていきます。保守、進歩の葛藤は終わらなければなりません。大統領みずから直接対話します。野党は国政運営の同伴者です。対話を定例化し、頻繁に会っていきます。

全国的に満遍なく人事を登用いたします。能力と適材適所を人事の大原則にします。私に対する支持如何とは関係なく、有能な人材を三顧の礼で迎え入れ、仕事を任せます。国の国外で経済が厳しいです。民生も困難です。選挙の過程で約束した通り、何よりもまず雇用に取り組みます。

同時に財閥改革の先頭にも立っていきます。文在寅政府の下では政経癒着という言葉は完全に無くなるでしょう。地域と階層、世代間の葛藤を解消し、非正規雇用の問題も解決の道を探ります。差別の無い世の中を作ります。何度も繰り返します。文在寅と共に民主党の政府において、機会は平等です、過程は公正です、結果は正義の側に寄るでしょう。

尊敬する国民の皆さん、今回の大統領選挙は、前任の大統領の弾劾により行われました。不幸な大統領の歴史が続いています。今回の選挙を契機に、この不幸な歴史は終わらなければなりません。

私は大韓民国大統領の新しい模範となります。国民と歴史が評価する成功した大統領になるために最善を尽くします。そうして支持と声援に応えます。清廉な大統領になります。手ぶらで就任し、手ぶらで退任する大統領になります。後日、故郷に戻り、平凡な市民となり隣人と情を分けあうことのできる大統領になります。国民の皆さんの自慢として残ります。

約束を守る正直な大統領になります。選挙の過程で私がした約束に丹念に取り組んでいきます。大統領みずからが信頼される政治の手本を見せてこそ、真の政治発展が可能でしょう。

不可能なことをすると大言壮語しません。失敗したことは失敗したとお話します。嘘で不利な世論をごまかすことはしません。公正な大統領になります。特権と反則がない世の中を作ります。常識通りにする人が利益を得られる世の中を作ります。隣人の痛みを無視することはありません。疎外される国民が無いよう、心を砕いて常日ごろから確認していきます。

国民の悲しみの涙を拭く大統領になります。心を通わせる大統領になります。低い人間、謙遜な権力となって、もっとも強い国を作っていきます。君臨し統治する大統領ではない、対話し心を通わせる大統領になります。光化門時代の大統領になり、国民と近い所にいるようにします。温かい大統領、友達のような大統領として残ります。

敬愛し尊敬する国民の皆さん。2017年5月10日の今日、大韓民国が再び始まります。国を国らしく作る大きな歴史が始まります。この道を共に歩んでください。私の身命を賭して仕事をします。

第19代大統領 文在寅