韓国統一部の新長官に就任した金暎浩(キム・ヨンホ)の写真。
7月28日、統一部長官に就任した金暎浩(キム・ヨンホ)氏。統一部提供。

7月28日、韓国統一部の新長官に金暎浩(キム・ヨンホ、64)氏が就任した。同氏はソウル大学法学部を卒業後、社会科学を専門にする出版社を運営しその過程で国家保安法に触れ、逮捕経験もある。その後、米バージニア大学で政治学博士号を取得後、99年から現在まで誠信女子大学政治経済学部教授を務めている。

また、李明博政権下では青瓦台(大統領府)で統一秘書官や外交部の直命人権大使を務めた。

統一部や韓国各メディアによると金暎浩新長官はこの日、ソウル市内の政府中央庁舎別館で行われた就任式で、南北関係が膠着している現状を取り上げ「こんな時こそひたすら『価値と原則』に立脚し、統一・対北政策を一貫して推し進めていくことが韓半島の問題をもっとも正しく解きほぐし、統一をたぐり寄せる近道だと考える」と明かした。

金長官はさらに「自由、民主、人権、法治、平和などの人類に普遍的な価値を土台に『自由民主的な平和統一』の要件を作っていくことが重要だ」と強調した。

その上で「このためには南北関係の一次的な浮沈に過度にこだわらず、長い呼吸を持って明確な原則の下に政策を進めることが大事であり、これからはただならぬ覚悟でこうした『価値と原則』に基づき統一業務を省察し、新たに整備していく必要があるだろう」と述べた。

金長官はまた、統一部が今後、力を集中させる3つの核心課題として、▲北韓の核開発を阻止し放棄させること、▲北韓政権による人権侵害を改善すること、▲確固とした価値とビジョンの下に統一準備を行うことを発表した。

実は金暎浩長官は就任前から、右派YouTubeチャンネルを運営し、北朝鮮の体制に批判的な主張を繰り返していたことから、野党・共に民主党などからの「強硬派である」との強い非難に直面していた。統一部の本来の業務である南北対話・南北交流・人道支援といった事業に合わないということだ。

また著書で「北韓の分離」を提唱したことで、韓国政府が一貫して掲げる統一方案である『民族共同体統一方案』と見解が異なり、統一部長官にふさわしくないとの批判もあった。

こうした声を意識してか、就任式で金長官は22年8月に尹錫悦大統領が提案した『大胆な構想』の準備を統一部の職員たちに呼びかけた。

同構想は「北朝鮮の非核化の段階に応じて、段階的に経済的なインセンティブを提供する」というもので、第一段階は、北朝鮮が非核化対話に乗り出すだけで北朝鮮の地下資源と引き換えに食糧・衛生・保健分野での支援を提供するとしている。

また、北朝鮮の人権問題については「普遍的な価値を実現する問題だけでなく、自由民主的な統一に備える実質的な統一準備でもある」と述べた。