韓国で10月1日、『国軍の日』記念式が行われた。『国軍の日』とは朝鮮戦争(1950〜53)当時、韓国軍が当時の南北境界線であった38度線を越えはじめて「北進」した日を記念するもの。

今年は昨年に引き続きソウル都心で軍事パレードが行われた。2年連続のパレードは全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領在任時以降、40年ぶりだった。この日午前、ソウル空港で行われた記念式での尹錫悦大統領の記念辞を全訳した。翻訳は徐台教。

記念式で演説する尹錫悦大統領。大統領室提供。

◎建軍第76周年「国軍の日」尹錫悦大統領 記念辞

尊敬する国民の皆さん
国軍将兵と内外の貴賓の皆さん、

建軍第76周年国軍の日を心よりお祝い申し上げます。

今この瞬間にも、一寸の隙もなく国家と国民を守っている国軍将兵の皆さんに感謝いたします。

世界平和を守り、大韓民国の地位を高めている(海外)派兵将兵の皆さんにも感謝いたします。

さらに、血と汗で自由大韓民国を守ってくださった殉国烈士と創軍の元老、(朝鮮戦争、ベトナム戦争)参戦勇士、予備役の皆さんに尊敬と感謝の言葉を申し上げます。

黙々と将兵を支えていらっしゃる軍人の家族の皆さん、そして、韓米同盟の第一線で肩を並べている在韓米軍と大韓民国の平和のために献身する国連軍司令部の将兵の皆さんにも格別の感謝の気持ちをお伝えします。

国民の皆さん、

今年の国軍の日はさらに特別な意味があります。

今日、韓国の国防力を大幅に強化する戦略司令部が創設されました。

韓国政府は北韓(朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮)の核やミサイルの脅威を抑制し、挑発に強力に対応するため、戦略司令部の創設を核心的な国政課題として進めてきました。
その間、多くの難関がありました。

しかし、より強固になった韓米同盟を土台に絶えず努力した結果、ついに韓国軍の先端在来式能力(最新鋭の在来兵器)と米国の拡張抑制(拡大抑止)能力を統合する戦略司令部を創設することになりました。

今後、戦略司令部は、北韓の核や大量破壊兵器から国家と国民を力強く守る中核部隊になるでしょう。

国民の皆さん、大韓民国の今日はわが国軍の献身と犠牲の上に建設されました。

北韓の共産勢力が6.25戦争(朝鮮戦争)を起こした時、わが軍は血を流して戦い、自由大韓民国を守りました。

今も北韓の絶え間ない脅威と挑発に断固として立ち向かい、国家と国民を守護する重大な任務を遂行しています。

国家的災難・災害のように大きな困難に直面した時、先頭に立って国民の生命と安全を守っています。

わが国軍の熱い愛国心と忠誠心が、今日私たちが享受する自由と繁栄の強固な土台になったのです。

皆さん、我が国軍将兵たちに大きな激励の拍手をお願いします。

誇らしい国軍将兵の皆さん、

6.25戦争当時、わが軍はまともな武器一つも備えていませんでした。

しかし、今は私たちの手で最先端の戦闘機を作り、軍の偵察衛星と高性能ミサイルを開発し、世界最高水準の戦闘艦と潜水艦を直接建造しています。

強力な軍事力と優れた技術力を兼ね備えた先端科学技術の強軍へと成長したのです。

私たちが作った戦車と自走砲、防空兵器はアジアを越えてヨーロッパと中東を席巻し、K−防産(防衛産業)の真価を見せてくれます。

今やK−防産は、国家の安全保障と経済を強固に支える「国家戦略産業」となっています。

世界の平和のために献身する韓国将兵の活躍も目覚ましいものです。

世界各地で平和維持と再建活動を展開し、共同の繁栄に貢献しています。

このようなわが軍の活躍は、大韓民国がグローバル中枢国家へと跳躍するのに大きな力となっています。

国民の皆さん、そして国軍将兵の皆さん、

私たちはこのように自由と繁栄の道、世界平和への道を歩んできましたが、北韓政権は依然として退行と没落の道に固執しています。

ひたすら権力世襲だけを追求し、住民の悲惨な生活には目を背けたまま核とミサイルで私たちを脅かしています。

ゴミ風船、GPSかく乱攻撃といった低劣な挑発を行うばかりか、挙句の果てには「敵対的二国家論」を主張し、統一まで否定しています。

さらに、ロシアとの違法な武器取引で国際社会の規範に逆行し、韓半島と世界の平和を脅かしています。

わが軍は強力な戦闘能力と確固たる態勢をもとに、北韓の挑発に直ちに報復するでしょう。

もし北朝鮮が核兵器の使用を企図するならば、わが軍と韓米同盟の決然とした、圧倒的な対応に直面することになるでしょう。

その日がすなわち、北韓政権の終末の日となるでしょう。

北韓政権は今からでも、核兵器が自分を守ってくれるという妄想から抜け出さなければなりません。

国民の皆さん、昨年4月の「ワシントン宣言」を起点に、韓米同盟は名実ともに核基盤同盟へとアップグレードされました。

韓米核協議グループ(NCG)を中心に「韓米一体型拡張抑制」の構築を進めています。約40年ぶりに米国の戦略核潜水艦が訪韓し、B−52戦略爆撃機が韓半島に初めて着陸しました。

米国の強力な拡大抑制公約が、行動として実現しています。

わが政府は、堅固な韓米同盟を基盤に韓米日安保協力をさらに強化し、国際社会と緊密に連携し、我々の安保態勢をさらに強力かつ確固としたものに整えていきます。

国民の皆さん、国軍将兵の皆さん、

ロシアのウクライナ侵攻が終わらず、中東情勢の悪化に伴い、グローバルな安全保障環境が急変しています。

このような状況でより強力な軍として生まれ変わるため、先端科学技術に基づいた国防の革新を成し遂げなければなりません。

政府は昨年5月、大統領直属の国防革新委員会を発足させ、北韓の脅威に対する対応能力を画期的に拡充し続けています。

AIを基盤とする有人・無人の複合体系と、宇宙・サイバー・電子戦の領域において未来の戦場をリードしていくべく、国防研究開発分野をさらに強化していきます。

同時に、武器体系の開発と導入手続きを画期的に短縮します。

強軍の育成は、将兵の士気から出発します。

将兵たちが自負心を持ち任務に専念できるよう、衣食住や医療システムをはじめとする諸般の服務環境を引き続き改善していきます。

軍服に自負心を持てるよう、国のための献身に見合う処遇を保障します。

わが軍の努力も必要です。

若い将兵たちが確固たる国家観と対敵観を持てるようにしなければなりません。

将兵たちが透徹した精神武装と戦友愛で団結し、実戦的な教育で鍛えられるよう最善を尽くしてください。

尊敬する国民の皆さん、誇らしい国軍将兵と内外の貴賓の皆さん、

敵の善意に頼る偽の平和は蜃気楼に過ぎません。

敵が見くびることのないよう、私たちの力を育てることが平和を守る唯一の道であることは
人類の歴史が証明しています。

堅固な安保と強い軍隊は軍が国民と共に作っていくものです。

わが軍が動揺せずに国のために献身できるよう、国民の皆さんが惜しみない支持とご声援をお寄せください。

私は国軍統帥権者として大韓民国の国軍将兵の皆さんを全的に信頼しています。

もう一度国軍の日をお祝いし、皆さんの未来に無限の栄光と祝福が共にあることを願います。

ありがとうございます。