韓国政府は毎年6月6日を顕忠日と定めている。国のために殉じた人々(殉国先烈)と、戦没した将兵(護国英霊)を追悼する日だ。

 具体的には、日本による植民地統治時代に抗日闘争や独立運動を行った人物に始まり、朝鮮戦争(1950〜53年)やベトナム戦争(派兵期間64年〜73年)、延坪海戦(99年、02年)や哨戒艦「天安」撃沈事件(10年)の戦死者、さらに殉職した消防官や警察官などが含まれる。

 こんな国家への功を認められた人々は、ソウルと大田(テジョン)市内にある国立顕忠院に埋葬(安葬)される。顕忠日にはソウル顕忠院で大規模な記念行事が行われる一方、遺された家族・同僚など大勢が同所を訪れ、故人を偲ぶ。

 本稿では今年の顕忠日に尹錫悦大統領が読み上げた追念辞を取り上げ全訳する。今回の内容は、北朝鮮に対し明確な対決姿勢を表明した点に特徴があった。翻訳は徐台教。

6月6日、ソウル顕忠院で演説する尹錫悦大統領。大統領室提供。

第69回顕忠日 追念辞

尊敬する国民の皆さん、
国家有功者と報勲家族の皆さん、

今日は69回目の顕忠日です。

私たちは自由大韓民国を守ってきた
崇高な犠牲を記憶し追悼するため、
今日、この場を共にしています。

国権を取り戻すために
命を捧げた殉国先烈たち、

共産勢力の侵略に壮烈に立ち向かい
自由民主主義を守ってくださった護国英霊たち、

全身を投げうち国民の生命と安全を守った
制服を着た英雄たち、

そして大韓民国の自由を守るために
共に戦ってくださった国連軍の参戦勇士たち、

こうしたすべての英雄たちに頭を下げて敬意を表し、
悲しみを抱いて生きてこられた遺家族の皆さんに
深くお見舞い申し上げます。

国民の皆さん、

私は去る3日から昨日まで
アフリカ48か国の修交国とともに、
韓国・アフリカ首脳会議を開きました。

この度参席した国々の中には
6.25(朝鮮戦争)当時、私たちを助けた
様々な国が含まれています。

アフリカの首脳と代表たちは、
大韓民国の今日に驚嘆し
私たちの経験を学びたがっていました。
このように、私たちの過去の70年は
それ自体が奇跡の歴史です。

そしてその土台には、
偉大な英雄たちの献身がありました。

殉国先烈と護国英霊たちが見せてくれた
国家と国民のための崇高な犠牲は
世代を経ながら続いています。

去る1月31日、慶尚北道(キョンサンプクト)聞慶(ムンギョン)で
国民の生命を救うために
炎の中に飛び込んだ
キム・スグァン消防長とパク・スフン消防校は
ついに戻って来られませんでした。

3月には私たちの海を守っていた
ハン・ジノ海軍元士が海上訓練中に殉職する
痛ましい出来事がありました。

あらためて故人の冥福を祈り、
今も堅固に大韓民国を守っている
すべての英雄たちに深く感謝します。

私と政府は、国家と国民のために
自分のすべてを犠牲にした英雄たちに
最高の礼遇で報います。

報勲と医療の革新を通じて
国家有功者の医療サービスを改善し
リハビリ支援を拡大し、

任務中に負傷した方々が
日常を取り戻せるよう
細心の注意を払ってお手伝いします。

残念にも殉職した英雄たちの遺族は、どんなことがあっても
国が最後まで責任を負います。

英雄の子供たちが自負心と誇りを持って成長できるよう、
国が暖かい家族になります。

昨年始まった「ヒーローズファミリー」プログラムをより拡張し、
一人一人の子供を私の子供のように
念入りに世話をします。

国民の皆さん、

今、大韓民国は世界で
最も明るい国になりましたが、
休戦ライン(南北軍事境界線)の北側は世界で最も暗い暗黒の地になりました。

ここからわずか50kmほど離れた場所に、
自由と人権を無残に剥奪され
飢えの中に生きていく同胞たちがいます。

北朝鮮の政権は歴史の進歩を拒否し
退行の道を歩み、
私たちの生活を脅かしています。

西海(黄海)上の砲射撃とミサイル発射に続き、
最近では普通の国なら
恥ずかしがる他にない、
卑劣な方式の挑発まで敢行しました。

政府はこのような北朝鮮の脅しを
決して座視しないでしょう。

鉄壁のような備えの態勢を維持し、
断固かつ圧倒的に
挑発に対応していきます。

さらに強くなった韓米同盟と、
国際社会との協力を土台に、
国民の自由と安全をしっかり守ります。

尊敬する国民の皆さん、

平和は屈従ではなく
力をもって守ることです。

私たちの力がより強くなってこそ、
北韓(北朝鮮)を変化させることができます。

北韓同胞たちの自由と人権を取り戻すこと、
さらには自由で富強な
統一大韓民国へと進むことも、
結局は私たちがより強くなってこそ可能なことです。

挑戦と革新で跳躍する国、
民生(庶民生活)が豊かで国民が幸せな国、
青年の夢と希望があふれる国、

全ての国民が一つになって共に未来に向かう
より強い大韓民国を建設します。

これこそが
英雄たちの犠牲と献身をしっかり記憶し、
その大きな意志に応える道だと信じています。

私と政府は、
偉大な英雄たちが遺してくれた
この地の誇らしい歴史を
国民と共に綴り続けていきます。

いま一度、大韓民国を守り抜いた
すべての英雄たちに深く感謝します。

ありがとうございます。